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新型コロナウイルス緊急事態宣言 (第4部)


29.新型コロナウイルスによる後遺症など

(1) 6月14日の夜、NHKのドキュメンタリー番組で、職場で院内感染した40歳の男性医師の話が報じられていた。この医師は、1週間ほど意識がなく、ECMO(エクモ:体外式膜型人工肺)でようやく命をとりとめたそうだ。そして、PCR検査で陰性となって退院したものの、病気の後遺症で、歩いたり階段を上ったりすると息切れして、以前のような勤務はできないという。おそらく、肺が傷ついて肺細胞が繊維化してしまったものと思われる。そうだとすると、もう元には戻らないだろう。新型コロナウイルスからの回復者の中で、こうした何らかの後遺症を抱える人の割合は、日本では7%だという。やはり、新型コロナウイルス感染症は、ブラジルのボルソナロ大統領が言う「単なる風邪」どころか、相当恐ろしい病気だと考えざるを得ない。

(2) あるスペインの女性(35歳)の話では、新型コロナウイルス感染症の症状が出たものの、自宅療養で意外と簡単に症状は収まり、PCR検査でも陰性が確認された。ところがそれ以来、掃除や皿洗いでも息切れして続けられない。そのうち胸の傷みに襲われて、病院で調べてもらうと、心臓の膜が傷ついているとのこと。フランスでの調査によると、新型コロナウイルスから回復しても、10%ないし15%の人に何らかの後遺症が残る。しかも、後遺症を訴える患者の3分の2が女性である。免疫が過剰に働いて、自分の身体を攻撃しているのではないか。免疫異常の割合は、元々、女性に多いという。

(3) このように、第1波が去った後、この病気について色々と分かってきた。後遺症の話以外に、6月19日の朝日新聞夕刊にはこういう報道が載っていた。欧州の研究チームがスペインとイタリアの感染者のゲノム解析をしたところ、新型コロナウイルスに感染した人のうち、血液型がA型の人は重症化するリスクが5割ほど高くなり、反対にO型の人はそのリスクが5割ほど低く、B型とAB型では、有意な差はなかったという結果が出た。これは血液型ごとに異なる生まれつき持つ抗体が関係しているか、遺伝子の違いで生じる血液を固める因子の働きなどが影響している可能性があるという。

(4) 猛威を振るう新型コロナウイルス感染症は、国内では3月下旬から5月下旬にかけて第1波があり、その後直ぐに6月下旬から第2波が始まったが、8月下旬になるとその勢いがやや下火になってきた。ところが、南北アメリカやインド、南アフリカでは未だ感染が真っ盛りで、とても収まる気配は見られない。既に感染がいったんは終息したと思われたヨーロッパでも、スペインで再び感染が急拡大して第2波が到来していると言われるし、フランスでも同様になりつつあり、イタリアやイギリスでも徐々に再拡大する兆しを見せている。そうした中、これまでは新型コロナウイルス感染症の治療に追われていた医療研究機関が、次第に回復した事例にも目を向けるようになり、後遺症についても少しは研究成果が公表されるようになってきた。

 8月23日の日本経済新聞によると、「新型コロナウイルス感染症の症状が収まっても体の不調が続くとの報告が相次いでいる。ドイツの研究チームは回復した人の6割で心臓の炎症が続いていたと明らかにした。イタリアでは、退院患者の9割近くが発症から約2カ月が過ぎても体の不調を訴えていた。新型コロナウイルスはいまだ解明されていない性質が多い。専門家は退院後も健康状態を管理する仕組みが必要と指摘する。独フランクフルト大学病院の研究チームは、呼吸器症状が収まり検査で陰性になった元患者100人を調べた。磁気共鳴画像装置(MRI)で心臓を診ると6割の人で心筋炎が続いていた。感染確認から数カ月過ぎても4割弱に息切れや疲労感が残り、5%に心筋梗塞の疑いがあった。」ということである。もっとも、「国内では心筋炎の発生率は研究例がない」そうだ。その他、「イタリアのチームが退院患者143人を約2カ月後に調べたところ、『だるさ(53%)』『呼吸のしづらさ(43%)』などが続いていた。」とある。

 一方、上記(1)の「何らかの後遺症を抱える人の割合は、日本では7%」という話と比べれば、このドイツやイタリアの調査結果はその10倍以上で、随分と後遺症の比率が高いと思われる。その要因として、そもそも人種的な差があるのか、いやそれとも日本では既にコロナウイルスに対する免疫がある人が多かったので新型コロナウイルスにも免疫も持つ人の割合が多いという仮説が正しかったのか、どうもよく分からないところである。今後、国内外で更に詳細な調査が行われることを期待したい。

