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新型コロナウイルス緊急事態宣言 (第5部)
42.日本の感染者6万人、死者千百人超え

(1) 日本の新型コロナウイルスの新規感染者が毎日2000人弱増加していって、8月20日、遂に累計感染者が6万人を超え、累計死者は1160人となった。6月以降の感染者数は4万人と、4月から5月にかけての「第1波」のときの約1万5000人の2倍以上にのぼっている。しかも、6月以降のこの「第2波」は当初こそ東京が主な発生地だったが、その後全国的に感染が拡大していって、とうとう8月19日の1日当たりの感染者は大阪府が187人で東京都の186人を上回った。


日本全国の感染者数等の合計 8月20日現在。NHKより

日本全国の日別感染者数 8月20日現在。NHKより


 こうした状況について、日本感染症学会の舘田一博理事長は、8月19日の同学会の学術講演会で「『第1波』は緊急事態宣言の後、なんとか乗り越えられたが、いままさに『第2波』のまっただ中にいる」と述べた。同理事長は、政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の構成員である。

 ところが、こうした事態なのにどういうわけか、政府は「第2波」とは明言しないのである。8月19日の衆議院厚生労働委員会において加藤勝信厚生労働相は「必ずしも定義があるわけではない」 と言い、西村康稔経済再生相も記者会見で「『第2波』に定義があるわけではない。どう呼ぶかは別として大きな波であることは間違いない ・・・重症化するリスクの高い方々への感染が増えてきていることは警戒しないといけない」と語るにとどまる。緊急事態宣言を再び出して、経済を冷え込ませるのを懸念しているのだろう。しかし、これでは逆効果だ。政府は事態を直視せずに手をこまねいているのかと、いらぬ疑念を抱かせてしまう。いや、本当に成り行き任せで、打つ手もお金も、ついでに知恵もないのかもしれないと思えるから怖い話だ。

 それにしても、気になるのは重症者の数が漸増していることである。5月8日の287人には及ばないにしても、7月10日の31人を底に徐々に増えていって、8月17日には243人に達した。今回の第2波の当初は夜の街を中心に感染が拡大していったが、最近は家庭内感染が増えていき、それにつれて高齢者の年代にも拡がりつつあることから、これ以降、重症者がますます増えるのではないかと懸念される。


日本全国の死者数の合計 8月20日現在。NHKより




(2) なお、第1波と第2波の患者特性を比較した資料が、8月24日の政府の第7回分科会に提出された。それを見ると、死者数は第1波が900人、第2波が219人となっている。感染者数が第1波が16,784人、第2波がその倍以上の41,472人であることを考慮すれば、医療従事者がよく頑張ってくれていると思われる。もっとも、第2波の感染がまだまだ若い人中心の初期段階で、これから高齢者に感染の重心が移っていくのかもしれないので、まだ安心できる段階ではない。

第1波と第2波の患者特性を比較


(3) ところで、世界に眼をやると、次のように、もう惨憺たる状況である。アメリカではニューヨークを中心とした感染地域が下火になったかと思うと、経済の再開に伴って、カリフォルニア、フロリダに感染が広がり、1日の感染者数が4万7千人にもなる日が続いた。その一方、世界的な感染の流行地はブラジルなどの南アメリカから、インド、ロシア、南アフリカなどの新興国に広がりつつある。流行の終息の兆しは未だそのかけらすら見ることができない。

       感染者の数   死者の数
 世界全体 2,294万人  79万人
 アメリカ   557万人  17万人
 ブラジル   350万人  11万人
 イ ン ド   297万人   5万人
 ロ シ ア    94万人   1万人


世界全体の感染者と死者数の合計 8月20日現在。NHKより


(42(1)と(3)は8月21日、(2)は28日記)

43.ワクチン開発への期待と優先接種

(1) 新型コロナウイルス感染症に対する最終的な対策は、やはりなんといっても効果的で安全なワクチンをできるだけ早く開発し、多くの国民に接種をすることである。8月21日に開催された政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会(第6回)資料によると、新型コロナウイルスについて開発中のワクチンには5種類がある。

 このうち、 不活化ワクチンと 組換えタンパク・ ペプチドワクチンは、これまで開発の実績があり、最も免疫がつきやすいものの、開発に時間がかかるのが玉にキズである。これに対して、 DNAワクチン、 mRNAワクチン、 ウイルスベクターワクチンについては、いずれも実績が乏しい。ただ、最新技術を使うので、開発を早くできる、という特徴がある。


