徒然017.信じがたい銀行

 私の銀行のキャッシュカードには、両脇にスリットがあり、その片方は普通の預金の引き出し用だが、もう一方にはマイカードなるものになっていて、いつも引き出しのときに、紛らわしくて困っていた。急いでいるときなど、誤ってマイカードの方を入れてしまうことがある。そういうときは、ATMの機械が警告してくるので、あわててひっくり返して預金の引き出しの方を入れなおすということが、たまにある。

 ある日、私の銀行預金通帳を見て、そういえばしばらく放っておいたなあと思い、それをATMに持っていって、印字をしてもらった。キーン・キーンという音がして、ガチャガチャと機械が働いた。それが終わって出てきた預金通帳を何の気なしに見ていたところ、あれあれっ「ご返済 1万円」という欄があるではないか。「おかしい、借金などしていないのに」と思って、念のためにその通帳をかなり前まで遡ってチェックしたものの、どうもそれらしき項目は見当たらない。

 そこで、その辺にいた行員に、いったいこれは何だろうと相談した。すると、「お客さん、マイカードで借りたことはありますか」と聞くので、「いいえ、全然ありません」と答えた。「他行で引き出したことはありますか」と言うので、「そういえば、2〜3ヶ月前に、近くの銀行で預金を下ろしたことはあるけど。」と答えると、その行員はちょっと失礼といって私の通帳を見て、「あった、あった。これですよ。」というので見ると、8月の初めに6万円と3万円、9月も4万円を別の銀行で下ろしている。

 「これが関係あるんですか」というと、行員は、「ウチのATMでは、預金を下ろそうとしてキャッシュカードを入れる方向を間違って、マイカードつまり借金する方を入れると警告の画面が出るのですが、他行のATMだと区別できなくて、お客さんがマイカードで借り入れをしたと思ってお金が出てきてしまうのですよ。だから、マイカードの残高をチェックしてください」と言う。

 こちらは借金をする気などさらさらないのに、それは一体何だと思ったが、ともかくマイカードの残高とやらを見たところ、「31,888円」となっている。やっぱり、知らないうちに、借りていたことになっていたらしい。仕方がないので、普通預金からお金を繰り入れて、それを帳消しにした。

 確かにそれは、こちらが他行で引き出し、しかもキャッシュカードの方向をたまたま逆にして引き出したからそうなったのかもしれないが、だいたい最初から借りるつもりもない客に、こんなことで借りさせた形をとって、結果的に金利を稼ぐというのは、いささかひどいのではないかと思ったものである。

 それにしてもこれ、金利の計算は、どうなっているのだろうか。8月に3万円借りたのが10月になって1万円の利息を差し引いて元利31,888円というと、わずか二ヶ月で3万円に対して11,888円もの利息となる。ひどい暴利ではないか。しかし、これでは利息制限法の上限金利どころではないので、それとも、元金はやっぱり4万円の方なのだろうな。とすると、41,888円というわけか。いずれにせよ、もうちょっと預金通帳をよく調べてみよう。いやはや、銀行すら信じられない世の中になってしまったようだ。いや、護送船団のいままでが、異常だったのかもしれない。


(2002年10月21日記)





(後日談)

 12月になって、取引明細書が送られてきた。それによると、
  9月4日  他銀行で、40,000円マイカード引き出し。
  9月末   手数料と利息 114円
 10月    新規利用料1,470円! 一体、何だこれは!
        利息、295円。
 11月    利息、65円。
  要するに、利率は、8.4%だが、新規利用料というのが、響いたようだ。


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緑青の商店


 築地の辺りを散歩していると、ビルの谷間に、こんなお店を見つけた。三階建ての商店で、壁には「諸鳥、鶏卵商」「宮川商店」という文字が浮き出ている。

 いまでこそ、緑青だらけで目立たない建物だが、何十年前にこの建物が出来た当初は、金色に輝く銅板で囲まれていて、さぞかし美しかったのだろう。今でもお店の中では何人かの職人さんが、たくさんの鳥をさばいているのが見えた。正面のところで、鶏肉の小売もしている。ははぁ。いまも現役なんだ。





(2002年10月20日記)




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