携帯利用入試カンニング事件

Yahoo! Japan(ヤフージャパン)知恵袋に対する「aicezuki」の投稿一覧


 ああ、やっぱり日本でもついに起こったかという事件である。京都大学や同志社大学の入試のまさに最中に、インターネットの掲示板にその試験問題への解答を募り、その回答をもらってカンニングしたと思われる事件だ。日本以上に受験競争が厳しい韓国では、2004年の大学修学能力試験において、携帯電話を使ったカンニング事件が発覚し、314人が摘発された。そのときは、受験中の優秀な学生が、マークシートの正解の番号を外部にいる後輩に送り、それを同じく受験中の別の学生に送るという仲間内の手口であった。

 ところが今回の事例では、考えようによってはもっと大胆なもので、なんとまさに受験しているときにその問題そのものを数回に分けてインターネット掲示板に投稿し、見ず知らずの一般の人から回答を募るというものである。するとご親切な人が数多くいて、8つの質問中2つの質問を除いて他は試験時間内に正解を寄せてくれたというから、驚きだ。これをそのまま記入したのであれば、合格に有利になるのは明らかである。こんなことを許しておけば、真面目に入学試験の準備をしてきた全国の高校生が、馬鹿をみることになる。他に、同志社大学、早稲田大学、それに立教大学でも、同一人物によって同じような不正が行われた疑いがあるようだ。

 不正の舞台となったのは、インターネット掲示板「Yahoo! Japan(ヤフージャパン)知恵袋」というもので、会員になって質問を書き込むと、別の会員が回答をしてくれるシステムである。それが問題解決に役に立ったら、「解決済み」マークが出る。あらゆる分野の質問があり、回答がある。かつて私も、パソコンが不調のときにその解決策を検索していたら、たまたまこの知恵袋がヒットした。その回答を見たところ、なかなか役に立ったという記憶がある。回答は玉石混交かもしれないが、文殊の知恵が何百万人集まるようで、役に立つ場合も多いと思う。しかし、こんな風に使われるとは、Yahoo関係者も非常に困惑しているのではないだろうか。

京都大学の数学試験開始の7分後の書き込み


 たとえば、今回の不正の舞台となった京都大学文系学部の数学の試験では、2011年2月25日の午後1時37分13秒に携帯電話から投稿があった。投稿者のIDは、「aicezuki」という。試験開始の7分後のことである。それには、「数学の問題です。辺AB、BC、CAの長さがそれぞれ12、11、10の三角形ABCを考える。∠Aの二等分線と辺BCの交点をDとするとき、線分ADの長さを求めよ」というもので、その際、ご丁寧にも「解答だけでなく途中計算もよろしくお願いいたします。(_ _)」と付け加えられている。

 これに対し、まだ試験時間中の午後2時9分44秒、この投稿に対し、別の会員が「ADは∠Aの二等分線なのでBD:DC=AB:CA=12:10=6:5、BC=11よりBD=11*6/11=6、△ABCにおいてcosB=(AB^2+BC^2-CA^2)/(2*AB*BC)、=(144+121-100)/264、=165/264=5/8。△ABDにおいて、AD^2=AB^2+BD^2-2*AB*BD*cosB、=144+36-144*5/8、=180-90=90より、AD=3√10」と解答し、「だと思いますがいかがでしょうか?」と書き込んだ。これに対し、この投稿者はその直後の午後2時12分42秒に「ありがとうございます(^o^)/」と、嬉しそうな絵文字付きで御礼までしていたのには、笑ってしまった。もちろんまだ試験中の出来事である。これを含めて、この数学の試験では合計6回の質問と回答が繰り返された。

京都大学の数学の試験の書き込みに対する解答


 翌26日の英語の試験でも、これまた試験開始7分後のことであるが、午前9時37分43秒、前日と同じIDの投稿者が「次の文を英訳してください」といって、「楽しいはずの海外旅行にもトラブルはつきものだ。たとえば、 悪天候や自然災害によって飛行機が欠航し、海外での滞在を延ばさなければならないことはさほど珍しいことではない。いかなる場合でも重要なのは、冷静に状況を判断し、当該地域についての知識や情報、さらに外国語運用能力を駆使しながら、目の前の問題を解決しようとする態度である」と質問し、またまた「長文でお手数おかけしますがよろしくお願いいたします。(_ _)」と付け加えた。

京都大学の英語の試験開始の6分後の書き込み


 すると、そのわずか6分後の9時43分27秒、別の会員から英文の解答例として「Problems should be fun to travel abroad is inseparable. For example, a canceled flight, weather and natural disasters that have extended stay abroad is not so uncommon. In any case important to calm the situation, knowledge and information about the area, while making full use of foreign language proficiency in addition, is the attitude of trying to solve the problem before him.」が示され、「こんな感じでどうでしょうか? 直訳すぎたかな?」というコメントも付言された。そしてまだ試験中の10時22分9秒、質問者から「ありがとうございます(^-^)/」と再び絵文字付きで記されていた。英語は、これを含めて2件である。このような調子で、IDが「aicezuki」から、25日と26日の両日で合計8回の質問があり、それに対して試験時間内に5回の回答が寄せられた。

京都大学の英語の試験の書き込みに対する解答


 2月8日の同志社大学の文学部と経済学部の英語の試験、2月11日の立教大学の試験、2月12日の早稲田大学の文化構想学部の試験でも、試験時間中に同じ投稿者からの投稿があった。いやまあ、大胆不敵というか、あっけらかんとしているというか、まさに空いた口がふさがらないとはこのことである。

 本件を報じた2月27日(日曜日)のNHKテレビのニュースのコメントに出演した専門家という大学教授は、試験中にこれだけの内容を携帯電話に打ち込めないから、たぶん受験中の者が試験問題を写真に撮ってそれを外部で待機していた仲間に送り、そこからYahooに送信したと思うが、それにしても、どうやったら音を立てないで携帯電話の写真を撮れるのだろうか、不思議だ」とコメントしていた。

 しかし、今頃そんなことをいうのは、最近の携帯電話事情をまったくといってよいほど知らないことを天下に示しているようなものである。たとえば、iPhone 4Gの「静音シャッターカメラ」というアプリを使えば、それくらいはいとも簡単に出来る。実は私は、寝ている孫の顔でも撮るときに便利かもしれないと、このアプリを3日前に買ったばかりだから、知っている。価格は、たった115円だったと記憶しているが、これを使うと、ほとんど音を立てずに、携帯電話の写真が撮れるのである。ただし、完全に無音には出来ないとされているが、それでも、100段階あるボリュームをわずか2くらいにすることが出来るから、そうやって撮ると、ほとんど音は聴こえない。

iPhone 4Gのアプリ、静音シャッターカメラ


 また、聞くところによると、iPhone 3Gの時代には、音を完全に消して写真を撮ることができる裏技があったようだ。それは、まずiPodを立ち上げてそのボリュームをゼロとしてから写真を撮ると、シャッター音なしで写真が撮れるというものである。しかし、この裏技は、現在、私の持っている一世代後のiPhone 4Gでは出来ないから、おそらくOSのバージョンアップか何かで、その道は塞がれたものと考えられる。しかし、その受験生がiPhone 3Gをまだ持っていたとすれば、出来たかもしれないのである。

 そういえば、私が大学受験を控えていた1968年頃、刑務所入試問題漏洩事件というものがあった。入学試験の問題を刑務所で印刷していた時代に、大阪大学医学部の入学試験問題をソフトボールの中に隠して刑務所の外に投げ、それを使ってカンニングさせたというものである。それから約43年が経って、再び独創的なアイデアの下、携帯電話という便利なカンニング道具を使いこなす者が出て来てしまったということになる。高度情報化社会では、新しく出た技術を使いこなして思いがけないことを考え付く人が現れる。それが世の中の役に立つことならよいのだけれど、今回のように入試のカンニングに悪用するという、とんでもないことを考え付く不埒な者が現れる。我々のようなオールド・ジェネレーションに属する人間は、そのたびに技術の中身を追いかけなければならないという、まさに大変な時代になったわけだ。

 私が思うに、今回の犯人を突き止めるのは、そう難しいことではあるまい。書き込んだ内容からして、男性らしい。投稿者のIDは「aicezuki」だから、私は「鈴木」という姓ではないかと思う。というのは、誰しもその姓名の一部をハンドルネームにする傾向があるからだ。そして同じ者が各大学の文系学部を受験しているのであるから、その受験者リストを照合して同一人物を捜すのが第一歩となる。そうした上で、その者の試験問題の解答がこのインターネット掲示板の模範回答と同じか似ているものを選ぶ。それと同時に、Yahooと携帯電話会社に協力してもらって、その一連の書き込みのIPアドレスを把握し、そこから携帯電話の契約者を割り出すという方法もある。こうして、大学の試験とYahoo・携帯電話会社の両方向から迫っていけばよい。最後に、本人を逮捕する際にその犯行に使われた携帯電話を押収できれば、満点ということになる。もっとも、八百長騒ぎで提出を渋ったお相撲さんのように、携帯電話を壊したとか、機種変更したということになるかもしれない。ちなみに、罰条としては、刑法第233条(偽計業務妨害罪)が妥当だろう。ただし、大学側の入試業務の遂行が妨害されたことを目に見える形で立証する必要がある。

 今回の事件は、たまたま公開のインターネット掲示板を使ったから判明したものだが、これが仲間内のみで行われていたとしたら、そう簡単に露見してしまうとは思えない。そういう意味で、氷山の一角ではないかという気がしてならない。いずれにせよ、日本の大学入試の公正な遂行と信頼性を根底から揺るがす一大事と考えなければならないものと思われる。






 本件の結末は、こちらから。



(2011年2月27日記)


カテゴリ:エッセイ | 00:42 | - | - | - |
徒然191.湯島天神 梅まつり

湯島天神の白梅


 また今年も、近くの湯島天神に出かけて、白梅と紅梅を愛で、梅まつりを見物してきた。以前にも書いたが、こちらのお社(やしろ)は、厳粛な受験シーズンの終盤にさしかかると、同時並行的に梅まつりが始まり、急にくだけた雰囲気となる。まるで祭神が、謹厳実直な菅原道真公から突然、下町のお笑い守り神になってしまったかのようだ。