(20(1)は6月14日、(2)と(3)は同19日、(4)は8月23日記)



30.接触確認アプリ(COCOA)

(1)厚生労働省は、アップルやグーグルと提携して、6月19日に「新型コロナウイルス接触確認アプリ(COCOA)」(COVID-19 Contact Confirming Applicationの略)を公表し、国民にそのダウンロードを促すようになった。これは、新型コロナウイルス感染症の感染者と、「1メートル以内で15分以上」接触した可能性について、通知を受け取ることができるスマートフォンのアプリである。


接触確認アプリ(COCOA)


 同種のものはシンガポール政府も用意しているが、強権的で知られているかの国と違って、日本のこのアプリは、「アプリにより、利用者のデータを利用し、収集することはありません。利用者に氏名・電話番号などの個人情報を入力いただくこともありません。」というから、個人情報の保護の度合は、より一層高くなっている。ただ、どちらもスマホの近接通信機能(ブルートゥース)を利用して常時通信しているので、スマホの電池の消耗は激しいようだ。普及率は少なくとも6割にならないと実用的ではないというが、日本で最も普及しているあのLINEですら6割なので、COCOAがそれ並みになるというのは、あまり現実的ではないと思われる。

 Q&Aで「陽性者との接触の可能性が確認されたとの通知を受けたら、何をすればいいですか。」という質問に対する答えは、「アプリの画面に表示される手順に沿って、ご自身の症状などを選択いただくと、帰国者・接触者外来などの連絡先が表示され、検査の受診などをご案内します。」とある。

 こういうところの設計が、実に不十分だと思う。例えば、このアプリで陽性者との接触の可能性が確認されたとの通知を受け、心配しながら近くの保健所に行ったとする。そうしたら、まず何よりもPCR検査を優先的に受けられて、確定診断までどうすべきかのサジェスチョンをもらい、ついでに検査費用とそれに基づく診察を無料にするくらいのささやかな「特権」でも用意してさしあげないと、国民はあまりメリットを感じないからあまり普及しないのではなかろうか。また、陽性と判明した者には強制せずに任意の登録に任せるというのも、システムとして全く使い物にならないという気がする。

 なお、私の場合はiPhoneなので、COCOAをダウンロードしようとApple Storeを開いてみたが、直訳風の訳のわからない説明が出てきたので嫌になった。それでも、6月19日の配信開始から3日経った22日午後5時現在のCOCOAのダウンロード数は、326万だったというから、悪くはないと思う。こういうアプリは、作って配信して終わりというものではない。1ヶ月後には大幅に更新されるらしいから、それまでにもっと親切で使いやすいものに仕上げてほしい。私はそうして改良されてからインストールすることにしよう。要は、官と民の良いとこ取りを狙ったつもりが、「官製の使いにくさ、民製の無責任さ」にならないようにしてもらいたい。

(注1)COCOAアプリの提供を始めて4日目の23日午前9時には、ダウンロード数が371万に達したが、案の定というかやはりというか、アプリに決定的な欠陥が見つかった。感染を自己申告すると保健所から「処理番号」が届くのでそれを打ち込まないと登録されない仕組みのはずだった。ところが、どんな番号でも打ち込みさえすれば「完了しました」と表示されるという。そんなことなら、処理番号を発行する意味がない。成りすまして登録を乱発することも可能となる。早急に修正しているとのことである。

(注2)COCOAアプリは、6月23日の最初の不具合で番号の発行を一時停止してから修正版を配布し、ようやく7月3日に番号の発行を再開した。ところが、わずかその1週間後の7月10日に、再び別の不具合が生じた。今度は、修正版をアップデートした人の端末から番号を入力しようとすると、エラーメッセージが表示されるというものである。早急に修正するとのこと。なお、7月10日現在のCOCOAアプリのダウンロード数は、648万件である。


(2)接触確認アプリ(COCOA) の登場後、約1ヶ月半が経った。8月7日現在のダウンロード数は、1,200万、感染者が登録したのは165人となっている。濃厚接触者に通知した件数は、厚生労働省は明らかにしていないのでわからないが、ほとんどないのではなかろうか。これでは、せっかくCOCOAをダウンロードし、自分のスマートフォンの電源浪費をわざわざ容認して常時動かしている人が浮かばれない。