開発中のワクチンの種類


 それぞれのタイプのワクチンで、日本国内で5件、海外で約120件ほどが開発中である。このうち最も早く臨床試験が行われる予定なのが「KMバイオロジクス株式会社・東大医科研・感染研・基盤研の不活化ワクチン」で、臨床試験は最短で本年11月だという。

 海外では、いくつかの有力なワクチン開発が続いている。例えば、次の一覧表のほか、英製薬大手アストラゼネカは、米バンダービルト大学が発見した「AZD7442」を元に開発した抗体医薬について、8月25日、初期臨床試験(治験)を始めたと発表している。同じアストラゼネカとオックスフォード大学の組合せで開発中のワクチンもあり、これらが先頭を走っている有力なワクチンではないかと思われる。この他、ロシアではもうワクチンを開発して軍関係者に投与しているとか、中国でも開発に成功して医療従事者を相手に最終臨床試験に入ったという話もあるが、どちらも有効性や安全性について信ずる気になれない。ともあれ、各国では熾烈な開発競争が行われているので、そのうち、どれかが大きな効果をもたらして、この新型コロナウイルスのパンデミックを終わらせてくれるものと期待したい。


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(2)政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会(第6回)では、有効なワクチンが出来上がることを前提に、早々と、次のようにワクチン接種の優先接種が議論されている。なお、2009年の新型インフルエンザ(A/H1N1)の流行を控えて議論されたときの「高齢者」の定義は、65歳以上だそうだ。

(医療従事者)
 ・医療従事者は、新型コロナウイルス感染症患者や有症者に頻繁に接触する必要があり、直接医療を提供することから、感染リスクが高い。
 ・感染した場合には、新型コロナウイルス感染症対策等に必要な医療サービス提供にも影響が大きい。
 ・そのため、医療従事者については、医療提供機能の維持の観点から必要性が高い。
 ・同様の観点からは、新型コロナウイルス感染症患者や有症者に直接対応する救急隊員及び保健師についても、接種を優先する必要がある。

(高齢者・基礎疾患を有する者)
 ・高齢者や基礎疾患を有する者は重症化するリスクが高いことから、重症化を防ぎ、一人でも多くの命を守るという観点から考えた場合、接種を優先する必要性は高い。重症者を減らすことで医療の負荷を軽減することにもつながる。

(妊婦)
 ・妊婦の重症化リスクに関しては、今後、エビデンスを基にさらに検討する。

(高齢者及び基礎疾患を有する者が集団で居住する施設で従事する者)
 ・高齢者及び基礎疾患を有する者の重症化を防ぐ観点からは、高齢者及び基礎疾患を有する者への接種を優先した上で、業務の特性等を踏まえ、高齢者及び基礎疾患を有する者が集団で居住する施設に従事する者についての接種順位を検討する。


2009年の新型インフルエンザ(A/H1N1)の時の対応


(43は8月26日記)

44.スパコン富岳のシミュレーション

 8月24日に開催された分科会(第7回)において、「AI等シミュレーション開発事業」の進捗状況の報告があった。まだイメージ段階だということであるが、今年になって世界一となったスーパーコンピュータ「富岳」を使った「気流シミュレーション」がなかなか面白かったので、ここに記録しておくことにしたい。

(1) マスクとフェースシールドの効果

 最初は、街中で最近見かけるようになった透明なフェースシールドの効果について、マスクの効果と比較したシミュレーションである。それによると、フェースシールドには20ミクロン以下の飛沫に対する捕集効果は小さいので、マスクの代替としてフェースシールドを使うのであれば、換気等を併用しなければならないそうだ。

(2-1) 飲食店での飛沫等の拡散(パーティションなし)

 4人で2人ずつ向かい合って座っている状態でそのうちの1人が感染者でマスクなしで咳をしたとき、ー湘戮高い場合と、⊆湘戮低い場合とで大きな違いがある。 すなわち、ー湘戮高い場合、10ミクロン以上の飛沫は大半はテーブルの上に落下し、正面の人に到達するのは数ミクロン以下の小さなエアロゾルのみである。だから、まあ大丈夫だ。ところが、⊆湘戮低い場合は全く逆になり、飛沫は高速に蒸発することで微小化し、机に落下する数は大幅に減少する一方、空気中をエアロゾルとして拡散する数が増加する。だから、感染の危険が増す。

 ただし、いずれの場合も、感染者と並んで座っている人や、斜向かいに座っている人は、まず感染しないものと思われる。もっとも、感染者がたまたま真横や斜向かいに向いて咳をしたら、やはり危ないだろう。咳をするときは、マスクを着用するか、あるいは「咳エチケット」と言われているように、肘で口を覆ってするべきである。

(2-2) 飲食店での飛沫等の拡散(パーティションあり)

