徒然023.ある水槽メーカー

 今朝の新聞をふと見ると、「観賞魚水槽大手メーカーのニッソー(本社・東京)が民事再生法の適用を東京地裁に申請した」とある。負債の総額は95億円で、その原因は、景気低迷により水槽の需要が減少したこと、バブル期の不動産投資で含み損が生じたこと、大口取引先の倒産で債権が焦げ付いたことであるという。些細なことではあるが、実は私はこのメーカーには、大変お世話になったことがある。その顛末は、私のエッセイ(鯉のお話)で、次のように書いたところである。

 「ある2月の寒い夜、勤めから帰って水槽に目をやると、水が大量に減っていた。ベランダに出てみると、そこは漏れ出た水でびっしょりと濡れている。手が切れそうな冷たい水をかきわけてやっと調べた結果が、水槽のひび割れである。底のガラスに亀裂が走っていた。しかし、水は一気に流れ出るというわけでもない。もう午前零時を過ぎてしまっている。仕方がないので、ホースから水道の水を出しっぱなしにして、様子を見たところ流れ出る水と入ってくる水とがどうやら釣り合っている。とりあえずそのままにして、その夜は寝ることとした。寝床の中で、はてどうしたものかと考え始めたら、なかなか寝付けなかった。結局、水槽のメーカーの営業所を電話帳で調べて、水槽の現物を持ってきて助けてくれないか、頼むこととした。

 翌朝、ニッソーというメーカーの北区にある営業所が、環八道路を通ってくれば比較的近いということがわかり、電話をして窮状を訴えたところ、快く来てくれることになった。おそらく電器機器のメーカーだったら、こういうわけてはいかないだろう。ペットを扱うメーカーだから、顧客の心がわかるのだろうと思って、うれしくなった。しかしその日は、私はどうしても外せない仕事があり、後ろ髪を引かれる思いで出勤し、あとは家内に任せた。これからは、家内からの伝聞である。

 そのメーカーは、四輪トラックに乗って、お昼過ぎに来てくれた。ここで最初に問題になったのは、『ウチの水槽ではない』ということだったらしい。それまで、この会社の水槽を使っていたし、外見もそれとほとんど同じだったから、ついこちらもこのメーカーに声をかけてしまったからである。家内が『まあ、そう言わずにお願いします。今から小売店に頼んでもとっても間に合わないし、水がなくなれば死んでしまうから』といって頼んだところ、それでは仕方がないということになった。

 それから、この来てくれた人は、『この鯉は、いくらしましたか』と聞いたらしい。家内が『たった500円でした』というと、安心した顔で作業に取りかかったとのこと。『確かに、500円と50万円の鯉とでは、取り扱いには差があるわね』と家内は笑っていた。ところが、その人は、それから大奮闘してくれたという。この寒い中、暴れる鯉太マンを濡れ鼠になりながら両手で捕まえ、これを予備のバケツに入れた。それから亀裂の入った水槽の濾過装置や玉砂利など一切合切を外し、新しい水槽を台の上に据え付け、またこれらを入れてくれた。そしてゆっくりと鯉太マンをそこに戻したという。家内が心から『ありがとうございました』とお礼を言うと、『いやぁ、こんなことをしているから、当社は儲からないんですよ』というので、大笑いしたという。近頃では、なかなか珍しい奇特な会社である。バブル後の平成大不況は乗り切ったのだろうか。」


 確かこの会社は、ガラスの水槽の角を、それまでの直角から丸くしたことでも知られている。これによって、水槽を鑑賞しやすくなったし、角がとがったままで危ないという気もしなくなった。こういう企業こそ、再生してもらいたいものである。





(2004年7月27日記)



カテゴリ:徒然の記 | 22:10 | - | - | - |
上野のねぶた


 近くの上野で夏祭りのパレードがあるというので見に行ってみた。お目当ては、秋田の竿灯と青森のねぶただったが、最初の方の沖縄のエイサー踊りは確かに面白かった。しかし午後6時半からの始まりなのに、1時間経ってもなかなか出てこない。そこで、しびれを切らせて出発地点とおぼしきところに行ってみると、あった、あった。道路の脇に、青森のねぶたが鎮座ましましている。これはどうやら、本能寺の変の信長と光秀らしい。









【後日談】

 その後、私も人生に余裕が生まれ、青森ねぶた・弘前ねぷた、五所川原の立佞武多などを見物に行った。




 青森ねぶた・弘前ねぷた(エッセイ)


 五所川原の立佞武多(エッセイ)








(2004年7月24日記)




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江ノ島のくらげ


 ある雑誌の巻頭のグラビアで「くらげ」に魅せられた女流写真家(鈴木朱紀子さん)の写真と文章が目に入った。それがあまりにも魅力的なので、ふと私もくらげを実際に見たくなり、早速、江ノ島水族館を訪ねた。

 いるいる、色んなくらげがいる。尾長鳥のように長い尻尾をたなびかせてふうわりふうわり泳いでいる。これに刺されるとクシャミが出るらしい(あかくらげ)。おや、キノコが泳いでいる(パシフィック・シーネットル)、かつて刺されたことがある憎くき仇敵(みずくらげ)、ひっくり返って泳いでいるもの(さかさくらげ)、花笠と同じヤツ(はながさくらげ)、色とりどりな小さな体でセコセコ泳ぐもの(カラージェリーフィッシュ)。確かに、おもしろいし、あやしい美しさがある。くらげは、10億年前から生きているとのこと。





(2004年7月11日記)




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小田急電鉄の片瀬江ノ島駅舎


 この竜宮城のような建物は、小田急電鉄の片瀬江ノ島駅である。日本中、このような駅舎になったとしたら、面白いのかもしれない。いずれにせよ、全国画一の建物ばかりという世界から、各地それぞれに良い意味での地域性のある建物が建てられる世界になればいいと考えるが、いかがであろうか。

 なお、そういう意味で一度見てみたいと思っているのがJR五能線の「木造駅(きづくりえき)」(つがる市)である。青森県の観光情報HPによれば、この駅は、「亀ヶ岡石器時代遺跡から出土した遮光器土偶こと“しゃこちゃん”の形をした迫力ある駅です。土偶本体は、目を点滅させて電車の到着をお知らせし、乗客をお出迎え、お見送りをしております。本駅舎は、特徴ある駅として“東北の駅百選”にも選定されています。」とのこと。こういう「遊び心」がよい。





(2004年7月11日記、2020年7月8日追記)


 

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能登の軍艦島


 世界各地にはそれぞれの自然の造形があるが、能登半島の先端の珠洲市近郊にあるこの見附島は、軍艦と似ているので軍艦島といわれているそうな。そういえば、この角度から見ると縦にとがった線が走り、確かに船のへさきのようにみえる島だった。



(2004年7月1日記)


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日本海ソーラン祭り(能登食祭市場にて)


 能登に行ってみた。観光立国をそのまま地で行くような元気さで、面白い旅となった。なかでもこのソーラン節は、皆さんを引き付けるリズム感と華麗な踊り、それにチームワークが好循環をよんで、見ていても踊っていても、楽しいものだった。特に、子育てを終えたような中年の奥さん、まだ若いお母さん、中高校生のお嬢さん、それに4〜5歳の女の子などが一斉に同じ踊りに興じているのであるから、全く愉快である。女性は元気であるが、ひょっとしてこれ、現代のお蔭参りではなかろうか。

 なお、旅の記録として写真も撮ってあるので、ご覧いただきたい。





(2004年7月1日記)




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