湯島天神の梅まつりのジャワ舞踊 デワンダル


 参拝客は、梅の花を見に来ているわけだが、それは公式の答えであって、皆の楽しみは奉納される演芸であることは間違いない。なかでも人気なのはベリーダンスである。でもこの日は、その前にあったジャワ舞踊というのも、なかなか見応えのあるものだった。ポク・ポク、ポクという単調ながらもお経を思わせる、どことなく懐かしい響きに乗って、とても優雅に舞う。盆踊りのような円を描き、田植えを想起させる腰使い、はるかな山々を眺めるような手つきがアジアらしい。さらに子細に見ると、左右に振られる目の動き、手先でつまむような細やかな指使いなど、これぞジャワダンスかと納得するものだった。ちなみに、このジャワ舞踊は、「デワンダル」の皆さんである。

湯島天神の梅まつりのベリーダンス 春奈あき&アラビーナ


 それから、皆が注目するベリーダンスは、とてもカラフルで、しかもたくさんの踊り手さんが舞台狭しと踊ってくれて、見物人の目を大いに楽しませてくれた。こちらは、「春奈あき&アラビーナ」の皆さんである。ところで、私のカメラを使って、これだけ離れた場所から、ベリーダンスのあれほど早い動きを撮ることが出来るかどうか、いささか自信がなかった。しかし、いざ撮ってみると、ピントもそれなりに合っていて、なかなか良い写真が撮れた。だから、とても満足している。

湯島天神の梅まつりのジャワ舞踊 デワンダル


 また、見終わって帰る途中、白梅の木にメジロがたまたま来ていた。あわててレンズを超望遠に換装して、それも写すことが出来た。そういうわけで、春が来た喜びは、これで倍となった気がしたのは間違いない。

湯島天神の白梅の木にメジロ








 湯島天神梅まつり( 写 真 )は、こちらから。



(2011年 2月19日記)


 
カテゴリ:徒然の記 | 20:51 | - | - | - |
ノートンのサービス

ノートンの画面


 パソコンのセキュリティソフトとして、ノートンとマカフィーが市場を分け合っているのは、周知の事実である。このふたつのうち、昔から私はノートンを使って来た。最初は、何の気なしにこちらの方を買ったもので、これまで性能面で何の問題もなかったからである。ところが、サービス面では、大いに不満があることばかりで、一時は、史上最低のけしからぬ会社だとさえ思っていた。サポートは繋がらないし、値段は高いし、HPは見にくいし、まるで悪代官に対するように毎年お金を貢がなくてはならない。一番困ったのは、何か起こって、会社のサポート窓口に電話しても、ちっとも繋がらなくて、問題が全然解決しないことである。

 たとえば、一年ごとに更新していた頃のこと、それが自動更新扱いとなっているのを忘れていたのか、知らなかったのか、たまたまそういう設定になっていたのか、それすら今となっては定かではないが、ともかくそういう状態のときのことである。期限の何週間か前に、「あなたの契約の期限がそろそろ来ます。更新手続をしてください」というメールが来た。ああ、そうかとばかりにそのアドレスを開いてクレジットカードで決済すると、その情報が契約更新部門に行っていないらしく、気がついたら、そちらでも引き落とされていた。つまり、ひとつの商品に対して二重に支払わされたというわけだ。

 それを抗議しようとしたら、先に書いたように、会社のサポートの電話がぜんぜん繋がらない。そのうち、さほど高い額でもないこともあって、つい面倒になって放置しておいた。そして、気がついたら再び一年が経っていたというものである。では、そんな二重払いという嫌な目にあったにもかかわらず、なぜノートンを使い続けているのかといえば、IDセーフという機能があるからだ。これは、ウェブの画面を開けたときにそれがログイン名とパスワードを入れる画面であれば、自動的にノートンがそれらを入れてくれるというもので、これが他に追随を許さないほど実に便利なものだからである。

 ともあれ、こうした苦い経験をして以来、その轍を踏まないようにと、気を付けていたのだが、おもいがけないことに、まったく別の問題が発生してしまった。ある日、わたしの使っているノートパソコンを開いたところ、「このパソコンには、セキュリティの問題があります」という大きな表示が出た。そういえば、前日の夜にWindows Updateの更新をして再起動したばかりだったが、その更新プログラムとノートンとの相性がよほど悪かったのだろう。緊急警告が出て、ノートンがストップした。そして、再インストールせよという警告が出てしまった。それによるとプロダクト・キーをメモして既存のノートンを削除せよという。

 そもそも、これをネット経由で買ったのか、CDで買ったのか(たぶん前者の方だったとは思うが)、そんなことは忘れてしまった。しかし、このノートンは、わずか1ヶ月前に更新したばかりだ。また買うのも、前回の轍を踏むようで、誠に面白くない。これは困った、あの通じない電話番号にまた架けるのかと思ったが、ほかにやりようがないので、時間の余裕のあるときに電話してみた。具体的には、自動更新を知らせてきた一月前のメールをひっぱり出し、それに注文番号とシリアルナンバーがあったので、それをメール最下段にあった0570-005557に問い合わせた。ところがこれは、料金の係だったらしくて、まず自宅の03から始まる電話番号をいわされて、それで本人確認がされたことになるようだ。それで、技術サポートに電話しろという。それは、03-5642-2682だった。

 すると、あれあれ、一発でスムースに繋がった。数年前とは様変わりである。応対してくれたのはWang Niという中国人の女性である。中国語なまりの日本語だが、私の言ったことは、十分にわかってくれているようだ。というのは、発生した問題の内容はこれこれだと説明すると、ちゃんと理解した。私の名前と電話番号をいうと、私の個人データを呼び出してくれて、それには、いつ更新したかも記録されている。私が「再インストールをしようとしたのだけれど、そもそもこれはネット経由で取得したものだから、プロダクトキーがわからない」というと、それを教えてくれただけでなく、「そちらのパソコンの遠隔操作をさせていただければ、こちらで再インストールをします」とまで言ってくれたから、有難くそれを了解した。その際、すべてアンインストールするのではなく、「既存のパスワードなどの保存」を選択すると、プロダクト・キーも含めてそのまま保存してくれるので、次回のインストール時には何もタイプインする必要はないことも教えてくれた。

 先方の指示のとおりにやると、遠隔操作が始まった。それだけでなくチャット窓が出てきてそれで会話もできるらしい。しばらくしてファイルのダウンロードが始まったが、私が使っている無線LANの速度が遅くて、「このままだと数十分かかってしまいます。その間、電話代がもったいないのから、切ってもよいでしょうか」と、ご親切にも聞いてくる。「ああ、そうしてください」と言ってから「ところであなた、どこでこの電話を受けているの?」と聞くと、中国の大連だという。「日本語がおじょうずね」と、おじょうずを言ったら本人は謙遜していたが、私は本当にそうだと思った。それと同時に、「日本から、また雇用が流出している。国内が不景気になるわけだ」という苦い感想も併せて抱いたのである。

 こうして遠隔操作が開始されたとき、チャット窓では、次のようなやりとりがあった。こちらのパソコンのウィンドゥズがおかしくなっているせいか、日本語のワードプロセッサーが立ち上がらないので、私は英語で送信せざるを得なかったが、それもちゃんと読んでくれている。このWang Niという中国人女性とは、このチャットだけでなく電話でも話したが、いろいろと気がつくし、配慮が行き届いているし、日本語だけでなく英語もできる・・・今時の日本では、まず見あたらなくなった完璧なプロフェショナルなのである。逞しいなぁ・・・近頃の中国の日の出の勢いがこんなところにも感じ取られる。これでは、ヘナヘナした近頃の若い日本人では、とても対抗できるものではない・・・しっかりしてほしいものだ。

12:17 接続しています...
12:17 接続しました。 サポート担当者がすぐに対応いたします。
12:17 Wang Ni とのサポート セッションを確立しました。
12:18 フル コントロール権限を Wang Ni に許可しました。 許可を無効にするには、ツールバーの赤い X 記号をクリックします (またはキーボードの Pause/Break を押します)。
12:18 Wang Ni によって開始されたリモート制御。
12:18 無人状態で再起動するためのログオン パスワードを設定しました。
12:18 Wang Ni は次のリンクを送信しました : www.norton.com/jp/nis11
12:24 Wang Ni: mail_to_uu@gmail.com
12:26 Wang Ni: お待たせいたしました。リモートサポート担当のオウ ニイと申します。よろしくお願いいたします。
12:45 106885: Ms Wang Ni Something is wrong with FEP processor So let me write in English.
12:46 106885: Thank you for your kind support But it seems to take time
12:46 Wang Ni: はい
12:46 Wang Ni: もうちょっと時間かかりそうですが、
12:47 Wang Ni: お時間大丈夫でしょうか?
12:47 Wang Ni: 日本語に変更いたしますので
12:48 Wang Ni: このリモートコントロールの関係で言語の変換はうまくできないようですが、
12:48 Wang Ni: リモート切断するによって、また元に戻りますので
12:49 Wang Ni: ご心配なく
12:51 106885: I understand Thank you very much
12:51 Wang Ni: こちらこそありがとうございます。
12:52 Wang Ni: 後10分ぐらいなので、もう少々お待ちください。
13:01 106885: Wow! It has finished Thank you!
13:01 Wang Ni: お客様、大変お待たせしました。以上で問題は改善されましたので、このままご利用いただきますようお願いいたします。他に何かご不明な点はございますでしょうか。
13:01 106885: Nothing special Thank you for your kindness
13:02 Wang Ni: こちらこそありがとうございます。
13:02 106885: Have a Good Day!
13:02 Wang Ni: また何かございましたら、お気軽にお問い合わせくださいませ。
13:02 Wang Ni: 本日、オペレーター番号XXYYのオウニイが担当いたしました。ご利用ありがとうございました。
13:02 Wang Ni: お客様、リモートを切断するために、私の方からパソコンを再起動させていただきます。パソコン再度立ち上がりましたら、リモートのチャット画面の右上隅の白い「×」ボタンをクリックすると、リモート操作が終了されます。
13:03 106885: Yes I will I'm waiting for the e-mail Today's service is perfact I appreciate you very much Bye
13:03 Wang Ni: ご協力ありがとうございます。

 いやあ、遠隔操作で新しい2011年版のソフトをちゃんとインストールしてくれるし、それにまた、この親切な対応といったら、数年前とはまるで別の会社に生まれ変わったようだ。その翌日、調査会社から私宛にノートンの窓口の対応をチェックするメールが来た。それには、大変に満足したという花丸の回答を書いたのは、いうまでもない。



(2011年 2月14日記)


