初孫ちゃんは4歳3ヶ月
2013.03.24 Sunday | by 悠々人生
何が違うのかというと、まずは、とても社交的になった・・・というか、何でも疑問に思ったら無鉄砲に誰とでも会話を始める。特に地下鉄に乗ったりすると、気が付いたら知らない人と話をしているという場面もしばしばある。この間は50歳くらいの知らないおじさんに、いきなり車内でこう聞いていた。
「あなたは、どこで降りるの」。
「ああ、次の駅さ」。
「なんで?」。
「おじさんの家があるからさ」。
「今日は雨だけど、傘は持っていないの?家に置いてあるの」。
近くの公園で遊んでいたときのこと、その隣で住宅を新築している。車体に産業廃棄物処理業者と書かれた4トントラックがやってきて公園前に横付けし、その建築作業で出た廃材や梱包材料を二人がかりで積み込んでいた。すると、公園の中からウチの初孫ちゃんが、頭にタオルを巻いてその作業中のおじさんに向かって叫んだ。
「ねえ、何してんの?」すると、そのおじさんは風体や顔つきに似合わずやさしい声で、こう言った。
「うん、お片付けをしてるんだよ。こんな仕事でなくても、何かを売ったり、お金を数えたり、物を作ったりする仕事もあるから、できたらこんな仕事はやめた方がよいね」もう、私は苦笑をかみ殺して、そのおじさんに頭を下げるばかりであった。
そうかと思うと、私のマンションのエレベーター内で、同じマンションに住む80数歳の奥さんと私たちが乗り合わせた。その方は、ご夫婦そろって背が低くて150センチもない。すると初孫ちゃん、その奥さんに向かって突然話しかけた。
「ねえ、おばちゃん、どうしてそんなに背が低いの」。
そんな失礼なこと聞くものではないと言うべきだが、まったくもう・・・止める暇もない。しかし、その奥さんはなかなかの人格者で、こう答えてくれたのである。
「うん、おばちゃんたちの若い頃はね、戦争で食べるものがなかったの。だから、背が大きくならなかったの。だからボクも、たくさん食べて大きくなるんだよ」。
いやいや・・・人それぞれに背景となる人生があるものだ。これについても、その奥さんに感謝して頭を深々と下げた次第である。
しかし、せっかくのiPadだから、何か勉強させられないかと思い、検索して平仮名の練習が出来るアプリを見つけて購入した。素知らぬ顔をしてデスクの上に置いておくと、家にやってきたときにそれを見つけて大喜びし、自分でやり始めた。「あ」「い」などを画面上に指で書くと、それがそのまま保存されて画面の上の部分にあるいくつかの箱に納められて、それを10回やると花丸マークが付いて次に進むというものだ。最初はまじめにやっていたのだが、「あ」行と「か」行が終わり、「さ」行に移って「し」の番になった。すると「し」という文字は書くのだけれど、変なところに点々をつける。「『じ』なら、そこと違うよ」というと、「いいの。これは『ほこり』なの」なんて言いながら、それが保存されるのをキャッキャッと喜んでいる。「何だ、冗談か」と思いながら、それにしても「ほこり」なんて、よく思い付くものだと感心するやら困るやら。頭が働きすぎるというのも、良し悪しである。
歳相応に、なかなか悪智恵が働くようになった。洗面所に入ったかと思うと、「ちょっと見ないで」とだけ言ってしばらく籠もる。どうもおかしいなと思ってドアの隙間からそっと覗くと、口にリップクリームやら口紅やらを一杯付けていたりする。こういうことはさせじと、ドアを開けたままで監視するようにした。ところが初孫ちゃんもなかなかの曲者で、あさっての方向を向きながら、鏡を使って逆にこちらの動きを監視していた。あるとき、歯磨きチューブがかなり減っているのに気が付いた。これは甘いからひょっとして食べているのではないかと思い、やや苦味のある歯磨きチューブを置いておいたら、渋い顔をして何もいわないで洗面所から出て来た。やっぱりそのようである。また最近は、大人の会話を耳にして、その内容がわかるようになった。とりわけ話の中身がこの子のエピソードや、何か都合の悪いことに及ぶと、それを直ちに察知して、近くでガオーなどと大きな声を上げる。娘は、「困ってしまうわ。妨害騒音を発するのよね」と表現したから、笑ってしまった。
