梅雨に入っているはずなのに、東京ではあまり雨が降らない日々が続いている。きょうは、九州を中心として大雨らしいが、こちらは朝方だけしとしと雨が降ったものの、私が大学院で講義を終えたお昼になると、もう雨は上がって曇りの空となった。そこでこの季節、ご近所ではどんな花が咲いているのだろうかと思って、午後からカメラ片手に谷根千地区を回ることにした。約2時間ほど路地のあちこちを彷徨した。
それで見たものは、まず紫陽花が生き生きと咲き出していることだ。この
青い紫陽花などは、まるで人の手で色を付けたかのように鮮やかで、しかも青から白へ色が移っていくときのグラデーションが素晴らしい。
真っ赤な紫陽花というのも、とても魅力的である。それからもう盛りを過ぎているかもしれないなと思っていた薔薇の花が、依然として多かったことである。
普通の薔薇もあれば、青い
シャルル・ドゴールなどという珍しい薔薇もあった。最後に、下町らしくなかなか凝った花があることで、たとえば
孔雀サボテン、
チロリアン・ランプ、
釣浮草、
七変化、
未央柳といったところである。これらが、何気なく鉢に入れられて家の外に置かれている。わずか2時間ほどゆっくりと歩き回っただけで、70〜80種類ほどの花を見つけた。つくづく、この辺りの文化水準の高さがうかがえるというものである。
それはさておき、面白かったのは、猫ちゃんをよく見かけたことである。中でも圧巻だったのは、路地に駐車してあった乗用車をふと見たときのこと、屋根に1匹とボンネットの上に2匹が乗り、道行く人を眺めながらのんびりとくつろいでいた姿である。私と目が合うと、虎模様のブチが、愛想よく「ニャア」と鳴いてくれた。「やあ、元気?」と言われたようなものである。人に「東京の下町の特徴は何ですか」と聞かれたら、これからは「猫の町です」と答えようと思っている。
とまあ、横道にそれてしまったが、今年もまた、
昨年と同様にたくさんの花を撮ってそれを紹介することができて、本当にうれしい。ところが、ひとつだけ残念なことがある。それは、昨年は見つけることができた
小海老草が、今年はどうにも撮りにくいところにあったので、ここに掲載することができなかったことである。それだけは後ろ髪を引かれる思いだが、ほかの花たちは皆、うまく育てられていて、それぞれに健在だった。ああそれから、去年には見かけなかったものとして、
蛍袋がある。その優雅な名前とは裏腹に、妙な存在感がある面白い花である。また、今や絶滅種ではないかと思うほどに珍しい「
なでしこ」があり、懐かしい思いがこみ上げてきた。最後に今年は、ゼラニウムの花にとまっている蜂の姿が良く撮れたのが、小さな自慢である。
下町谷根千の花々(写 真)は、こちらから。(2011年 6月12日記)