カテゴリ:エッセイ | 22:41 | - | - | - |
自炊を試す

裁断機


 「自炊」という言葉を聞くと、私などは、単身赴任の男の人が自宅で一人侘びしくコトコト鍋を煮ている姿を思い出してしまう。ところが最近はそうではなくて、出版社による本や雑誌の電子化が待ち切れず、自分が持つ本などを裁断してスキャナーに取り込んでいる人のことをいうらしい。そしてどうするかといえば、それをPDFファイルの形式にして、iPadやiPhoneなど最新の情報端末で読むのである。

 そのようにすると、あの重たい本や雑誌を持ち歩く必要がないので助かる。しかも、単語単位で検索すると、すぐに出てくるし、だいたいあの嵩張る本の保管スペースが節約できるのが良い。早い話、書庫というものがなくてよいのである。私は、学生時代に下宿のおばさんから、「こんなに本が多いと、床が抜けるからどうにかしてくれ」などと文句を言われたクチだから、それ以来なるべく蔵書なるものを持たないことにしている。でも、長年の飽くなき知識欲のせいかどうかは知らないが、気を許すとついつい本が増えてしまい、実家の物置を拝借して置かせてもらっている。本が電子化されれば、そういうことも一切なくなというわけだ。

 しかし、そうすると、「本を広げたときの、あの印刷インクの香りが好き」などという伝統的な楽しみ方も出来なくなるし、もちろんページをめくる楽しさもなくなる。そういう前時代的な感傷は別としても、すべての本が電子化に適しているとは思わない。私が見るところ、たとえば大学の教科書のように、勉強のために何度も読み込んで使うという類の本には向かないが、新書、雑誌のようにちょっと手軽に知識を仕入れるための本などには適している。そのほか、小説本のように一度これを読んでしまったら、よほどのことがない限り再び読むことはないだろうけど、捨てるには忍びないと思われる本についても、電子化は最適な保管方法である。保管や検索があまりに手軽だから、また読みたくなるということもあるだろう。

 また、私の仕事柄、たとえば主要な法律の解説書を電子形態にして常時持ち歩けることができれば、これは鬼に金棒となる。現在、我が国のすべての法律と政省令と主要な判例をWeb経由の電子形態で提供するサービスがあるが、これは実に便利である。そのおかげで、私は自宅に法令集を備え付ける必要はなくなった。だから私は、電子化の威力については、よくわかっているつもりである。

 実は私、まだiPadは買っていないが、iPhone 4Gで、ときどき文庫本を読んでいる。使うのは、Sky Bookというソフトである。たとえば昨年末以来、寺田寅彦全集という100冊を超える電子データをiTuneからダウンロードした。ちょっとした待ち時間の間に、ひとつひとつ読んでいって、そろそろ全巻を読み終わる頃である。この明治から大正にかけての碩学の長老は、専門の物理学にとどまらず、色々なことに関心と興味を持って、人間味のあるエッセイを書き綴っている。だから、私は毎日それを読むのを楽しみにしていた。ところが、そろそろそれを読み終わる頃となった。次の電子ブックとして、たとえば漱石や鴎外のような明治文学を読むのも悪くはない。しかし、最近の文章がどうも読みたくなった。この経験で、電子形態で読むのに慣れたからだろう。

 ところが、電子書籍が読めるiPadやキンドル、シャープのガラパゴス、それにスマートフォンがどんどん広がりつつあるというのに、肝心の読みたいものが見当たらないのである。たまにあっても、漫画ばかりで、実に馬鹿馬鹿しい限りである。インテリ向きの電子書籍が圧倒的に不足している。読者としては、たとえば新書や月刊誌などのコンテンツがその発売と同時に電子形態で売り出されるのを望んでいるというのに、それがない。ついでに、この際、合わせていわせてもらえば、電子書籍は印刷や流通費用がかからないわけだから、その分だけ本より安いというのであれば、もちろん喜んで買いたいところである。

 しかし、そんな出版社は、なかなか現れない。以前、私が「iPadの衝撃」で書いたように、著者と読者とが直結してしまい、出版社が中抜きされてしまうことを懸念しているのかもしれない。実は私もそう思っているから、その懸念は、おそらく当たっていると考える。ところがそれは出版社側の勝手な都合に過ぎないから、読者としては、せめて日常読んでいる本や雑誌ぐらいは早く電子化してくれないかと願う。でも、遅々として進まない。そういうとき、読者がしびれを切らして買ってきた本や雑誌を自分で電子化するというのが、ちまたで最近はやっている「自炊」なのである。

 そういうわけで、私もやってみようかという気になった。私の場合、普段から仕事がらみで膨大なA4版の資料を扱うから、まずはそれをPDF形態でもらおう。そういう文書はもともと一太郎やWordで作られるから、それをPDF形式で出力してもらい、その文書の作成者に頼んでメールで送ってもらうだけでよいから、まあ簡単だ。これが第一段階である。

 次の第二段階は、参考となる法律の専門書をすべて電子化してしまうことである。そこで、これに手を付けることにした。本を裁断したりスキャナーで読み取ったりするのは、ちょっと面倒かなと思ったけれど、まずはやってみてから考えようということで、必要な資材である裁断機とスキャナーを用意した。手動裁断機は、プラスのPK-513L、スキャナーは富士通のScanSnapのS1500というものだ。

 まったくの素人だから、最初、手動裁断機を見たときに、切るための本を入れる隙間の厚さが、いやに薄いなと思った。そして、試しに月刊誌「文芸春秋」を差し込んだところ、本が分厚くて、裁断部分の隙間に入らなかった。法律の本というのは、少なくともこれくらいの厚みがあるから、これは間違ったものを買ってしまったかと思った。そこで裁断機のパンフレットを読み返すと、この月刊誌の場合は500頁を超えているからその半分の250頁を切る能力がないといけないのに、この機械が切れるのは、たかだか200枚程度にすぎないことがわかった。その価格は2万円台と手軽なものではある。しかし、もっと厚い本が切れる性能のものでないと役に立たない。そう思って、さらに上の性能の裁断機をカタログで探した。すると、400頁以上の紙を切れる機械が確かにあるのだけれども、その仕様を見てびっくりした。なんと重さが25キログラム、価格が16万円もする!これはプロ仕様なのだろうか、価格が8倍にも跳ね上がるし、そもそも25キロは重すぎる。

 なるほど、素人には、私が何も知らないで入手したこの機械くらいがちょうどよいのかと納得する。それでは、「自炊」している人は、いったいどうしているのだろうと疑問に思った。すると、以前は図書館員だった私の秘書さんが、「背表紙のところをカッターで切ればいいんですよ。昔よくやっていましたから」とのたまう。思わず、「それはどんな時か」と聞き返したくなったが、そういう嫌みなことはやめにして、切ってもらうことにした。いきなりハードカバーの本で試してみて失敗すると悲しいから、捨てるつもりだった月刊誌の文芸春秋を渡した。すると、いとも簡単にカッターで切れるではないか。案ずるより産むがごとしである。

裁断機


 では次に、二分冊にした雑誌を、それぞれ裁断機で切った。スイッチを入れると、赤い光線が本の上に走って、そこにカッターが当たることを示してくれる。これは便利だ。二回に分けて切ってその二つの紙を比較すると、切った紙の大きさはほとんど変わらなかった。切るのに、力が必要なのかと思ったが、決してそういうことはない。刃がすーっと入って、スコンという音とともに切り終わる。非力な女性でも出来そうだ。さて、そのようにして切った紙を、スキャナーにかける番となる。

スキャナーの外形


 その前にスキャナーのドライバーをインストールしなければいけない。その作業に約20分かかってしまったが、無事に終わる。スキャナーを開け、切ってばらばら状態になった紙をまとめて30枚ほどセットした。パソコン上から「両面読み取り」のボタンを押すと、あらら、スキャナーはスコン・スコンとせわしないが軽快に動き、あっという間に読み取ってしまった。思ったより、読み取り速度が早かったので驚いた。もちろん、これは片面を読み込んだのだから、もう片面も読み取って、それらを合成する必要がある。これはどうするのかわからなかったが、とりあえず、今読み取られた紙をすべて裏返し、再びスキャナーにセットした。読み取りボタンを押すと、先ほどと同じようにスキャナーは動いた。

スキャナーを読み取りのために開けたところ


 パソコンのエクスプローラでどういうPDFファイルが生成されているのかと見たところ、二つ出来上がっている。あれれ、一体どうなっているのだろう・・・果たして表と裏は合成されているのかと思いながらその二つのファイルを開くと、最初の方のファイルにおいて、表裏一体となっており、すでに統合されていた。なるほど、ソフトで自動的にひとつにしてくれたというわけだ。当たり前だが、これを手でやろうとすると、大変だから、助かった。なかなか便利なソフトが付いているものである。

 ところがこのPDFファイルでは「絵」の状態となっているから、検索は出来ないのではないかと疑問に思った。そこで、そのソフトのメニューを見たところ、「検索ができる状態にする」つまり「絵」の状態からOCRの技術で読み取って文字に変換してくれるらしい。それを動かしたところ、少し時間がかかったけれど、数分内に終了した。元のPDFファイルに埋め込まれたらしく、ファイルの量が少し増えている。またそれだけでなく、その読み取った結果をWord文書にもしてくれるらしい。それを試したところ、読み取り結果が出てきた。ざっと見たところ、まあ99%近くはそのまま使えそうだ。実用のレベルに達している。

自炊した新書「宇宙は何でできているのか」


 これなら、何とかなりそうだ。それでは、雑誌ではなくて、単行本ではどうだろうか。そこで、万が一失敗しても惜しくない新書で試してみることにした。雑誌よりは紙質がよいから、やりやすいだろう。そこで、村山 斉博士の「宇宙は何でできているのか」を取り上げた。これは薄いから、あの裁断機でも一気に切ることが出来る。切ったものをすべてスキャナーにセットしようとしたから、分量が多すぎたようである。そこで、二つに分けて、同じようにPDFファイルを作った。この二つのファイルは、どうやって結合するのかと思いつつ、スキャナーに添付されていたAdobe Acrobatを動かしたところ、それであっさりと一つに出来た。それをまた検索可能とするためにOCRソフトで読み取り、一段落した。

 それを、今度はスマートフォンのiPhone 4Gで読めるようにしたい。それはどうするのかと思いながら、パソコンのiTuneを動かした。すると、既にiPhone 4GにインストールしてあるソフトGoodReaderで、簡単に読めるように出来た。そして、iPhone 4GでGoodReaderを立ち上げたところ、ちゃんと出てきた。しっかり読める。なるほど、こうするのかと、やり方がわかった。でも、新書版程度ならこれでよいけれど、これが法律の専門書くらいの大きさになると、iPhoneは画面が小さいから、いささか読むのがつらい。やはり、iPadくらいの大きさが必要である。まあ、必要な本や書類の電子化がすべて終わる頃には、新しいバージョンのiPadが発売されているだろうから、それを買うことにしよう。

