湯島神社の聖と俗
2008.02.25 Monday | by 悠々人生
湯島天神の2月は受験祈願と梅まつりが重なってまあその忙しいこと。片方では、受験祈願と合格お礼の絵馬で鈴なりであり、他方では、変わったベリーダンスや中国の雑技のパフォーマンスがある。いつぞや悟ったことであるが、上野の下町にあるこの湯島天神は、学問の神様として知られる菅原道真を祀った「聖」と、それから下町風の「俗」とがほどよく入り混じった有難い社(やしろ)なのである。
東風吹かば 思い起こせよ 梅の花
主なしとて 春な忘れそ
菅原道真
湯島神社といえば、まずこの句を思い出す。事実、 受験シーズンになると、この神社は必死になっている受験生でいっぱいになる。しかし、それだけでなく、この神社には下町の社という側面もあり、同じ2月の 梅まつりの出し物は、結構、俗っぽいのである。
今年の湯島神社へのお正月の初詣は、天気はよかったものの、吹きすさぶ北風が冷たくて、耳が痛くなった。ちょうど北陸の方は一晩に何十センチも積もる大雪のようなので、そちらに雪を降らせてから山越えをしてきた 寒風に違いない。
そんなことを思いながら、家からテクテクと15分ほど歩いて、湯島神社に着いた。もう1月も6日なので、神社の中は、初詣客というより、受験生でいっぱいである。「確か、うちの子たちの受験の年には、心の中でドキドキしながらここで絵馬を書いていたっけ」と思いながら見ると、もう絵馬を掛けている場所は鈴なりである。
そちらにゆっくりと近づいてみると、いくつかの絵馬が表になっていて、願い事が読める。これを何枚か読んでいると、本当に面白いのである。いや、受験生を笑っているのでは決してない。私のような歳になると、この年頃の若い人たちの「生の作文」を目にすることは絶えてないので、そういう意味で実に勉強になったのである。
そこで、こちらの「湯島の絵馬」をご覧いただきたい。
とまあ、以上が必死になっている受験生の様子であるが、しかしその反面、湯島神社は上野という東京の下町の神社であり、地元住民向けに、梅まつりと名うっていろいろな出し物をやっている。カラオケ大会、地元婦人会の踊り・・・、などというのはまだ理解の及ぶ範囲内である。しかし、この「ベリー・ダンス」などというのは、もう私には想像を絶するものである。
つい、数日前までは、受験生が鈴なりでいたその同じ境内で、またこれは、俗っぽい行事をやっているものだと思うが、そういえば、泉鏡花の婦系図・湯島の白梅での、お蔦と主税の話もあるくらいだから、まあ、ベリー・ダンスも相応なのかもと納得した次第である。いずれにせよこのあたりの融通無碍さが、この神社が14世紀以来生き残ってきた秘訣なのかもしれない。
言葉だけではあまりピンと来ないと思うので、「2003年のベリー・ダンス」と、「2008年のベリー・ダンス」をご覧いただきたい。前者は至って普通のベリー・ダンスだった。ところが、後者はいったい全体、これは何だろう。まるで金色の鶴の舞のごとくである。これを進歩というのか、あるいはそれとも退歩というのか・・・。
(2004年1月記、2008年2月25日追記)