徒然202.堀切菖蒲園

堀切菖蒲園の花菖蒲


 家内と話をしていて、「そういえば、堀切菖蒲園というのがあったわね。行ったことあるかしら」、「いやいや、灯台下暗しで、案外近いはずだけれど、まだ行ったことはないんじゃないか」というやりとりがあり、6月の土曜日の午後、それを思い出して現地へ出かけてみた。千代田線に乗って町田で京成電車に乗り換え、その名もまさに「堀切菖蒲園駅」というところで降りて、10分ほど歩くと、堀切菖蒲園に着いた。家から何と30分もかからないで着いてしまった。こんなに近いとは思わなかった。

堀切菖蒲園に行く道すがらの紫陽花


堀切菖蒲園に行く道すがらの紫陽花


 ところで、その堀切菖蒲園駅から菖蒲園に行く道すがら、いかにも川を暗渠にしたような曲がりくねった道を通ったのであるが、その道沿いに、素晴らしい紫陽花がたくさん植えられていた。しっとりとした梅雨空の下で、思い思いに咲く色とりどりの紫陽花がこれまた美しくて、途中でかなりその写真を撮った。また、紫陽花だけでなく、七変化の花に蜜を吸いに来た揚羽蝶も写真に収めることが出来て、うれしくなった。これでは花菖蒲というより、紫陽花や蝶を撮りに来たようなものだと思ったりした。

堀切菖蒲園に行く道すがらの紫陽花


七変化の花に蜜を吸いに来た揚羽蝶


 それやこれやで、堀切菖蒲園に着いたのであるが、さほど大きくない敷地ではあるが、200種6000株もの花菖蒲が植えられていて、なかなか壮観である。しかも、ひとつひとつに名前の札が付けられていて、これはわかりやすい。たとえば、「初霜」、「神代の昔」、「浦安の舞」、「日の出鶴」、「武蔵川」、「十二単衣」、「酔美人」といったところである。その名前と、咲いている花菖蒲と見比べて、風雅な名を付けたものだとか、「潮来」にいたってはわかりすぎる名前だと思ったり、「虎嘯」虎が嘯くとは何の意味だとか、花はそっちのけで、名前の謎解きを始める始末で、面白い名前を付けるのも、善し悪しである。

堀切菖蒲園の花菖蒲


 葛飾区の名所にもなっていて、その説明によれば「堀切の花菖蒲は江戸名所の一つとして古くから知られており、その景観は安藤広重や歌川豊国らの錦絵の題材にもなりました。菖蒲園は文化年間(1804〜1817)当地の農民、伊左衛門によって栽培されたのが始まりと伝えられ、花の種類も約2百種6千株に及びます。江戸時代の有様をしのびながら、数多くの江戸花菖蒲を鑑賞できるのが本園の特色の一つです。花の見頃は、6月中旬で、特に早朝や雨の日にしっとりとぬれた花菖蒲は情緒のあるものです」ということである。なお、園の前からは、同じく葛飾区の公園で、やはり花菖蒲が見事な水元公園へと行くバスが出ている。土日のみの運行らしい。

堀切菖蒲園の花菖蒲


 さて、見終わった後、そこから再び堀切菖蒲園駅に戻り、町屋で千代田線に乗り換えようとしたところ、都電が走っていて、そこに薔薇が植えられていたのに気がついた。そういえば、都電の沿線には、たくさんの薔薇が評判になっていると聞いたが、これかと思い、その写真も撮ってみた。もう終わりかけだが、種類としては、プリンス・ドゥ・モナコ、ピース、聖火など、なかなか良い薔薇があった。

町屋の薔薇


 なお、その日、私は上野に用があって、上野駅に出たのだけれど、そのとき京成電車の駅の構内で、パンダのパンを見つけてしまった。中はチョコレートのクリームで、なかなかおいしいし、かわいい。甘党は、絶対に見逃してはいけないお菓子である。

パンダのパン




(2011年 6月25日記)


