紫陽花まつり


 近くの白山神社では、6月の中旬に、紫陽花まつりが行われる。といっても、狭い境内の中に所狭しとばかりに植えられている色とりどりの紫陽花を愛でて、ぞろぞろと見て歩くだけである。もちろん、若い人というよりは年寄りばかりが目立つ。いずれもあらかじめ打ち合わせたかのように、帽子とチョッキを身につけて、三脚付きのカメラのファインダーをのぞき込んでいる。

 ここに来ると、紫陽花には誠にもっていろんな種類があると改めて思い知らされる。あざやかな青色が定番だが、そのほかにピンクや薄紫のもの、あるいは真っ白なものもある。それから、ガクアジサイといって、真ん中には小さな花が密生していて、周囲に大きな青いガクが散らばっているものも、なかなか魅力的である。

とまあ、そういうわけで、丸い紫陽花の可憐な花をさんざん撮ったついでに、家内の丸い顔をアップで撮ってしまったら、これがまた、花となかなか調和していた。







(2001年6月9日記)



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徒然013.味とデザイン

 一日の仕事が終わり、家路に着いた。きょうは暑かったなあと思いながら家内の顔を見て、我が家のテーブルにすわる。何気なく、前に目をやったところ、そこには中国製のような陶器のとっくりがある。青磁のような味わいがする。いや、変わったものがあるなあと思いながら、それを手にとったら、軽いのでびっくりした。何だ、これはウーロン茶の缶ではないか。それにしても、遠くから見れば、陶器のように見えるのは気が利いている。これは面白い商品だと思い、何かピンと来るものがあったのである。普通のウーロン茶はやや渋い味わいがして、私はあまりたくさんは飲めないが、この陶器のような缶の味は、やや軽めである。だから、私でもあまり抵抗なく飲める。これは、味良し、デザイン良しである。

 そうしていたところ、それから1週間も経たないうちに、この缶についての新聞記事が載った。朝日新聞によると、ウーロン茶の王者であるサントリーに対して、このキリン・ビバレッジという会社が挑むという構図らしい。最初、鳳凰という製品でチャレンジしたところ、敢えなく敗れ去ったので、捲土重来を狙ってこの商品を出したとのこと。そして「聞茶は5月末までに、計画より1ヶ月早く300万ケース売れた。年間の販売計画量も800万ケースから1500万ケースに上方修正・・・」という、誠に景気の良い話である。聞茶(ききちゃ)と発音するらしい。まあ、味もさることながら、その缶のデザイナーに対して、賞賛の言葉を差し上げたい。プレジデント6月号には「デザイナーが金沢の窯元にまで陶器の原版を焼きに行き、できあがったデザインをスキャナーで読みとってアルミ板に転写するという手法で、陶器の味わいを出した」という。それに、白地の缶を作るのも難題だったが、頼み込んで作ってもらったという。

 ところで、私のテニス仲間の一人に、今申し上げ王者サントリーの人がいて、同じように商品開発を仰せつかったという。ちゃんと、キリンの挑戦を受けて立つという仕組みである。ここまでいくと、現代の果たし合いである。こちらは、お茶葉系(ウーロン茶・緑茶)のように旨味はあるが渋味も出るというものと、穀物系(麦茶)のようにさっぱりしているが旨味も渋味もないものとの融合を考え、旨味はあるが渋味のないものができないかと試行錯誤した。そして、「熟茶」と書いて「じゅくちゃ」と呼ばせるものを世に送り出した。中国奥地の雲南省西双版納にて吟味に吟味を重ねた結果、やっと作り出しに成功したプーアル茶の一つであるそうな。

 「えぇっ、ウーロン茶でないのか、プーアル茶といえば、数年前に私の友人が、『これを飲んで数キロ痩せた!痩せた! だから、お前も飲め』と騒いでいたものだ。仕方がないので、これを飲んでみたら、まあ、かび臭いというか、とっても飲める代物ではなかった。そんな薬みたいなものをねぇ」という気がしたものである。

 しかしともあれ、三煎・二層抽出なる画期的製法を開発したという能書きの書きつけてある紙付きで、その一缶をいただき、試しに味わってみた。そうしたところ、これが意外や意外、プーアル茶にありがちな臭みやら、胃にドーンと来るような重さがなくて、非常に飲み良い代物であった。これは私にはぴったりだなあと思ったのもつかの間、それから1ヶ月も経たないうちに、町で見かけなくなってしまった。

 これも後講釈だが、あのペットボトルの色と形が、類似商品とあまり差がなかったからだとと思う。これは、味はともかく、デザインがそれに追いついていかなかった例である。こんな風にして飲食料品業界では、新製品が毎年何百・何千と生まれながら、そのうち生き残るものはわずか数%いや、一説によればもっと少ないという。いやまあ、何と無駄なことか。

 ところで、6月9日の日経新聞に、何でもランキングと称して、主婦が飲みたい茶飲料のランキングがあった。それによると、次のようになっている。

 1位 生 茶   (キリンビバレッジ)
 2位 十六茶   (アサヒ飲料)
 3位 爽健美茶  (日本コカコーラ)
 4位 まろ茶   (日本コカコーラ)
 5位 旨 茶   (アサヒ飲料)
 6位 聞 茶   (キリンビバレッジ)
 7位 おーいお茶 (伊藤園)
 8位 しみじみ緑茶(サントリー)
 9位 なごみ麦茶 (日本コカコーラ)
 10位 熟 茶   (サントリー)

 このうち1位の生茶は、発売以来、3090万ケースが売れた大ヒットの定番商品。味が「さっぱり」としつつも、「深い味わい」が消費者に受けた。2位と3位は、ともに93年の発売で、ブレンド茶の草分けである。以上の1位から3位までの製品は、四位以下を大きく引き離している。最近の特徴は、苦みや渋味を押さえたもので、7位と10位は、これを狙っている。他方、6位の聞茶はボトル缶を採用して「デザインがいい」という理由になっている。ところでこの「ボトル缶」の特徴は、一度に飲みきれなくとも栓ができるし、光を通さないアルミでできていることから、最近ではお茶に使用されはじめている。ところで、調査期間の後となってしまって、以上のランキング対象品目からは外れてしまったが、このほかにサントリーの定番トップ商品の「烏龍茶」がある。

 うーむ、勉強になった。 





(2001年6月7日記、9日追記)



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