食事は、ご飯と肉、魚、それにチーズに目がない。それらはとってもたくさん食べるのだけれど、野菜となると、さっぱり食べなくなる。お母さんは、野菜を細かく切って、混ぜ御飯にしたり自宅で焼き上げるパンに入れるようにしてきた。いわば野菜の「ステルス化」である。ところが、我が家に来たときは、この子の将来のことを考えてそういうことはやめにして、少しでもよいから野菜食べる習慣を付けさせようと、いろいろ工夫するようにした。最初は、ほうれん草を口元に持っていくと、手で口をふさいで「行き止まり」と言う有り様で、とても食べる気配がなかった。そこを家内が色々と工夫し、肉とセットにして色々な種類の野菜を食べさせたり(いわば「抱き合わせ」)、あるいは好きなご飯を食べる前にこのひじきを食べることとしたり、さらには「お野菜を食べないと、大きくなれないよ」などと少し脅かすなど、あらゆる手練手管を弄して、何とか一口ずつでも食べさせることに成功しつつある。でも、全国には野菜嫌いの子が多いと思うが、そういう子を持つお母さんたちは、いったいどうしているのだろうか。聞いてみたいものである。子育ての専門家によれば、「たとえ一切れでも食べた経験がある子は、将来必ずその野菜を食べられるようになる」ということなので、なるだけ努力したい。
近頃は、自我が目覚めたのか、子ども扱いをすると嫌がる。たとえば、我が家に来たときにトイレに入って用を足すような場合、トイレを汚さないか気になってドアを開けて大人が見ていると、つい数ヶ月前までは何も言わなかったのに、最近では極端に嫌がる。また、公園で知らないお友達と遊ぶという場面では、我々が近くに寄って、「あの子は小さいから、何でも譲るようにしてね」などというと、(そんなこと、わかっている)とでも言うように、手を振り払って「わかっている」などと煩そうに叫ぶ。そんなとき、こちらは「ああ、お兄ちゃんになったのだ」という気になる。
それにしても不思議なのは、この寒い季節がまだまだ続いているというのに、寝るときに掛け布団がいらないことである。いったん寝付くと、それが単に下着一枚の姿であっても、大汗をかいている。室温をみると、23〜25度であるから、大人だったら掛布団のひとつも必要だと思うのであるが、実際に掛布団を掛けたりすると、汗びっしょりとなる。とりわけ寝入りばながそうである。そういうときには、寝たままで着替えさせる。そして寝入ってから1〜2時間もすれば、汗をかくということはないが、そこでまた布団を掛けたりすると、また元の木阿弥となる。結局、寝間着一枚のまま、朝までいってしまい、それで朝起きてくるのだから、大人では考えられないことが起こる。幼児の体というのは一体どうなっているのかと思う。
楽天的というか、気にしないというか、たとえ親に叱られても、嫌なことは次の瞬間すぐにケロリと忘れてしまう性質のようだ。自宅から少し遠い児童公園で、知らない女の子とパン屋さんごっこをして遊んでいた。よほど楽しかったらしく、夕方になってその子が帰ってからも余韻を楽しむようにしばらく一人で遊んでいた。ところがそのとき突然「オシッコ漏らした」と叫んだ。最近はトイレを失敗したことがないので、私もうっかりして着替えを持って来なかった。そこで仕方ないので、建物の陰で、下着のパンツだけ脱がして、ズボン(この子は「パンツ」という)をそのまま履かせようとした。「濡れてる」と文句を言ったが、「下が裸よりいいでしょ」と言って無理矢理履いてもらった。抱くとこちらも濡れるので、家まで手を繋いでそのまま歩かせた。最初はガニ股で変な歩き方をしていたが、しばらくすると慣れたようで、お気に入りの歌が出るようになり、道中大声で歌うなど、ご機嫌さんになった。坂を下って我が家まであと50メートルという場所に来たとき、突然、その歌が「パンツが落ちた、パンツが落ちた」に変わった。妙な唄を歌うなと思いながら先を急いでそのまま自宅前に来たとき、やはり変だと思って初孫ちゃんをよく見たら、本当にズボン(パンツ)が膝まで落ちていて、両太腿が丸見えだったのには、ビックリした。自転車で通りがかりのカップルに笑われ、あわてて家に戻って、着替えさせた。