 その翌日となり、いよいよハードカバーのちゃんとした本の自炊に挑戦した。こんども失敗してもよいように、ダミーの単行本「ホーキンス宇宙と人間を語る」を使った。しかし今回は、表と裏のハードカバーが本をしっかりガードしている。本を机の上に置いて、私がどうすべきかと思案中に、またもや秘書さんが「ああ、やってみましょう」と、いとも簡単に言う。「でも、大丈夫かね。今度は雑誌と違って、固そうだよ」と聞くと、「ああ、こういうものは、ハードカバーさえ取り外せば、あとの中身は雑誌と同じですから」と答える。「では、怪我しないようにやってみてください」と頼んだ。

 すると、ジャーッという紙が引きちぎられる音が一回して、続いてカターッ、カターッと軽快な音が二回聞こえただけで、切ったものをすぐに持ってきてくれた。あっけにとられていると「はい、出来上がりました。だけど、せっかくの本なのに、もったいないですね」と言う。「ああ、確かにね。こんなに良い本なのに、作ってくれている製本業の人が聞いたら、卒倒するかもしれないけれど、このままだと、単に押し入れの片隅でほこりを被って忘れられ、何年か経って引っ越しのときには捨てられる運命は明らかだからね」と答えたところ「そうですね」と言う。振り返ってみると、これが過去のしがらみを断ち切った瞬間である。これで、本を切ってつぶしてしまうことへの躊躇はなくなった。

 あとは、例の裁断機でそれを3回に分けて切り、それからスキャナーを動かす手順は同じ。最後にその三つのファイルをソフトで結合して、出来上がりだ。iPhoneにそれをコピーしてみたところ、ちゃんと読めた。よしよし、これで自信がついた。では、そろそろ本格的なハードカバーの本に取り組んでみよう、これもうまくいけば、蔵書全般の電子化の手始めとなる。そこで、私の書いた491頁に及ぶ法律の専門書で試してみた。まず、ハードカバーを外して4分冊にし、スキャナーに読み取らせた。そのPDFファイルを、やはり同じような手順でひとつのファイルにすることが出来た。これに要した時間は、30分から40分ほどで、それをiPhoneにコピーしてみたところ、ちゃんと読めるようになった。もっとも、自分で書いた本だから、そんなものを常時持ち歩く必要もないのだけれど、大学院での講義の機会などでちょっと使えるかもしれない。そうそう、ついでながら、こうして結合したPDFファイルの容量が多いと感じたときには、これをソフトで「最適化」するとよい。そうすれば、ファイルの分量が2〜5割ほど減るので、保管や読書をするにはこの方がよいと思う。ちなみに、ファイルの分量は、私の書いた491頁に及ぶ法律の専門書では19.2MB(最適化前は、24.2MB)となり、新書では白紙部分が多いせいか、4.7MB(同じく8.5MB)と半減した。

 しかし、なにがしかの感慨がないかといえば、嘘になる。たとえば、こうして私の本の自炊している最中にも、この本を書くときに世話になった編集者の顔が思い浮かぶ。しかし、これぞ高度情報社会の行き着く先である。彼には悪いが、編集者と出版社は、あたかも馬車の世界が急に自動車の世界へと変わって、失業せざるを得なくなった御者と馬車メーカーのようなものかもしれない。そういうときには、縮小していく旧世界に歯を食いしばってとどまるか、あるいはひたすら前を向いて新世界を探すしかないのである。いずれにせよ、それはごく近い将来に必ず起こる痛みを伴う変革である。

 ともあれ、今日のところは私の試みは、非常にうまくいった。明日より、待ち時間を使って、一日一冊のペースで、私所蔵の法律書を順次、自炊していこう。先は長いが、一年もあれば終わるだろう。

 以上のような次第で、私も自炊族の仲間入りをしてしまった。まるでデジタルの世界へ単身赴任をしているような気分である。



(2011年2月9日記)



カテゴリ:エッセイ | 22:34 | - | - | - |
フィッシング・メール

菊に来た蜂。三渓園にて


 私は、大学の同窓生約30名で作る同窓会に参加している。卒業してかれこれ40年近くになるが、熱心な幹事がいてくれるおかげで、この同窓会は、年に少なくとも2〜3回は開かれてきた。懐かしい皆からの仲間と会えることから、私はほぼ皆勤といってよいほど、必ず出席することにしている。

 10年近くも前のことになるが、私もささやかながらこの同窓会に貢献しようと、自分のWebのスペース中に専用のメーリング・リストを作り、そのシステム運営をしてきた。といっても、既存のソフトを使っているので、参加者とそのアドレスを入れてシステムを作り上げてしまえば、そう手間はかからない。たまにアドレスが変わったと連絡してくれる人がいるから、そのつどリストを更新しているのが仕事となっている。ほぼ全員がパソコンを使いこなすということもあって、今やこれがないと、同窓会の連絡は成り立たないほど、便利に使ってもらっている。

 そういうわけで、このメーリング・リストは、主に会合の連絡と出欠の確認に使われている。もちろん、時には、勤め先が変わったときの挨拶とか、誰々が入院したから、お見舞いに行くならその病院名と住所はこれこれなどという連絡にも使われる。まあそういう、ごくありふれた同窓会の連絡網なのであるが、つい数日前にその連絡網を揺るがすちょっとした事件があった。ご参考になるかもしれないので、それをドキュメンタリー風にご紹介したい。






【第1日 午後8時28分】Aくん(元銀行員)から最初のメールが入る。

 別添ファイルのメールが入っているのに、気がつきました。Kくんがマレーシアで事故にあって、至急2400ドル送金してほしいという内容ですが、なんとなく変な気がしますし、事実であれば送金しようかと思っています。ただ、私宛の名宛メールではないし、英文だし、パスポートの件もあるので大使館が対応するのではないか等疑問点もあります。いずれにせよ、月曜までは動けないので、皆さんのご意見をいただけないでしょうか。いろんなことがあるものです。

[別 添]

I am in hurry writing you this message and i hope you get it on time, sorry I didn't inform you about my trip in Malaysia for a Program. It has been a very sad and bad moment for me here, the present condition that i found myself is very hard for me to explain. I am really stranded here in Malaysia because I was attacked and robbed on the way to my hotel, all cash, document's and cell phone which i h ave all my contacts were stolen off me.

Presently I have limited access to internet, I will like you to assist me urgently with a soft loan of $2,400 US dollars to sort-out my hotel bills and to get myself back home. I have spoken to the embassy here but they are not responding to the matter effectively, I will appreciate whatever you can afford to assist me with, I'll Refund the money back to you as soon as i get home without any delay. Please use the details below to send the money to me via Western Union money transfer or Money Gram because that is the only way i could be able to get the money fast and leave. Here's my info below...

Name: Kくんのフルネームの英語
Address: 17A, Jalan Kuchin Seksyen, Mahkota Melaka, Malaysia

After you have send the money, email to me the western union money transfer control number or you can attach and forward to me the western union money transfer receipt so that i can pick up the money fast and leave.

Thanks and get back to me soon with the transfer details so that i can leave.

Best regards,


【第1日 午後8時49分】私が、Aくん(元銀行員)からのメールを読んで直ちに返信をする。

 それは、最近、Hotmailで流行っている成りすましメールだと思います。Hotmailでは、パスワードを盗む専門のグループが暗躍していて、誰かが彼の連絡先として、我々のアドレスを取得し、そういう英文のメールでお金を送金させるという手口です。そのメールは、廃棄しては、どうでしょう。念のため、本人に確かめる場合は、次のアドレスです。[Kくんの二つのアドレスを記載]

【第1日 午後8時51分】ほぼ同時に、Bくん(通信会社副社長)が、Aくんからのメールを読んで返信をする。

 最初に、ウイルスの危険があるので、添付メールを開きませんでした。よって、貴殿のメールのみに基づいて考えたことを記します。ご指摘の通り、変な話ですので、疑ってかかった方がよいように思います。先ずは、Kくんの家族に一報が行く話でしょうし、次には、私用の旅行としても、勤務先へ連絡すべきでしょう。どなたか、Kくんの家族又は職場その他の信頼できる連絡先をご存知の方がいれば、彼の現在地を確認することから始めるのがよいのでないでしょうか。とりあえず、思いつくところです。

【第1日 午後8時57分】Cくん(大学教授)が、これらのメールを読んで返信をする。

 Kくんの勤め先の大学に連絡しましたが、教員も事務方もいませんでした。Aくんから連絡を頂き、yahoo mailを開けたら、こちらにはありました。ぼくには不可解なメールです。差出人が「Kくん」で宛先も「Kくん」で、なぜぼくの所に届いたのでしょう。もっとも、差出人とホテル名、住所(本当か否か分りませんが)はあります。今のところお手上げです。申し訳ありません。ホテルをインターネットで調べてみます。

【第1日 午後9時14分】私が、このCくんからのメールを読んで返信をする。

 差出人が「Kくん」で宛先も「Kくん」で、なぜぼくの所に届いたのでしょう。

というご疑問の部分ですが、この窃盗団は、まずHotmailのあらゆるアドレスあてに、「このメールアドレスを更新します。引き続き使用したい方は、アドレスと、パスワードを入力してください」といって、もっともらしいMicroSoft風のロゴを付けた、凝ったデザインのメールを送りつけます。それで、うっかりそこにアドレスとパスワードを書き込んでしまうと、自分の連絡先を見られてしまい、すべて盗まれます。

 そのうえで、その盗んだアドレスあてに、その盗まれた人の名前でひっかけメール(いわゆる「フィッシング・メール」)を送りつけるので、送られた人としては、知り合いから送られたということから、警戒感が薄まるという寸法です。手口は凝っているけれど、まあ、日本のオレオレ詐欺のようなものです。だいたい、彼は「島」は好きだけれど、あそこは「半島」ですし、この英文も日本人が書く英文ではないと思いますが、どうでしょうか。

【第1日 午後9時25分】Aくんから二通目のメールが入る。

 ただいま、Kくん本人から電話があり、この件は事実でなく、ハッキングにあったらしいとのことです。もちろん、日本にいます。(私、悠々人生の名)さんのご指摘の通り、ホットメールとのやり取りの中で、発生したようです。夜分、お騒がせしました。皆さまのご協力に感謝します。このネットは素晴らしいと実感しました。

