外務省の桜


 21世紀に入って最初の桜の開花は、気候温暖化の影響であろうか、例年より一週間ほど早まって、東京では3月24日頃であった。都内では上野公園や飛鳥山公園に大勢の人出があるが、ここ千代田区では千鳥が淵と外務省前の桜並木が有名である。

 この写真は、外務省前のもので、以前であればこの方向だと桜の背景は真っ青な空であった。しかし今ではご覧のとおり、最近立ち上がった総務省などが入っている政府のビルが立ちはだかってしまった。それでも、桜が満開のこのトンネルの中に入ると、まるで全くの別世界である。写真の左下の3人のご婦人たちがこう語っていた。「いいわねぇ、こんなすばらしい景色の中を朝な夕なに通えるなんて・・・」

 いや、全く同感である。しかしそういえば、今年の外務省には報償費問題があった。花は盛りにとばかりに、今や満開のこの桜を見ている余裕があるのだろうか。





(2001年3月28日記)



カテゴリ:表紙の写真 | 22:58 | - | - | - |
徒然009.犬と石頭
 皇居の桜田門の付近を車で通るたびに、首を伸ばして警視庁の中庭の茂みを覗くのであるが、お目当ての彫刻が見つからない。何しろ、警視庁の建物なので、外からじっくり探すわけにもいかない。やっぱりあれは、酒飲みの与太話だったかと思うのであるが、それにしても、よく出来ていた話だなあと残念に思うのである。

 あるとき、私の知人が、とっておきの話だといって、こんなことを語っていたのである。桜田門にある警視庁の建物は比較的新しいが、これを作った頃は、彫刻家に頼んで彫刻を彫ってもらい、それを玄関前に飾るというのが慣行だった。そこで、警視庁の建物についても、流 政之という現代彫刻家に依頼した。問題は、この大家がいわゆる無頼風の人柄だったことである。彫刻ができあがってみると、どうもそれはお稲荷様のような外見をしている。そして、関係者がびっくり仰天したのは、その彫刻家がこれに「桜田門の犬」という名前を付けよと言ったのである。まあそう思われているのかもしれないが、それはあまりにもひどいではないかということで、すったもんだのあげくに、結局その彫刻は、飾られれはしたものの、人目に付かない場所となったという。

 しかも、これには後日談がある。その直後に、今度は特許庁の建物が建てられることになり、やはりその流氏に依頼した。できあがった彫刻は、球体を二つに割ってギザギザの割れ目のある半球にしたような外見であった。そしてこれについても、流氏は「三年町の石頭」という題を付けよといったそうである。しかしこの時の発注者は偉かった。警視庁での騒ぎをあらかじめ当事者から聞いていて、「すでに内部でこれに適当な題を募集し、その結果『叡知の微笑』という題が付いたので、もう変えられません」といって押し切ったそうである。それ以来、官庁が彼に彫刻を依頼したという話は、ついぞ聞いたことがない。


三年町の石頭ではなくて、叡知の微笑


 今日、たまたま赤坂溜池近くの特許庁の前を通りかかったところ、それらしき半球状の彫刻が玄関横に確かにあった。たまたま一緒にいたこの辺りに詳しい人に聞くと、昔々このあたりを都電が通っていた頃には、この特許庁前は「三年町」と言っていたという。「あっ、それだ!」と思った。これで石頭の意味がわかった。惜しむらくは、もう一つの証拠である「犬」が見あたらないのである。さりとて、警視庁の人に直接聞くのも気が引ける。もしかすると、最高機密事項かもしれない。いや、これは冗談であるが、ともあれ、いつの日かその当事者に会って直接聞いてみたいと思っている。





(2001年3月14日記)