【後日談】初孫の野菜嫌い対策
それからしばらくして、初孫ちゃんが我々と同居をするようになった。相変わらず、野菜嫌いは治らない。トマト、キュウリ、ナス、レタス、ジャガイモなど、そのままを出すと全く食べてくれない。これはダメだ。何とかしないといけないと思い、良い手はないかと、あれこれ考えをめぐらせた。
そもそもいきなり目の前に野菜が出てくるから、拒絶感があるのかもしれない・・・スーパーに連れて行っても同じか・・・では、野菜を作って、それを収穫させれば、興味を持って食べてくれるかもしれないと思いついた。しかし、自宅マンションのこの狭いベランダで野菜栽培なんでできるわけがない・・・そうだ、どこかで野菜を収穫させてくれる所はないか。そうすれば、野菜に親しみを感じてくれるかもしれない。そこでネットで調べたところ、東京都にそういうところがあったのである。しかも、駅のすぐ前だ。これは都合がいい。
それは、小田急線の成城学園前駅前の「アグリス成城」というものである。そこでは、畑に生っている野菜をお客さんに収穫させ、それをその場で調理して食べてもよいというのである。これなら、ちょっとしたピクニック気分になるし、しかも、千代田線の小田急線直通に乗れば乗り換えなしで行ける。初孫ちゃんを連れて、早速出掛けることにした。
すると、駅の西口に広がっている広大な農園がその場所だった。「備え付けのザルに、もいだり引き抜いたりした野菜を入れてください」という。初孫ちゃんと連れ立って畑に行くと、あるはあるは、色々な野菜が・・・。目移りするほどだ。「じゃあ、どれにする?」と、初孫ちゃんに聞く。
初孫ちゃん、目を輝かせながら、キュウリを指さす。15cmの堂々たるものだ。そこで、ハサミを渡して、「真ん中の方にはトゲトゲがあるから、端っこの方を持ってね」と言う。初孫ちゃん、慎重にツルの近くを持ってツルをバチンと切り、そのキュウリをバスケットに入れた。まず1本。これは、なかなか形が良かった。次に、「C」の字型のキュウリに目を付けて、それもパチン。これで2本。
それから、ナス畑に行き、「このEgg plant、大きいねぇ」と言いながら切ろうとする。私が、「ああ、ナスはヘタのところにトゲトゲがあるから、丸いところを持ってね」と言う。初孫ちゃん、これも難なく切り離し、それをしげしげと眺めてバスケットに入れた。あと、土ものにも触れさせないといけない。ニンジン畑に行く。「これは、引き抜けば良いんだよ」と言ったら、その言葉が終わらないうちに両手で引き抜こうとする。ただ、これは手こずった。それでも、何とか引き抜けた。
最後は、ジャガイモ畑だ。土の着いたジャガイモがゴロゴロしている。土の中からジャガイモが連なって出てくるから、初孫ちゃんが感激の声を上げる。そんなに大きくないが、これを4個ほど入れて、それでバスケットを農園の中にある建物に持っていく。そこでは、その野菜を料理してくれる。初孫ちゃんが、収穫した野菜を洗って、係のお姉さんに渡す。適当な大きさに切って、目の前で炒め物にしてくれるのである。
初孫ちゃんは、目を輝かせて出来上がるのを待ち、お皿に入れた野菜を出された。そうすると、「これは、Cucumberだね。ああ、こっちはEgg plantだ」などと言いながら、全て平らげたのには驚いた。ちょうどお昼時にかかるようにしてあたから、お腹が空いていたのかもしれないが、やはり自分で収穫した野菜の味は、とりわけ格別だったのだろう。
さて、それからどうなったかと言うと、初孫ちゃんがあらゆる野菜を食べ始めた。それだけでなく、近所のスパゲッティ屋さんの「レタス・ピザ」、これは私が一番、初孫ちゃんに食べてほしかったもので、それまではわざわざレタスを外して食べていたものが、この野菜畑の一件以来、まずレタスをパリパリと音を立てて食べ始めたのには、私は驚くとともに、感激した。家内も「あらまあ、変わったわね」とビックリしていた。作戦は大成功である。以来、野菜が大好きになった。
(2013年 3月24日記)