 次は同じく4人で座っているときに、そのテーブルに透明なパーティションがある場合で、やはりマスクなしという前提である。焦点はそのパーティションの高さであり、少なくとも1.4メートルあれば、大丈夫なようだ。ところが、1.2メートルでは30秒程度で正面に到達するエアロゾルが確認される、つまり正面の人が感染の危険にさらされるというわけだ。ただ、私の知っている限り、大抵の店のパーティションの高さは、せいぜい80センチ程度である。1.4メートル以上のパーティションなど、見たことがない。


マスクとフェースシールドの効果

(3) 通勤電車内での窓開け効果

 山手線を想定した通勤電車内では、エアコンによる機械式換気だけでなく、窓を開けることで換気速度が数倍になる、つまり感染の危険性を減らせることがわかった。まあ、当たり前と言えば当たり前だが、こうしてシミュレーションで目に見える結果が出れば、安心して電車に乗ることができるというものだ。それにしても、通勤電車はそれで良いとしても、窓が開かない電車やバスの場合は、一体どうしようかという気がする。


通勤電車内での窓開け効果

(44は8月28日記)


45.感染症対策の微修正

(1)8月28日、安倍晋三首相は体調不良のため辞任する意向を発表したが、まさにその日、新型コロナウイルス感染症対策本部(第42回)が開催され、新たな方針が決定された。

 その前提としての感染者と入院者の動向であるが、次の図の通り、新規感染者(陽性者:灰色の線)は3月下旬から5月上旬にかけての第1波の後、7月上旬から第2波が始まり、それが同月下旬から8月上旬にかけてピークを迎え、それからゆっくりと減少に転じて9月上旬に至っている。入院治療を要する者(青色の線)は、5月4日に11,535人、8月26日には10,306人となっている。とりあえず、第2波の山は越えたと考えられる。


新規感染者等の推移


 その上で、これまでの新型コロナウイルス感染症対策を微修正した。主に次の2本柱である。

  ヾ鏡症法における入院勧告等の権限の運用の見直し

 「今後は、新型コロナウイルス感染症の政令の位置付けを見直して、軽症者や無症状者について宿泊療養 (適切な者は自宅療養)での対応とし、保健所や医療機関の負担の軽減、病床の効率的な運用を図る。」

 つまり、これまではPCR検査で陽性者となれば、感染症対策法上はたとえ無症状でも原則として入院させなければならず、その手配を保健所が行って業務の繁忙を招き、同時にせっかく用意された新型コロナウイルス患者用ベッド逼迫という残念な結果となっていた。それでは本当に入院が必要な重症化した患者の入院治療まで十分に手が回らないこととなってしまうので、このようにしたものである。

 ◆仝〆座寮の抜本的な拡充

 「新型コロナウイルス感染症について、地域の医療機関で簡易迅速に検査が行えるよう、抗原簡易キッ トによる検査を大幅に拡充(1日平均20万件程度)するとともに、PCR検査や抗原定量検査の機器の整備を促進し、必要な検査体制を確保する。」

 つまり、「目詰まり」として、もう何度も指摘されながら少しも進まなかった検査体制を、ようやく拡充しようというものである。PCR検査数は、2月頃の1500件/日から、9月になってようやく検査能力は6万件/日と増えたが、実際の検査数は2万件/日にとどまっている。アメリカやイギリスでは、人口当たりでは日本の10倍から20倍の検査数をこなしている。このボトルネックを解消しようというものである。

(2) それとともに、従来は発熱などの症状が出て新型コロナウイルスへの感染が疑われる場合、まずは保健所などが開設する「帰国者・接触者相談センター」に電話することとなっていた。ところが、37.5度以上の発熱が4日続いていないと検査を受けさせないとか、そもそもこのセンターに何回電話をしても繋がらないという問題が頻繁に起こり、結局のところ検査も治療も受けられずに肺炎で亡くなるという事例が見受けられ、国民の怒りは頂点に達したのは、既述の通りである。

 厚生労働省は、9月4日、新しい方針を発表し、「早ければ10月以降、(帰国者・接触者相談センターを通すことなく)、かかりつけ医などの身近な医療機関に電話で相談した上で受診する」ということにしたそうだ。前述のような診断までの「目詰まり」の解消とともに、これから冬を迎えてインフルエンザと同時流行する恐れが十分にあることから、より受診しやすくしたものと考えられる。それにしても、4月から始まった第1波どころか、もはや第2波も終わろうとしているこの9月までの間、既に半年も経っている。なぜこれほど長く時間がかかったのか、実に不可思議なことである。


9月4日の新しい方針




(9月6日記)


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