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アートアクアリウム 2020年

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 日本橋に、先月末にアートアクアリウム美術館が開業した。そういえば、かねてより日本橋界隈でアートアクアリウムと題する催しが開催されていて、私も2018年に行ったことがある。とりわけ今は、新型コロナウイルスで、おいそれとは遠出できない。でも日本橋なら自宅に近いので、気晴らしに行ってみようかという気になった。それでも、感染のリスクを出来るだけ低くするため、夏休み明けの平日のお昼過ぎの時間に行くことにした。

 このアートアクアリウム自体は、2007年に始められて、それ以来、東京を拠点に、京都、金沢、熊本、イタリアのミラノ、中国の上海など世界各地で14年間に1000万人が見物したそうだ。当初から「日本の美しい『和の心』を伝えたいと『ジャポニズム』にこだわる展示を続けた」という(木村秀智氏)。それで、「美しくどこか儚い金魚の舞 生身の演者が目の前で舞う躍動、 五日ごとに変わる季節に自然を感じ身を委ねる この場でしか感じることのできない生命のダイナミズムが、忘れかけていた日本の美意識を思い出させる」ということなのだそうだ。

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 さて、美術館に着き、入ってみる。思ったとおり、人の数は比較的少なく、感染防止のためのソーシャル・ディスタンスを保つことができる。最初の展示は、冒頭の写真のように、赤い金魚の尾を思わすガラスの置物の下に泳ぐ普通の金魚で、背景に木や葉があるし、照明も昼光色だからまあまあ安心して見られる。それから、いよいよ妙な形の水槽が現れた。色々な金魚が泳いでいる。次の赤と白の琉金は、かなり強い水流の中でなんとかそれに堪えていた。少し、水流が強すぎるのではないだろうか。

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 次は、「花魁」という水槽だと思うが、大型の金魚の水槽である。その頭飾りの低いところから水が流れ落ちている。これは派手だ。それは良いのだが、金魚の数が多すぎる。過密もいいところだ。それに、水流も強いので、金魚たちが流されないようにと、一生懸命に必死になってヨタヨタと泳いでいる。ついつい同情し、金魚が可哀想になる。大袈裟に言えば、一種の動物虐待の類いではないだろうか。それに、照明が赤、青、黄、緑などと極端に変わる。赤い金魚に青い照明が当たったら真っ黒になって、やや気持ちが悪い。昼光色になるのはほんの一瞬なので、その間に何とか写真を撮るしかない。この辺りは、「水端(みずはな)」という区画らしい。

 やはり、金魚は白い容器に入れて緑の金魚藻を配し、のんびりと泳がせて、それを上から眺めるのが一番だ。その点からすれば、この展示方法は全くの邪道であるが、この美術館の基本コンセプトだから、簡単には改められないだろう。もっとも、改めてしまったら、日本の旧来の金魚展と変わらなくなってしまうので、難しいところである。

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 さて、まるで江戸の花街の門のようなところをくぐると、そこは「浮世(うきよ)」という区画である。天井を見上げれば、それはかつての紀伊國屋文左衛門の屋敷を彷彿とさせるギヤマン張りの格子の天井で、もちろん中には赤い金魚がゆらりゆらりと泳いでいる。門を通り過ぎたところには、やはり花魁型の水槽がいっぱいで、刻々と色が変わる。でも、ここでも強い水流の中に詰め込まれている沢山の金魚が気の毒で、私の目はついついその先の普通の水槽中の金魚に向く。まあ、この美術館の鑑賞法としては正しくないかもしれない。

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 おや、水泡眼がいた。目の下に袋を持っていて、何ともユーモラスな金魚である。ただ、水泡眼の身体をよく見ると白い点々がある。これは、白点病に違いない。水槽に入れるまでに、メチレン・ブルーによる薬浴をさせていないのだろうか。コンセプトや展示・デザインばかりに気を取られて、肝心の金魚の飼育がおろそかになっていると思う。これでは金魚が気の毒だ。

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 更に行くと、今度は緋鯉のコーナーである。長さ80センチ程度の立派な緋鯉1匹と、20センチほどの若鯉が数匹、丸い平らな水槽に入っていて、それが数個ある。光が均等に当たっていないので、撮りにくいが、しばらく粘って、まあまあの写真が撮れた。それから、大きな球形の水槽があり、上から水が表面の球に沿って流れ落ちている。これは見応えがあるが、やはり沢山の緋鯉が詰め込まれているので、いささか同情したくなる。

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 最後は、人の背の高さくらいの円筒型の水槽が何本も立っている所に出た。もちろん、それらの中には琉金がいっぱい入れられており、それぞれの円筒には、赤、青、紫、黄、緑などが当てられていて、全体を見ると、実に美しい。もっとも、中の金魚には迷惑かもしれない。ああ、残念なことに、ここにも白点病の金魚がいた。この美術館には、デザイナーより獣医が必要だ。

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 まあ、そういうわけで、2年振りのアートアクアリウム見物は終わった。私のように写真を撮りに行くには、全然適さない所だし、金魚や鯉を飼育した経験からすると、魚があまりにも粗末に扱われている感があって、同情を禁じ得ない。総じて、愛情をもって魚を飼育しているという感じが全くせず、単にカラフルで、ひょこひょこ動いてくれるディスプレイの一つとしてしか扱っていないようだ。しかし、色付きのプラスチックの飾りではなく、生きている愛玩動物そのものなのだから、それ相応の扱いというものがあるだろうと私などは思うので、誠に残念だ。もっとも、そういうことを全然気にしない人には、涼しげで優雅な感じを味わうことができることから例えば都心の夏のデート場所としては、良いのかもしれない。ただ、私はもう二度と行かないつもりだ。





【後日談】展示中の金魚に病気の報道

 私が見に行ったのは9月2日だったが、8日のJ−CASTニュースその他のニュースサイトで、「来場者や金魚の愛好家から、生体管理への疑問の声が相次いでいる」として、「来場者から金魚の状態を心配する声がSNS上で複数投稿された・・・体表が白い斑点でおおわれ病気の疑いがあったり、水面に浮かんだまま動かなくなったりする生体の写真・動画も拡散し、管理体制を問題視する声が続出している。」と報道された。これに対して主催者は「お見苦しい瞬間をお見せしました・・・重度の病気の魚は、隔離水槽に移して別途対応しております」などと説明している。しかし、見苦しいなどという問題ではなく、私も含めた愛好家としては、単に「魚に愛情をもって接していただきたい」だけである。改善されるというが、それが本当であることを祈ろう。





アートアクアリウム(写 真)






(2020年 9月2日記、9日追加)


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