カテゴリ:徒然の記 | 21:42 | - | - | - |
東大合格者の胴上げ


 ワーッ、ギャーッ、おおーい、ドンドン、パチパチパチ。喚声が喚声を呼び、それが地鳴りのように大地に響きわたる。これが我が国の最高学府、東京大学の入試合格者の発表風景である。運動部の猛者が次々に合格者を胴上げする。近くに住んでいるものだから、ウチの子の番が終わっても、ついこの季節になると我ながら物好きだとは思いつつも、これを見物に行く。でないと、私の春は始まらないのである。




(2001年3月10日記)





カテゴリ:表紙の写真 | 22:59 | - | - | - |
徒然008.悲惨な内職
 3月7日、朝日新聞の朝刊を読んでいたところ、中国の江西省宣春市の小学校で爆発があり、建物が全壊し児童ら40人近くが死亡し、27人が負傷したとの記事があった。短い記事なので、さっぱり要領がつかめないが、児童の内職の爆薬が爆発したというのである。ところが、「小学校」、「児童」、「内職」、「爆発」、「40人近く死亡」という一連のキーワードがどうしても私の頭の中で結びつかなくて、悲惨な事件ではあるが、いったい本当のことだろうかと疑問に思っていた。

 ところが、その日の日経新聞の夕刊で、なぞは一気に解けた。何と、この中国の小学校では、不足している運営経費を補填するため、児童らが学校で爆竹に導火線を付ける「内職」をしていたというのである。ところが、たまたま教室内に置いてあった加工中の爆竹に引火してこの惨事が起こった。この爆発で四つの教室はほぼ吹き飛び、二階建ての校舎は全壊した。

 しかし、いくら何でも児童に内職をさせるというのは、わが国では明治以降はもちろん、江戸時代の寺子屋でもやらなかったのではないだろうか。しかもそれが、危険きわまりない爆竹というのでは、全くもって何をいわんやである。これでは安心して子供を学校に預けられないし、そもそもこういうことを黙認している中国政府の指導層の人権感覚を疑いたくなるところである。翌日の朝刊で、大人に抱きかかえられて泣いている女の子の写真を見て、胸がつまった。





(2001年3月8日記)



カテゴリ:徒然の記 | 21:41 | - | - | - |
蘭の美形


 近くの東京ドームでは、ときどき面白い催しをやっていることがある。冬のある日にふらりと立ち寄ったところ、「世界らん展」というものを開催中であった。蘭といえば、シンガポールのチャンギ空港のおみやげ品か、美空ひばりの胡蝶蘭かぐらいの浅薄な知識しかない私にとっては、この色とりどりの蘭のオンパレードは、まさにカルチャーショックであった。蘭というのは、ある意味ではいい加減な花で変種がいっぱいあるとは聞いていたものの、これほどまでとは知らなかった。この写真は、その中で最も気に入った蘭である。




(2001年3月2日記)




カテゴリ:表紙の写真 | 22:02 | - | - | - |
皇居の桜


 皇居の大手門のそばを車で通ったところ、しだれ桜が五分咲きであり、その桜色がとっても良かった。その印象が目に焼き付いていたので、お昼に暇ができたとき、真っ先にそれを思い出した。そこで外に出て、春の陽気にさそわれつつパレス・ホテルまで歩き、外堀通りを渡ってお堀のそばまで行った。

 しだれ桜の色がいい。しかも風に吹かれてゆらゆらと揺れてこれまた風情がある。写真を撮ろうとたが、適当なアングルがない。もう少し桜から離れた方が構図的にはいいのだが、それでは道に出てしまう。いろいろと試し、結局しだれ桜の木の中に入り込む感じで大手門の櫓を撮ることにした。




 それから、お堀には、鳥が何羽かいて、その横を悠然と緋鯉が泳いでいく。私は、鯉が好きなものだから、その写真も撮らせてもらった。最近、お堀でもブルーギルとかいう妙な外来魚が繁殖して在来種を根絶やしにしそうな雰囲気というので心配していたが、どうやら、大きな鯉たちは大丈夫なようである。




(2001年3月31日記)





カテゴリ:表紙の写真 | 22:55 | - | - | - |
| 1/1PAGES |