【第1日 午後9時32分】Cくん(大学教授)から二回目のメールが入る。

 さすが(私、悠々人生の名)さんですね。一件落着ですね(といきたいところです)。

【第1日 午後9時38分】Dくん(新聞記者)からメールが入る。

 Aくんからの連絡で、怪しいとは思いましたが、外務省の当直に現地公館の夜間連絡先を問い合わせました。調べてもらっている時に詐欺メールらしいとの一方がきましたので、御礼を言って切りました。ちなみに、休日に海外で災難に遭った時は、外務省の夜間当直に連絡すれば、対応してくれます。電話は03-3580-3311で自動音声に従って操作すれば、当直につながります。何事もなしで何よりでした。

【第1日 午後10時51分】Kくん本人からメールが入る。

 お騒がせのお詫びです。
 皆さま自宅に戻ったばかりのです(明後日からまた海外に出かけます)。お騒がせしました。本日は関西で行われた中央官庁主催の会議で議長を勤めていて、不在でした。hotmail password管理の失敗でした。こういう日に限ってパソコンを持ち歩かなかった不手際でしたが、急ぎ善処します。対応が遅れて被害者が出ないことを祈るのみです。取り急ぎお詫びまで。

【第2日 午前0時16分】私から二回目のメールを送る。

 今回の偽メールは、Kさんはもちろん、我々にとってもお騒がせな事件ではありましたが、振り返ってみると、皆さん、それぞれの特技を生かして、大活躍でしたね。我が同窓会のメンバーは、なかなか友情に篤くて頼り甲斐があると、再確認した次第です。ところで、このメーリングリストのアドレスが漏れてしまったわけですが、犯人は日本語が出来ないようなので、しばらくこのままのアドレスにしておいて、様子を見ましょう。引き続き妙なメールが来るようなら、その時点でメーリングリストのアドレスを変更します。

【第2日 午前8時57分】Dくん(新聞記者)から二回目のメールが入る。

悠々人生 様

 さすがに我らのマスター。webの知識は抜群ですね。私たちのアドレスの件は、しばらく静観で結構です。もし分かれば、今回の犯人サイドから来る可能性のあるメールの特徴を教えていただければ有り難いのですが。アドレスが、他のややこしいヤツに転売されることも考えられますので、しばらくSPAMメールに気をつけなくてはなりませんね。

【第2日 午後5時25分】私が、このDくんからのメールを読んで返信をする。三回目のメールとなる。

 私の知っている限りでは、"Your hotmail account must be verified" といって、再登録しないと、アカウントが無効になるといい、アドレスとパスワードの登録を促すメールで、Windows Live Team を名乗る手口です。特にhotmailは、Googleのgmailに比べると、脇が甘くて、こういうメールが跳梁跋扈しているのを止められないという噂があります。これ以外にも、メールには、いろいろなバリエーションがあるでしょうから、あまりこのパターンにこだわらず、要するに不用意にパスワードを打ち込まないというのが、ポイントです。

 これらは、いわゆる、フィッシング・メールの一種ですが、よく見ると、返信先が妙なアドレスだったり、今回のように皆さんの衆知を集めれば辻褄が合わなかったりしますから、よくよく考えれば、変だとわかると思います。ただ、今回のように英文ではなく、和文だったりすると、本当だと受け取る人が多く出て来て、被害が拡大するかもしれません。人の善意を逆手にとる犯罪で、まさにオレオレ詐欺そのものです。気を付けましょう。なお、このほか、フィッシング・サイトというものもあり、これにも気をつけるべきですが、今のところはNortonなど、ちゃんとしたセキュリティソフトを使えば、大丈夫です。

【第2日 午後6時23分】Dくん(新聞記者)が、この私からのメールを読んで返信をする。三回目のメールとなる。

 ありがとうございました。よく理解できました。要するにうかつにパスワードを打ち込むなということですね。

 全く違う話ですが、今年も同窓会の全員集合をやりたいものです。たまには箱根か伊豆でやってもいいとは思うのですが、いかがなものでしょうか。






 いかがであろうか。問題の発端は元銀行員のAくんから、午後8時29分に来たメールにある。しかも、心優しい彼らしく、週明けにお金を送ろうかとさえ言っている。海外への送金に、面倒くささを感じないようだ。さすがに元銀行員だけのことはある。ところが私は、インターネットに少しは詳しい者として、そんなものはフィッシングの偽メールに違いないと思ったから、それをまさか本気に受け取る人がいるとは考えつきもしなかったので、いささかびっくりしてしまった。これでは犯人のシナリオ通り、まんまと詐欺に遭うようなものである。そこで、そのメールから21分後になるが、急ぎ第一報を送り、そんなもの放っておけとメールをした。それとほぼ同時に、通信会社副社長も、怪しいと思って、彼の現在地を確認せよという。冷静沈着な彼らしく、誠に的確なアドバイスである。

 その一方で、29分後、大学教授のCくんは、渦中のKくんが勤務する九州にあるその大学に直接、電話して確認しようとした。彼の自宅は中部地方にあるというのに、土曜日の夜遅く、そんな遠隔地の知らない大学に電話することについて、何とも抵抗感はないようだ。私は、さすがに大学人らしいと感心した。ところが、新聞記者のくんはさらに私の想像もつかない行動に出る。彼なりに情報を得ようとしたらしく、約1時間10分後、土曜日の夜になるが、なんと外務省の当直に電話していた。私は、この手についても、これは思いつきもしなかった次第である。そうこうしているうちに、2時間23分後、渦中のKくん本人から電話があって、やはりフィッシング偽メールであることがわかった。

 こうして経過を見ると、最初のメールがあってからわずか1時間以内にほぼ原因と対処方針が決まっている。その素早さもさることながら、それが決まるまで、各人は、その特技を生かして大活躍をしたのがよくわかる。大学教授は教授らしく、新聞記者は記者らしく、私はいかにもITオタクらしく、それぞれの経験と知恵をふり絞って活躍したということである。この同窓会のメンバー、友達として頼り甲斐があるではないか・・・。しかし私としてそれ以上に印象に残ったのは、場合によっては送金してあげようとまで言ってくれた、最初のAくんの持つ優しさである。60歳を過ぎてこういうことを言ってくれる友達など、今どきめったにいない・・・。これこそ、困ったときにわかる「真の友」だろう。

 かくして、今回のフィッシング・メール事件を契機に、我が同窓会のメンバーは、なかなか優秀であるだけでなく、友情に篤く、しかも結束が固いということを再確認したのである。それにしても、雨降って地が固まったのは良いとして、人の善意を踏みにじるような、こうしたフィッシング・メールをあやつる詐欺団に対し、天誅を下すことは出来ないものか・・・。






 騒ぎが一段落したその翌日、大学教授のCくんから、「同僚に聞いたところ、そんなメールは数年前から来ていると馬鹿にされた」というエピソードとともに、国際送金会社のウエスタンユニオンの次のようなパンフレットが送られてきた。ちなみに、こういう詐欺のことを「国際版振り込め詐欺」というらしい。

 最近、国際送金された日本人の間で こんな被害が続出しています。

 外国の友人から、“イギリス旅行中に金を盗まれた。すぐにお金を送ってほしい。”とEメールで頼まれ送金した。後で本人に電話で確認したところ、そんなことを依頼した事実はないといわれた。

 カナダに住んでいる日本人の伯母から、“スペイン旅行中にお金が無くなったので送ってほしい”とEメールで頼まれ送金したが、伯母は旅行などしていなかった。

 イギリスの友人に送金した後、MTCN(受け取り書類)をEメールで知らせたが、そのEメールが詐取にあい、情報が盗まれ、第三者にお金が支払われてしまった。

 インターネットで商品を買った。ウエスタンユニオンにて送金したが、商品が届かない。

 そこで、対策として、

 知らない人には絶対送金しない。

 友人からお金を送ってほしいとEメールで連絡が来た場合は、必ず、本人に電話で確認する。

 送金した後、MTCNを知らせる際には電話で直接本人に連絡する。Eメールでは連絡しない。

 インターネットでの買物代金の支払いには、ウエスタンユニオン送金は利用しない。他の手段で決済する。






ところが、騒動は、これで収まらなかった。続きがある。

【翌々日の朝】Eくんが「六菖十菊ではあるが」と題してメールを送ってくる。
(注)ちなみに、「六菖十菊」という言葉は、本来は5月5日の端午の節句に使うべき菖蒲を翌日に用意するとか、9月9日の重陽の節句に必要とされる菊を翌日に持ってくるというように、時機に遅れて役に立たないことをいう。

 昨夜小生のところに、Kくんからの英文「助けて!」メールが来ておりました。 一ヶ月ほど前にも別の(未知の)人からも「旅先危難カネオクレ」メールがありました。初体験がKくんからだったらやっぱり動揺したと思います。 ともかく報告申し上げる次第。

【翌々日の朝】このEくんの「六菖十菊」メールに返信する形でKくん名の妙なメールが送られてくる。

 Agigatou Gozai masu
 Mada Tai ouni oware te imasu
 from Capo Verdi


【翌々日の昼】そこで私が、メーリングリストのメンバーあてに、次のメールを送った。

私、悠々人生より

 Kくんの名前をかたって、外国人から下のような妙なメール[No:973] が来ていたので、我々のメーリングリストから、Kくんのヤフーのアドレスを削除しておきました。最初に犯人から来たのはホットメール経由だったので、こちらのヤフーのアドレスを止めることまではしなかったのですが、いずれにせよこれで、ホットメールだけでなくこちらのヤフーのアドレスからもKくんは投稿が出来ないことになるのでこれから我々のメーリングリストあてには、妙なメールは来ないと思います。とりあえずは大丈夫でしょう。皆さん方には、引き続き、このディオニソスのメーリングリストを使っていただいて、結構です。

 ちなみに、これ以上、妙なメールが来るようですと、ディオニソスのメーリングリストのアドレスの中で、アットマークの前の最初の部分を変更するつもりですが、その場合は、皆さんにも設定を変えていただく作業が必要となり、大がかりになってしまうので、するつもりはまだありません。

 なお、Kくんあてに申し上げますと、このヤフーのアドレスは、これから使わないどころか、直ちに削除した方がよろしいですね。それから、ディオニソスのメーリングリストには、別のアドレスを登録しますので、それを私まで、知らせていただければ、改めて登録します。