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徒然201.下町 谷根千の花々

紫陽花


 梅雨に入っているはずなのに、東京ではあまり雨が降らない日々が続いている。きょうは、九州を中心として大雨らしいが、こちらは朝方だけしとしと雨が降ったものの、私が大学院で講義を終えたお昼になると、もう雨は上がって曇りの空となった。そこでこの季節、ご近所ではどんな花が咲いているのだろうかと思って、午後からカメラ片手に谷根千地区を回ることにした。約2時間ほど路地のあちこちを彷徨した。

孔雀サボテン



 それで見たものは、まず紫陽花が生き生きと咲き出していることだ。この青い紫陽花などは、まるで人の手で色を付けたかのように鮮やかで、しかも青から白へ色が移っていくときのグラデーションが素晴らしい。真っ赤な紫陽花というのも、とても魅力的である。それからもう盛りを過ぎているかもしれないなと思っていた薔薇の花が、依然として多かったことである。普通の薔薇もあれば、青いシャルル・ドゴールなどという珍しい薔薇もあった。最後に、下町らしくなかなか凝った花があることで、たとえば孔雀サボテンチロリアン・ランプ釣浮草七変化未央柳といったところである。これらが、何気なく鉢に入れられて家の外に置かれている。わずか2時間ほどゆっくりと歩き回っただけで、70〜80種類ほどの花を見つけた。つくづく、この辺りの文化水準の高さがうかがえるというものである。

未央柳



 それはさておき、面白かったのは、猫ちゃんをよく見かけたことである。中でも圧巻だったのは、路地に駐車してあった乗用車をふと見たときのこと、屋根に1匹とボンネットの上に2匹が乗り、道行く人を眺めながらのんびりとくつろいでいた姿である。私と目が合うと、虎模様のブチが、愛想よく「ニャア」と鳴いてくれた。「やあ、元気?」と言われたようなものである。人に「東京の下町の特徴は何ですか」と聞かれたら、これからは「猫の町です」と答えようと思っている。

釣浮草


なでしこ


 とまあ、横道にそれてしまったが、今年もまた、昨年と同様にたくさんの花を撮ってそれを紹介することができて、本当にうれしい。ところが、ひとつだけ残念なことがある。それは、昨年は見つけることができた小海老草が、今年はどうにも撮りにくいところにあったので、ここに掲載することができなかったことである。それだけは後ろ髪を引かれる思いだが、ほかの花たちは皆、うまく育てられていて、それぞれに健在だった。ああそれから、去年には見かけなかったものとして、蛍袋がある。その優雅な名前とは裏腹に、妙な存在感がある面白い花である。また、今や絶滅種ではないかと思うほどに珍しい「なでしこ」があり、懐かしい思いがこみ上げてきた。最後に今年は、ゼラニウムの花にとまっている蜂の姿が良く撮れたのが、小さな自慢である。

蛍袋


ゼラニウムと蜂






 下町谷根千の花々(写 真)は、こちらから。



(2011年 6月12日記)


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徒然200.朴の木の花

新宿御苑の朴の木の花


 新宿御苑の園内を散歩していて大きな木があると思ったら、朴の木だそうだ。その木に白い大きな花が咲いていた。私の手の平くらいはある大きさだ。しかも厚ぼったい花びらで、中の雄しべもやはり大きいから、なんだか体育会系を思い起こさせる花である。その真下には、花びらが力なく垂れている、もう咲き終わりかけの花があったが、ちゃんと中心部には、受粉済みの赤紫色の立派な子房のようなものがあった。これが成熟すると、実が一杯つまっている篭になるらしい。ネット上の情報によると、「雌性先熟性があり、開花後は雌性、翌日に雄性、さらに翌日には生殖機能を失う」などと書かれていた。