 それというのも、何といってもCOCOAが使いにくい上に、プライバシー保護を重視しすぎて利用者任せにしている設計思想自体に欠陥があるからだ。第一に、当局が利用者の連絡先を把握していない点だ。普通、民間のアプリを使う時にはメールをアドレスや電話番号をダウンロード求められる。ところが、COCOAはそうではないので、感染者とその濃厚接触者を把握しても、当局が連絡をとる手段がない。しかも、第二として、感染者が登録するかどうかは自由になっている点だ。つまり、登録してくれなければ、それまでである。これでは、COCOAは何の役にも立たない。

 プライバシー保護を十分に図りながら、COCOAの仕組みを保健所の感染者リストと感染経路追跡に連動させ、感染が判明すれば直ちに本人に連絡し、PCR検査や療養、入院の手筈を整えるようにすべきである。また、普及を図るという観点からは、できればアンドロイドやiOSのようなスマホのOSに直接搭載してしまうか、それがかなわなければ既存のアプリで日本で最も普及しているLINEなどにCOCOAの仕組みを載せるということも、緊急事態であるから試みるべきだろう。


(3)接触確認アプリ(COCOA)について、厚生労働省は、ようやく8月21日になって「これにより通知を受けた人は、症状の有無などにかかわらず自己負担のない行政検査の対象」として、都道府県などに通知した。2ヶ月も遅れて、やっと通知したかという気がする。

 ちなみに8月21日時点でのCOCOAダウンロード数は、約1,416万件、判定結果陽性の登録件数は、360件となっている。

(4) 笑い話のようであるが、8月23日から25日にかけて、敦賀市役所の職員59人に、COCOAから「感染者と接触した可能性」があるとの通知があったそうだ。接触したとされる日は、ほとんどが8月12日の出来事だったという。本庁の職員のみならず出先機関の職員も含まれるというが、たった1日でそれほど多くの職員に1人の感染者がそれぞれ15分以上も接触できるものなのだろうか。いやいや、まずあり得ないことだろう。現にPCR検査を行ってみたところ、とりあえず57人は陰性で、陽性と確認された人はまだいない由。

 厚生労働省に市が問い合わせると、「現状としては、誤作動ではない」とのこと。しかし、どう考えてもおかしい。ところが、COCOAの仕組みからして、調べることはできない。これは、深刻なバグではなかろうか。それにしても、色々と問題が起こるものだ。

(5)9月初めに私の持っているiPhoneのiOSがバージョンアップされて13.7となり、それによって接触確認機能が追加された。だだし、実際に接触確認の通知を受けるには、COCOAが必要とのこと。そのCOCOAもアップデートによってバージョン1.1.3となった。9月8日時点でのCOCOAダウンロード数は、約1,639万件、判定結果陽性の登録件数は、632件となっている。私も、ここに至ってようやくCOCOAをダウンロードして使っている。もちろん、通知が来ないことを願っている。


接触確認機能が追加されたiOS13.7


(30(1)本文は6月21日、注1は23日、注2は7月11日、(2)は8月7日、(3)は8月21日、(4)は8月26日、(5)は9月8日記)


31.上野動物園が再開された

 上野動物園は、新型コロナウイルスの影響で2月末から休園していたが、ようやく6月23日から4ヶ月ぶりに再開された。そこで、近いこともあり、行ってみる気になった。インターネットで整理券を取得しなければならないという。iPhoneを使って3回目に、ようやく午前10時45分からの番号をもらった。実は私の家から不忍口まで歩いて7分ほどなのだが、入るのは正門だけだというので、蒸し暑い中を上野桜木町方面へトコトコと歩いて行った。


順番待ちの列



 着いてみると、入園を待っている人がそれぞれ1mのソーシャルディスタンスをとっているので、延々と長い列を作っている。周りを見回すと、パンダの絵柄のあるポストがある。面白いことに、その口にマスクが付けてあった。誰か奇特な人がやっているのかと思ったら、朝日新聞によると、都内に住む40代の男性で、「子どもたちに着用を促しつつ少しでも癒やしになればと考え、4月下旬からパンダの口元に手作りでビーズを施したカラフルなマスクを数日おきに付け替えている。ポストが傷付かないよう磁石を使って取り付けている」(6月22日付け)という。

パンダの絵柄のあるポスト



 やっとのことで動物園の中に入ると、すぐにパンダ舎に通じる道を歩かされる。悲しいかな、混雑防止のため写真撮影は禁止とのこと。これでは、何のために一眼レフを持って行ったのか分からない。それでも、3歳になったばかりのシャンシャンが、こちらに寄って来てくれるなど元気に動いているのがとても良く見えたので、それなりに満足した。もう、体重が既に80キロもあるそうだ。竹ばかり食べて、よくそんなに重くなるものだ。

