外務省の桜
2001.03.28 Wednesday | by
悠々人生
21世紀に入って最初の桜の開花は、気候温暖化の影響であろうか、例年より一週間ほど早まって、東京では3月24日頃であった。都内では上野公園や飛鳥山公園に大勢の人出があるが、ここ千代田区では千鳥が淵と外務省前の桜並木が有名である。
この写真は、外務省前のもので、以前であればこの方向だと桜の背景は真っ青な空であった。しかし今ではご覧のとおり、最近立ち上がった総務省などが入っている政府のビルが立ちはだかってしまった。それでも、桜が満開のこのトンネルの中に入ると、まるで全くの別世界である。写真の左下の3人のご婦人たちがこう語っていた。「いいわねぇ、こんなすばらしい景色の中を朝な夕なに通えるなんて・・・」
いや、全く同感である。しかしそういえば、今年の外務省には報償費問題があった。花は盛りにとばかりに、今や満開のこの桜を見ている余裕があるのだろうか。
(2001年3月28日記)
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徒然009.犬と石頭
2001.03.14 Wednesday | by
悠々人生
皇居の桜田門の付近を車で通るたびに、首を伸ばして警視庁の中庭の茂みを覗くのであるが、お目当ての彫刻が見つからない。何しろ、警視庁の建物なので、外からじっくり探すわけにもいかない。やっぱりあれは、酒飲みの与太話だったかと思うのであるが、それにしても、よく出来ていた話だなあと残念に思うのである。
あるとき、私の知人が、とっておきの話だといって、こんなことを語っていたのである。桜田門にある警視庁の建物は比較的新しいが、これを作った頃は、彫刻家に頼んで彫刻を彫ってもらい、それを玄関前に飾るというのが慣行だった。そこで、警視庁の建物についても、流 政之という現代彫刻家に依頼した。問題は、この大家がいわゆる無頼風の人柄だったことである。彫刻ができあがってみると、どうもそれはお稲荷様のような外見をしている。そして、関係者がびっくり仰天したのは、その彫刻家がこれに「桜田門の犬」という名前を付けよと言ったのである。まあそう思われているのかもしれないが、それはあまりにもひどいではないかということで、すったもんだのあげくに、結局その彫刻は、飾られれはしたものの、人目に付かない場所となったという。
しかも、これには後日談がある。その直後に、今度は特許庁の建物が建てられることになり、やはりその流氏に依頼した。できあがった彫刻は、球体を二つに割ってギザギザの割れ目のある半球にしたような外見であった。そしてこれについても、流氏は「三年町の石頭」という題を付けよといったそうである。しかしこの時の発注者は偉かった。警視庁での騒ぎをあらかじめ当事者から聞いていて、「すでに内部でこれに適当な題を募集し、その結果『叡知の微笑』という題が付いたので、もう変えられません」といって押し切ったそうである。それ以来、官庁が彼に彫刻を依頼したという話は、ついぞ聞いたことがない。
今日、たまたま赤坂溜池近くの特許庁の前を通りかかったところ、それらしき半球状の彫刻が玄関横に確かにあった。たまたま一緒にいたこの辺りに詳しい人に聞くと、昔々このあたりを都電が通っていた頃には、この特許庁前は「三年町」と言っていたという。「あっ、それだ!」と思った。これで石頭の意味がわかった。惜しむらくは、もう一つの証拠である「犬」が見あたらないのである。さりとて、警視庁の人に直接聞くのも気が引ける。もしかすると、最高機密事項かもしれない。いや、これは冗談であるが、ともあれ、いつの日かその当事者に会って直接聞いてみたいと思っている。
(2001年3月14日記)
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