 それから、これはKくんに何が盗られたのかと詳しく聞かないとわからないのですが、どうやらわれわれの個人のアドレスも漏れてしまっているようなので、これについては、各人で対処していただくほかありません。何もないことを祈りますが、まあ、ネットを利用するに際しての、勉強代と思うしかありませんね。それにしても、この犯人、少し、茶目っ気がありますし、送金先の場所から考えて、マレーシア在住の若い華僑のようです。ホットメールやヤフーメールは、今や無法地帯のようで、危ないから使うべきではありませんね。Kくんも(今は海外かな?)、早くクローズした方がよいと思います。

【翌々日の午後】弁護士をやっているメーリングリストのメンバーFくんから、次のメールが送られてきた。

悠々人生さん

 いつもながら鋭い指摘と適切なアドバイス、ありがとうございました。僕は今、G-mailをメインに使っていますが、それでもセキュリティには細心の注意が必要ですね。以前は、署名に自宅住所等を入れていましたが、最近は弁護士事務所が攻撃される例も多くなったので(弁護士会の名簿も自宅を掲載しなくなって10年以上経ちます)、今は削除しました。難しい時代になったものですね。

【翌々日の夜】知らないホットメールのアドレスから、またまた妙なメールが送られてきた。

 ryokai desu
 islandlove@hotmail.co.jp
 ni
 shimashita
 msn ni tsuuchi shite imasu ga naka naka taiouga osoidesu


 Kくん本人からのようにも思えるけれど、あれほど使うなと言っておいたホットメールでまたアドレスを作っている。MSNの対応が遅いことを述べているが、それどころか、そもそもフリーメールなのだから、こんなことでMSNがいちいちアクションを起こすはずがないと思うのだけれど・・・だいたい、なぜローマ字のカタカナ書きなのだろう?海外にパソコンを持って行っていないのか? 疑問は深まるばかりである。もし本人だったとしても、事の本質をご理解いただいていないようだ。こちらからじっくり説明するとともに、ご本人にこういう場合はどうすべきかということを十分にわかってもらわなければなるまい。本人確認もしないで、リストに追加するのは危なそうだ。リストは引き続きこのまま動かさないで、しばらく様子を見ることにしよう。いやはや、まったくもって、大騒ぎである。


(2011年2月7日記、9日追記)


カテゴリ:エッセイ | 23:56 | - | - | - |
初孫ちゃんは2歳2ヶ月

さくらぽっぷ


 私たちの初孫ちゃんが2歳2ヶ月を超えた。私は、つい2週間前に、家族全員が集まる機会に会っただけで、それ以降は仕事が多忙なため、最近の様子を知るチャンスがない。誠に残念であるが、その代わり、週に何回も会いに行っている家内の話を交えながら、近頃のエピソードを思いつくままに書き記しておきたい。

[甘える先] その2週間前の家族全員の会合のとき、両親に連れられて、畳の上に降ろされた初孫ちゃん、遠くから私を認識し、まず私のところに走り寄ってきた。そして、ちょこんと私の膝の上に乗ってくれた。そのとき、3週間くらいは会っていなかったのに、覚えていてくれるのか心許なかったが、なかなか記憶力がよい。またそれだけでなく、真っ先に私に向かって来てくれたということで、これはうれしかった。おじいちゃんとしては、本当に感激したのである。

 料亭で開いたその会合では、10人近い参加者は、日本間の大きなテーブルの周りにぐるりと座った。すると初孫ちゃんは、その参加者の周りをまるで昔のハンカチ落とし遊びのようにぐるぐると回って、誰のところに甘えに行こうかと考えていたようだ。そして、目指す人のところに行ってもたれかかり、その食べ物を分けてもらっていた。誰のところに行くのかと観察していたら、すべてこの半年くらいの間に、少なくとも一回は会ったことがある人ばかりであることに気が付いた。なるほど、初めて会った人には、たとえその場に両親がいても、近付かないということだ。

 面白かったのは、パパがそうした様子を心配して、一度、嫌がる本人を抱き上げて、自分の席に着かせようとしたことがあった。「イヤーょ」と泣き叫んで抵抗した初孫くん、それ以来、その大きなテーブルの周りを回っても、パパには決して近づこうとはしなかった。近づくと、逮捕拘留されることがわかったと見える。

[お兄ちゃん] 2歳を超えた初孫ちゃんは、もう自分は赤ちゃんではないのだという自覚があるようだ。たとえば、バギーに乗るのを強く拒否する。それでも乗せようとすると、「嫌モン」といって、手足をばたつかせて抵抗する。それで、仕方なく手を引いて歩かせるが、それで1キロでも2キロでも休みなしで平気で歩く。2歳の子供って、こんなに体力があるとは知らなかった。

 ところで、初孫ちゃんに向かって「ボクは、赤ちゃん?」と聞くと、直ちに「違う!お兄ちゃん」と答えるから、面白い。最近はその答えが「ううん! 立派なお兄ちゃん!」となったから、大笑いしてしまった。ママから教えられたらしい。昨日、街を歩いていて、バギーを押したお母さんとすれ違った。それをじーっと見ていた初孫ちゃん、通り過ぎたバギーを指さして、「赤ちゃんだ!」と大声で叫んでいた。自分も、おむつをしてまだほ乳瓶でミルクを飲んでいるというのに、気分は確かにお兄ちゃんらしい。

[自分でやる] そんなものだから、何でも自分でやろうとする。たとえば、冬物のジャンパーのジッパーである。教室での授業が終わり、帰ろうとすると、どうしてもジャンパーを着なければならない。それを羽織り、ジッパーを閉めようとして、四苦八苦している。何でも代わってしてしまうと、子供の自主性が育たないから、しばらくそのままにしてやらせておくのだけれど、数分も経てばそのうち後のクラスの人が入ってくるから、手を出さざるを得ない状況が生まれる。そこで、ちょっと手出しすると、「イヤーダ」と拒否する。それでも、10分も経つと疲れてくるから、それでやっとやって欲しいという仕草をするので、代わってあげるということを繰り返している。

 ところが、これを書いて2週間後、自分でジッパーを外せるようになった。いつも帰宅直後に、靴を脱いで揃え、それから外出着を脱ぐという訓練をしている。その結果、いつの間にか、靴を脱いで揃えることは、出来るようになった。そして、ジッパーも外せるようになったが、それから袖が両腕から外れずに後ろ手になったまま、まるでペンギンのような格好をして困っていた。あと一歩というところである。

[断られると] だんだん感情が複雑になってきた。グランマ(家内)が携帯電話を開いていると、近づいてきて、それを横から取り上げようとする。普通なら、借りるときは「貸して」、返すときは「ありがとう」と言いなさいと教えている。しかしそのときはたまたま大事なメールだったので、「ちょと後でね」と断った。すると、うなだれていかにも寂しそうに離れていったから、かわいそうになって、「ハイ、終わったから、貸してあげるね」といって携帯電話を渡そうとした。すると、「いらない」と言って、真横に首を振って断ったので、びっくりしたそうだ。ははぁ、拗ねることも覚えたらしい。

[小さなウソ] お母さんが休みの日、お母さんと二人で過ごしている初孫ちゃん、うれしくて仕方がない。他方、お母さんとしては、たまった家事を片付けなくてはならない。それで、初孫ちゃんを台所から出して、しばらく洗い物をしていた。すると初孫ちゃんが小さく「ウンチ出た」と呟いた。お母さんが振り向いて「何っ?」と言って体を触ろうとすると、ちょっと微笑みながら「出ていないの」といったそうだ。なるほど、自分の持っているカードを切って、駆け引きが出来るようだ。これが2歳になったばかりの子がすることかと思う。

[ご自慢の靴] よく歩く上に、足がどんどん大きくなって、月に一回は新しく靴を買っている。最近の幼児用の靴は、スポーツ・メーカーが出しているものが多くて、デザインが良い。ただそれでも、どのメーカーの靴でもよいかというと、そうではないようだ。とりわけ外国メーカーのものではなく、日本メーカーのものがぴったりする。こんなに小さいのに、どうも足の形が日本人らしく幅広のようで、物理的にそうなるらしい。

 先月買った新しい靴は、そうした日本メーカーの作ったもので、青色を基調としたバスケット・シューズのような形をしていて、紐の色が黄色で、とても格好がよい。それを履いて英語学校に行くと、通りかかった先生たちが、「Wow! New shoes! Wonderful!」などと褒めるものだから、本人、とても気持ちがよくなったらしくて、家内が行ったときに「ニュー・チューズ」などといって自慢していたそうだ。

 それから一月ほど経ったとき、また新しい靴を買って学校へ行った。すると、前回靴を褒めてくれた先生が通りかかったのを見た初孫ちゃん、先生に「ニュー・チューズ」と叫んだものの、急いでいた先生は、あまり反応を示さずにそのまま通り過ぎてしまった。初孫ちゃん、がっくりとした様子で首を垂れて、回れ右をして家内のところに来たそうだ。つまりこれは、一月前にこの先生に、靴を褒められたという記憶が残っていて、とっさにそれを思い出して行動したことを意味する。記憶力と応用力が良い証左であるから、安心した。先生の反応がなくてがっかりしたらしいが、世の中、思い通りにならないこともあるということを知っただけでも、良かったのかもしれない。

[人間の盾] グランマ(家内)とシッターさんとの間に初孫ちゃんがいて、黙々とおもちゃで遊んでいる。シッターさんが、「はいはい、おむつ代えようかな」と小さくつぶやき、振り向いておむつが入っている引き出しを開け始めた。すると、初孫ちゃんはそのつぶやきを聞いたとたん、おもちゃをもってすーっと立ち上がり、グランマの背中の影に隠れて、何食わぬ顔をしてその遊びを続けている。それがとても自然だったので、最初は何かと思っていたら、次の瞬間、今度はグランマの膝の上に乗って、また遊び始めた。それでグランマがふと横を見たところ、ちょうどシッターさんがおむつを持って初孫ちゃんに向かってきたばかりのところだったという。ああこれは、次に何が起こるのかを予測して、味方になってくれるグランマの体を人間の盾として使ったのだとわかったそうな。幼児といって、馬鹿には出来ない。人間以前に動物としての必要な本能が確かに備わっている・・・なかなか高度な知能である。

[おいちい] 何でもよく食べるようになった。そして、食べ物を口に入れると、「おいちい」と言う。ママとしては、うれしい限りである。そのうち、出された食事を見て、たとえばカレーライスのごはん部分をスプーンでほぐしながら、「これ、おいちいね」と言う。以前に食べたときの記憶と照らし合わせて、口に入れたときを想像してしゃべっているのである。ただ、酸っぱい物は、まだ苦手のようだ。しかしそれでも、ほんの2月ほど前には食べられなかった苺を、ぱくぱく食するようになった。一歩一歩、味覚も進んで来ているようだ。