新宿御苑の朴の木の花



 ちょうど5月半ばから6月にかけて咲くというが、そのとき花や葉っぱに近づくと、なかなか良い香りがただよう。そういえば、この葉っぱ、昔々どこかの田舎に行ったときに見かけたことがあると思って記憶をたどったら、朴葉味噌焼きといって、お味噌とともに魚や野菜をこの上に乗せて焼いてくれる料理があった。味噌が焼けるいい匂いとともに、おいしくいただいたことを思い出した。そんなことが出来るのをみると、この葉っぱ、火に強いのである。いやそれどころか、殺菌作用があるから、これに食材を包んで、朴葉寿司、朴葉餅などに使われるという。

 植物としては、モクレン科に属するとのこと。木蓮といえば、早春に白や紫の厚ぼったい花びらを一斉につける、あの木のことだ。東京で見たければ、2月の終わり頃にお茶の水の順天堂大学病院の玄関先に行けばよい。そこにある木蓮の花は、実に見事である。



(2011年 6月5日記)


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徒然199.フルーツ・カレーとオムレツ

フルーツ・カレー



 上の写真は、東銀座にあるア・ヴォートル・サンテ・エンドーフルーツ・カレーであり、下の写真は、神田にある万惣のフルーツ・オムレツである。どちらも、私の好きな物で、ときおり食べに行くことにしている。

 店名の"A Votre Sante"はフランス語で乾杯の時に「あなたの健康のために!」として使われる言葉で、要するに日本語の乾杯だ。この店、店内はなかなかシックで、いつもクラシック音楽が流れている。加えて、お店で使われているカップ・アンド・ソーサーがブランド物なのである。ここのオムレツが絶品という人もいるが、私はこの店のフルーツ・カレーほどユニークな料理はないと思っている。

 なぜかというと、ちょっと辛めのキーマ・カレーと思われるカレーの中に、8〜9種類ほどの果物がそのまま切り身で載せられているのである。順に並べていくと、りんご、バナナ、オレンジ、イチゴ、メロン、キウイフルーツ、スイカ、アーモンド、ブルーベリー、ミントの葉が綺麗に並べられている。秋に来たときには、スイカの代わりに柿が載っていたから、季節のフルーツというわけだ。これがまあ、それぞれのフルーツの甘さが、少し辛いカレーの味を中和して、口に入れたらその微妙なハーモニーを楽しむことが出来る。仮にこれが業務用によく使われる普通のカレーだったら、これほどフルーツの味は引き立たなかっただろうと思えるほどに、まさに微妙な調和の上に成り立っている。この店に来て、これを食べるたびにそう思う。ウチの奥さんも、これは美味しいというし、グルメで色んな料理を食べ慣れているはずの秘書さんたちを連れて来ても、異口同音に味が忘れられないというから、やっぱりユニークな料理なんだと思う。


フルーツ・オムレツ



 次に、万惣フルーツ・オムレツについては、最初にこれを食べて感激したとき以上の感想は、なかなか書けるものではない。それを引用すると「(ウェイトレスさんが)フルーツオムレツを持ってきた。これが誠に妙なものというか、変わった食べ物なのである。まず、バナナ、パイナップル、いちご、キウイフルーツなどの塊りが敷かれているその上に、とても大きな半円形の、ぽってりとした黄色の玉子焼きのようなものが載っている。まあ、オムレツといえばオムレツといえないわけではないが、中を割ってみると、とろりとしたクリーム状となっている。色はカスタードクリーム風だけれども、まるで泡のようなもの。食べると、すぐに溶けてしまう。こんなものを、どうやって作るのかという感じなのである。本当に、不思議としかいいようがない」というわけである。

 また今日も、同じように思ってしまった。何回感激すれば、気が済むのか、私にもわからない。ところで今日のフルーツ・オムレツの中身は、普段よりやや濃かった気がする。いつもなら、口に入れてからすぐに泡のごとく消え去るのに、今日のものは、口に入れたらとろりとした食感を感じ、しかもそれがなかなか消えなかったからである。少しおいしくなった。こういう世界でも、日々進歩しているのかもしれない。



(2011年 6月 5日記)


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