 既に半年ほど前から、ホテルのバイキングに連れていくと、まだ幼児だということで一円も支払っていないのに、あの大きな一皿に盛られた食べ物をすっかり平らげるので、両親が恐縮していた。それで、何を食べたかと聞くと、パンやスープと並んで、フォアグラ、キャビア、トリュフという世界三大珍味だったというから、笑ってしまった。これは、将来よほど美味しいものを食べさせなければいけないから、大変だ。

[鉄男くん] 前回のエッセイでも、新幹線が大好きだと書いた。たとえば、お昼寝の時間になると、「ぼく、チィンカンチェンと寝る!」と叫んで、新幹線の模型を小脇に抱えて、長い廊下を左右にぴょこぴょこと傾きながら走っていく。もちろん、新幹線オンリーでなくて、在来線についても興味津々である。外出からの帰り、本人に「タクシーにする?それとも電車?」と聞くと、決まって電車という。

 あるとき、外出先の駅から乗ろうとしていると、その名も、桃太郎という力強い名前の貨物列車が、グランマ(家内)と初孫ちゃんの待っていたホームに入って来た。しかもそれは、たくさんの石油コンテナ車を牽引していたのだが、そのひとつひとつの貨車が、自分の持っている模型鉄道(グリーンのBRIO)の容器にそっくりだった。それらがガタンゴトンと音を立てて通過するものだから、初孫ちゃんはもう大興奮してしまった。列車が遥か向こうに見えなくなるまで、ずっとずっと見送っているという、可愛い鉄男くんぶりを発揮していた。

[シッターの役割] 娘夫婦は共稼ぎの上に、双方とも最近はやりの言葉で「超」多忙なものだから、子供の世話のかなりの部分は、シッターさん(nanny)に頼らざるを得ない。ところが、これを一度でもやってみたらわかるが、大変な重労働なのである。世の中の専業主婦といわれる奥様方は、こういう、敢えていえば「仕事」を、自分の子供の数だけ毎日毎日こなしているのだから、実に頭が下がる思いである。私の場合は、前回のエッセイでも書いたが、家内と二人で、わずか6時間やっただけで体が悲鳴を上げてしまった。自分の孫ですらそうなのだが、これを赤の他人が引き受けてやれといわれても、私なら御免被るところである。

 しかし、そんな仕事を引き受けてくれる人もいるのが、世の中面白いところで、それなりの謝礼さえ払えば、やってもらえる。しかし、大事な子供を預けて、そういう英語学校に連れて行ったり、食事をさせたり、運動させたりするのだから、女学生のアルバイトというわけにはいかない。それで、そういう方を派遣していだける専門の会社がちゃんとあって、そこに依頼しているようだ。こちらの条件としては、子育てを経験した40〜50歳代の方で、保育士なり小学校教諭の免許なりを持っている方ということにしている。一度、その自宅で音楽教室を開いている方に来ていただいたら、赤ちゃんを抱いて、美声で何曲も子守歌を歌ってくれて、びっくりしたそうだ。なお、最近は英語を習っているから、できれば英語対応の方をお願いするようにしているが、割増料金を支払う必要がある。いずれにせよ、良い方に来てもらえれば、子供は幸せだし、親としては本当に安心できる。しかし、良い方ほどあちこちで引く手あまたで、取り合いになることも珍しくない。

[グランマの役割] そういう中で、一週間通してお願いするということは、激務であることもあり、事実上不可能なので、どうしても一日ごと、都合のつかないときには、半日ごとにお願いするという羽目になる。中には相当遠くから、2時間も通勤して来ていただいている方がいるが、こういう方は、もう損得抜きで、なにがしかの愛情とやり甲斐を感じて来ていただいているのだと思う。いくら感謝してもしきれないところである。ところが、やはり体力と注意力の限界があって、そうしょっちゅう来ていただくわけにはいかない。そうすると、新しい人が入れ替わり立ち替わりどんどん入ってきて、親の目が届かなくなる。そういう場合に、新しい人がまごつかないように、そして初孫ちゃんが心理的に不安定にならないようにと、グランマ(家内)の出番となる。それなら、家内が一日中面倒を見ればどうかということになりそうだが、たとえ孫のためといっても、とてもとても体が続かない。気持ちはあるが、お人形さんのような女の子などと違って、これほど活発に動き回る男の子の世話は、もはや体力の限界である。そんなわけで、我がグランマさんは、初孫ちゃんの精神安定剤のような役割を果たすにとどめ、そのために週2〜3回、せっせと楽しそうに出かけている。私としては、とっても羨ましい。

 ちなみに、そうしているうちに、家内がいうには、「あの子は、子供として扱わない方がよい。何か気に入らないことがあったら、よく話を聞いてその希望通りにしてあげるか、あるいは危険があるなどの支障があるときはそのことをよく説明してあげれば、納得して無理は言わなくなる」らしい。こうした「説得の技」だけでなく、気に入らなくて、ポンポンものを投げ始めようとする孫に、ちょっと気を引くものをあげて、それに集中させて気が収まるまで待つという「熟練の技」も、いくつか開発したらしい。ベテランの味というわけだが、なかなか面白い。伊達には歳をとっていないということか。

[英話学校] 日常生活では当たり前の常識になっていることが、実はそうではなくて、あるとき何かを見聞きしたことをきっかけに、突然その常識が崩れてしまうことがある。私はつい最近、そういうことを経験したのである。それは、まだ生まれて1歳と11ヶ月しか経っていなかった頃の初孫ちゃんが、とある英語学校で英語のレッスンを受けていたときのことである。

 前回のエッセイで書いたことであるが、初孫ちゃんは、幼稚園児用のものより、もっと小さな机と椅子に座り、イギリス人の先生と一対一になった。先生がキリン、ライオン、シカ、ヘビなどの模型を次々に出して、それを英語で言っていく。それが終わると、それらを机の上に並べて、ライオンはどれかと聞く。すると孫は、その中から選んで、「Here!」と言って差し出す。まだ初めて1ヶ月しか経っていないというのに、6つあった動物のうち、間違ったのはたったひとつだけである。先生は、「Good Job!」と言って褒め、間違っても決して叱らない。それから、「A、B、C・・・」のアルファベットが書かれたカードを取り出して、それを読みながら猛スピードでめくる。そして、それをめくりながら孫に言わせる。驚くことに、そのほとんどを英語でいえた。そうかと思うと、世界の主要国の国旗のカードを出してきて、それを示しながら「England、France、Germany、Holland、Belgium、Japan・・・」などと説明し、それを束ねた上で、「Franceはどれ?」という。すると孫は、その束の中からちゃんとフランスを選んで「Here!」と言って渡していた。オランダとベルギーについては、迷っていたが、そんな国旗なんて、私もよく知らないではないか・・・。

 数字についても同じようにカードで教え、私が行った2ヶ月前のそのときには10までやっていた。そうしたカードでの勉強に飽きてきた頃には、教室に突然、音楽が流れる。孫を立たせて、まず先生が節回しを付け「Head Shoulder and knee and tou ....」などと歌を歌いながら、その順に頭やら肩やらをさわってお手本を見せる。それをラジカセの音楽に合わせて孫に反復させるのである。全身を使うから、かなり激しい運動になるのだが、孫は調子を上げて、今やもの凄いスピードでこれをやるという。また、同じ音楽系として、たとえば世界地図で大陸や大洋の名前を覚えさせるものがある。これは、「North America、South America・・・Pacific Ocean」といい調子で歌い、世界の大陸や大洋を指し示すものであるが、これは満点だった。

 それから2ヶ月ほど経った今は何をやっているかというと、たとえば、ビバルディの四季の音楽を流しながら、先生は「Who did compose it?」つまりこれは誰が作曲したの?と聞くと、孫は流暢な英語で「Vivaldi」と答え、「Which country?」(国はどこなの?)と聞かれると、世界地図でイタリアを指さす。それから、モナリザの絵でも、同じようなことをやっているらしい。それから、最近は数学みたいなものも入ってきて、円、三角形、四角形、五角形、六角形、球、直方体、台形、円錐形を英語で言わせている。また、小さなポールが並べられるものを用意して、紫のポールを1本、青のポールを2本、また紫のポールを1本、青のポールを2本と並べ、さあ次の穴にはどのポールが入るの?と聞く。法則性を見つけさせているようだ。すると孫は、いろいろなカラーのポールが入った箱の中から、紫のポールを抜き出して、その穴にちゃんと入れたそうだ。先生は、「Super Human beings!」と言ったとか言わないとか・・・。

 家で遊んでいるときも、その「North America、South America・・・」という歌のCDがかかると、そわそわする。そして、どこからか世界地図のジグソーパズルを出してきて、歌を口ずさみながら北米大陸などのピースを入れていく。そうかと思うと、「Head Shoulder and knee and tou ....」の歌の場合は、すっくと立ち上がって、各ポーズを決めて体操する。調子に乗ったグランマ(家内)と、これを向かい合わせでやるというから、笑ってしまう。また、別になんの音楽もかかっていないときのことである。四角い箱に三角形、四角形、五角形、丸などの穴が空いているおもちゃを自分で出してきた。これは、その穴の形に合うピースを入れていくので、確か知恵の玩具といわれるもののひとつだが、それでもって、「Circle、Triangle、Pentagon・・・」とひとりでぶつぶつとつぶやきながら遊んでいる。これって・・・信じられないが、自主的に予習をしているのだろうか? 

 前回、2ヶ月前に授業を参観したときは、「さあ終わりというときになった。すると、子供は立ち上がって両手を体に沿ってしっかり伸ばし、直立不動の姿勢になり『Thank you for teaching me, Mr. Jones!』と英語の文章をはっきり言った」と書いた。しかし最近ではそれどころか、それをしゃべった後にお辞儀をし、そのまま回れ右をして右後ろにいるママにお辞儀をし、それからさらに右を向いて、左後ろにいたパパにもお辞儀をして教室から出るという。いやはや、これは何たることか・・・。このお正月の宿題は、自分の名前を英語で書けるようになることだったそうだ。

[最近のレッスン] 授業が始まった。まず、等身大の立体人体模型を先生が持ち出してくる。それを使って、内蔵の位置と名称の学習だ。肺、心臓、胃、肝臓、大腸、小腸、腎臓は取り出したり、元にはめ込んだりの作業を繰り返しながら、反復発音させる。そして、最後は肛門からスルリとなるんだよと、人体を裏返して、お尻の部分を指しながら説明していた。次は、いつものABCと0〜30までのカウント。これらは簡単すぎて、退屈な模様。

 それではというので、理科の実験に移る。水を張ったたらいのようなものを前に、物の浮き沈みについて説明する。幾つかの物体のペアを出して、水に浮く物と沈む物とがあると話し、「表面積が大きいものや空気を多く含む物(空き缶)は浮くね!クリップやピンなど、表面積が小さい物は沈むでしょ!」とやってみせる。初孫ちゃんは、それを見ながら、ぽかーんとして聞いている。わかっているのか、心許ない。そこで、先生はやおら、「これらはどうだ?sink or float?」と聞いてくる。それを答えたら、実際に水の中に入れて正解を見せる。なかなか難しいが、それなりに7〜8割ほどの正解率でクリアーして、素晴らしいと褒められる。けっさくだったのは、先生が「これは浮くよ」といって出してきたものが、・・・あらら。水の中に沈んで、困っていた。それからは、先生は一生懸命に箱の中をかき回して、重たそうなものを探していた。

 さて、ここで疲れたから小休止の後、得意の世界地図の歌を歌った。それで元気が出たところで、絵本に移る。指で指し示しながら、英語で読んでいく。それをフォローさせて、発音させる。そうこうするうち時間となり、先生がグッバイソングを歌った。そして冗談で、「Oh! Sad!!」悲しいなあと、先生が大袈裟に泣く真似をした。すると、初孫ちゃんも、ニヤリとしながらそれに付き合ってエーンと泣く真似しちゃって・・・これがまだおむつをしてほ乳瓶でミルクを飲んでいる幼児とは思えない。先生は、面白くて大喜びし、とっても気が合う師弟関係を築いている。

[朝練を受ける] これまで、初孫ちゃんが受けてきたのは、先生との一対一の40分間のプライベート・レッスンだった。効率は良いのだが、他の子供とも交流させて、社会性を身に付けさせたい。そのために、近く、2〜4人くらいのクラスに入れるという。その編成の参考にするためということで、始業前の時間の早朝に複数の子供を対象に試験的レッスンがあったらしい。初孫ちゃんと一緒に、もうひとり、女児が受講した。歌は一切なくて、直ぐに授業形式である。まず「sad、happy、angry、cold」などを黒板に書き、身ぶりをさせる。次に二人の先生のうちのひとりが、太陽系の惑星を教え、もうひとりの先生がその横からカードを使って説明。いつもの違う雰囲気に、身ぶりが得意な初孫ちゃんも、またその相方の女児も、いずれも緊張して固まったまま。でも、初孫ちゃんは声だけは良く出て、きちんと応答したから褒められた。惑星の場面では、土星を見た瞬間、初孫ちゃんは「Saturn!」と言ってこれまた褒められる。

 次に海の生き物の図鑑が出される。初孫ちゃんは、慣れた手つきで勝手にページをめくりながら「turtle, dolphin, whale」など言い、「How many?」と聞かれたら直ちに答えて、これまた褒められる。相方の女児は雰囲気に呑まれてしまったか、リアクションがまったくないのでかわいそうなほどだ。次に絵本が出されたが、つまらないらしくて初孫ちゃんは足をばたつかせて、先生に注意された。女児も白けた様子。今度は各々にアルファベットが書かれている3つのキューブが渡された。それを並べて単語を作るのが課題で、初孫ちゃんはさっさと仕上げ、先生に褒められる。それで初孫ちゃんだけ終了し、女児は引き続き残って追加の授業を受けていた。 まあ、慣れの問題と先行学習をしていたかどうかの違いだろう。

[いつでも撤退] 娘は、この私たちにとっての初孫ちゃんを、有名私立などに入れようとするためにこうして英語レッスンに通わせているつもりでは別にないという。ただ、自分の経験から、言語機能が形成される幼児期から、ともかく英語を耳で聞いて習わせておかないと、中学校やそこらで初めて勉強していては、手遅れだという気持ちでやっているとのこと。我が身を振り返ってなかなか耳が痛い話ではあるが、まったくその通りである。娘はそういう気持ちで、たまたまこの英語学校に通わせたところ、意外と先生と気があって、まるでお遊戯をしているかのように自然に英語を覚え始めたので、これは行けると思ったらしい。それでも、子供の顔をいつも見て、あまり楽しそうでなかったら、いつでも撤退するつもりでいるが、今のところ、大丈夫で、安心しているとのこと。

[掛け合い漫才] 確かに、私が見ても、いつも教えてもらっているイギリス人の男の先生は、なかなか人柄も良く、初孫ちゃんと仲良くなって、最近では初孫ちゃんから日本語の単語、たとえば新幹線とか、のぞみなどを教えてもらっているというから、笑えてくる。また、この先生との掛け合いも、なかなか面白い。たとえば、初孫に向かって先生が、「What is this?」と言いながら、長い両腕を伸ばしてその物体を見せた。すると初孫ちゃんは、先生から聞かれているその物体ではなくて先生の腕自体に注目してしまい、「Oh! Long arms!」長い腕だねと答えて、その腕を撫でたものだから、抱腹絶倒していた。まるで、英語版の掛け合い漫才だと思った。

 こういう授業は、長続きするに違いない。子供に愛情をもって接してくれることこそ、大事なのだと思う。また、出来ればそれだけでなく、子供と思って馬鹿にせず、ちゃんとした人格をもっているひとりの人間として扱ってくれれば、家族としてはとてもうれしい。事実、こちらの学校の校長先生は、配下の先生たちに、生徒がいかに小さくとも「a young gentleman」として接するようにと言ってくれているらしい。

[幼児教育] 2歳前後というこの年代は、まだ言語機能が発達する途中なのであろうか、私の観察では、小難しい日本語より、英語の方がちゃんと発音出来ている。私を含めて並みの日本人なら不可能な「R」と「L」の区別は、できるようになった。「W」の発音は、何度も先生に直されていたが、それで良いといわれた孫の発音も、家内にいわせれば、なぜそれで良いのかよくわからないという状態だったとのこと。それやこれやで、今では私も家内も、変な発音を教えないようにと、初孫ちゃんの前では、英語をしゃべるのを自粛するほどである。

 それにつけても、最近よく思うのは、これまでやって来られた幼児教育というのは、いったい全体、何だったのだろうかということである。今回、孫を通じてわかったことは、こんな2歳になるかならないかの子でも、ちゃんと教育すれば、それに応えてかなりのレベルになるということである。ところが我々が小さい頃は、この年齢だと、単に放っておかれただけである。今、30歳を越している私たちの子供が幼児の頃でさえ、やっとNHKの幼児番組「お母さんと一緒」というのが始まったり、あるいは英語番組では「セサミ・ストリート」が放映され始めた時代であった。確かにこれらは教育的ではあったが、現在の視点では、まだまだ幼稚なリトミック体操のようなものに過ぎなかった。それでも、2歳児となると、何かさせないといけないという気になって、我が家の場合は水泳教室には通わせたが、とても英語やらその他の習い事をさせるという発想すら思いつかなかった。ようやく3歳になって、幼稚園の3年保育に行かせようとした程度で、まあ要するに、この年齢は、まるで未開拓の土地のような感じだったのである。

 ところが、今回、初孫ちゃんの活躍を目の当たりにして、これはしっかりとしたカリキュラムに基づいて良い先生が教育すれば、意外に成果が得られるのではないかという気がしてきた。まるで、ダイヤモンドの鉱山を掘り当てたような気分である。ただし、この分野は、おそらく個人差が大きく出るのではないかと思う。それは必ずしも能力的に出来る子と出来ない子がいるということではなく、子供自体の発達の程度と性格、そして家庭の環境によって、大きく左右されるのではないかと考えている。またもちろん、子供が嫌がるのに、無理強いしては、逆効果である。初孫ちゃんが授業を受けているときにも、隣のクラスで最初から最後まで泣いていた子がいた。こういう子供さんの場合は、おそらくお母さんと二人だけの安定した世界から、急に学校の教室へと引きずり出されて怖がっているのだろう。だからまず、そういう環境に慣れることが先決であり、今すぐに受講させるようなことは、考え直した方がよいと思うのである。

[幼児の哲学] ちなみに、昨年12月22日付けのAFP通信によると、幼児の哲学クラスを追うドキュメンタリー映画がフランスで話題になっているという。それは、愛や死、自由といった大きな哲学的テーマを、3〜4歳児が語り合うクラスを追ったドキュメンタリー映画である。

 それによると、「集中力を高めるために灯されたキャンドルを囲み、子どもたちは車座になる。クラスは簡単な問答から始まり、徐々に重く複雑な問いに移っていく。子どもたちの答えは可愛らしいものから、鋭いものまでさまざまだ。『知性』に関する討論で、ひとりの子は『うちのお母さんはヌテラ(Nutella、ヘーゼルナッツチョコレートスプレッドの商品名)を冷蔵庫に入れないから』知性があると言った。大人のほうが子どもよりも知的か、という問いに別の子はちょっと考えてから『そうでもないよ。だって、大人は僕たちに『おまえはなんにも知らない、おまえはなんにも知らない』って言うけれど、僕たちは色々知ってるからね』と答えた。『自由とは何か』を考える回で、ある子が『自分の好きなふうでいられること、息が吸えること、子どもでいられること』と答えると、別の子は一言、『牢屋から出られること』と言う」というわけで、非常に知的な会話である。これも、子供と思って、決して馬鹿にしてはいけないという一例であると思う。あの小さな頭で、一生懸命素晴らしいことを考えている。日本で封切りがされたら、是非見てみたいものである。






  関 連 記 事
 初孫ちゃんの誕生
 初孫ちゃんは1歳
 初孫ちゃんは1歳4ヶ月
 初孫ちゃんは1歳6ヶ月
 初孫ちゃんもうすぐ2歳
 初孫ちゃんは2歳2ヶ月
 初孫ちゃんは3歳4ヶ月
 初孫ちゃんは3歳6ヶ月
 幼稚園からのお便り(1)
10  初孫ちゃんもうすぐ4歳
11  幼稚園からのお便り(2)
12  初孫ちゃん育爺奮闘記
13  初孫ちゃんは4歳3ヶ月
14  初孫ちゃんは4歳6ヶ月
15  孫と暮らす日々



(2011年 2月 1日記)


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