 爬虫類館などの室内展示施設は、三密を避けるために展示は中止。だから、楽しみにしていたミーアキャットには会えなかった。ほかは、ほぼ普段通りである。ただ、入園者の数が相当少ないと思ったら、一日当たり4,000人に制限しているそうだ。


スマトラ・タイガー


 次にスマトラ・タイガーを見ようと虎舎に行ったら、ちょうどよい具合に大きな石の上に雄のタイガーがちょこんと乗っていたので、それを撮ることにした。ところが、ガラスに私の背の高さまでフィルムが貼ってあって、それが白く曇っているので、そもそも焦点が合わないではないか。困ったなぁと思って、そのフィルムを避けるために両手を上げてカメラの位置を高くして試しに撮ってみた、すると、なんとか撮ることができた。ただ、後からパソコンで写真をよくよく見たところ、そのタイガーさん、眠そうで眠そうで、ほとんど目を閉じている。何十枚も連射して、やっと数枚、目が開いていて何とか使えそうな写真があった。野生動物を撮るのには根気がいるし、たくさん撮って「下手な鉄砲かずうちゃ当たる」を実践するしかない。

 ゴリラは、展示がお休み中だ。ヒトと近縁種だから入園者から新型コロナウイルスを伝染されてはたまらないということか。仕方がないので、猿山に行く。あれ、これもほとんどお猿さんが見当たらない。昼寝中かそれとも感染を恐れて数を絞っているのか、目の前にはわずか4匹しかいないではないか。写真を撮るどころではない。気のせいか、どのお猿さんも、どこか虚ろな目をしている。


象は撮りやすい


 猛禽類は興味深いが、ゲージの中なので檻の格子が写りこんでしまい、写真にならない。象のところに行く。ノッシノッシ、グルグルと歩いてくれるので、写真を撮りやすい。気のせいか、笑っているような表情を見せるので、面白い。ただ、撮影がガラス越しのときは、よく撮れたと思っても、家に帰ってパソコン画面でよくよく見ると、画面の一部に風景が映り込んで使い物にならなかった。

不忍池の方を見下ろすと、辺り一面の蓮の葉っぱ


 さて、イソップ橋を通って、西園の方に行く。このモノレールは、車両が老朽化したが高額の費用のために更新がかなわず、昨年10月から休止している。このままいくと、どうやら廃線になるらしい。初孫を連れて何回も乗ったのに、誠に残念なことだ。歩く途中、イソップ橋から不忍池の方を見下ろすと、蓮の葉っぱで辺り一面が覆われていて美しい。そろそろ、蓮の花の季節だ。また、あの池に朝早く撮りに行こう。

ハシビロコウ


 西園に降りてきたところで、まずはハシビロコウのところへ行く。この鳥は、丸一日でも立ったまま動かずに近寄ってきた魚を狙うという忍耐強いハンターだ。でも、あれ?今日は座り込んでいる。この環境に慣れて、だんだんズボラになってきたのかもしれない。これでは写真にならないので、フラミンゴのところに行く。

手前でフラミンゴ2羽が羽根を広げて追いかけっこ


奥の方にいるフラミンゴの群れ



 あれあれ、手前でフラミンゴ2羽が羽根を広げて追いかけっこをしている。それを撮ってみたのだが、鳥かごの手前の網が画面に写りこんでしまって、絵にならない。試しに、奥の方にいるフラミンゴの群れにレンズを向けると、幸いなことに手前の網は写らなかった。焦点が奥なので、網は画面上からは消えてしまう。光の屈折効果だ。これというのも、APS−Cサイズで300mmだからこそ、できる技だ(フルサイズで450mmに相当する)。キリン舎でも、キリンが奥の方にいるときは、同じように手前の檻の格子を消すことができた。

 そこから、不忍口から出て帰宅したが、ともかく暑くて湿気の高い日だった。パンダのシャンシャンが中国との取り決めで今年いっぱいで中国に帰るというので、それまでにまた何度か会いに来ようと、入園するときに年間パスポートを購入した。だけど、パンダの写真が撮れないとは、残念なことだ。ともあれ、緊急事態宣言で数ヶ月の蟄居生活の後なので、久しぶりにすっきりした。

 ところで、東京ディズニーランドとディズニーシーは、7月1日から営業を再開するそうだ。ただし、感染対策のために入場者の数を通常の2割に絞るとともに、パレードは中止、レストランも半分くらいは閉めるという。なお、感染の終息が早かった大阪のユニバーサル・スタジオ・ジャパンは、既に6月8日から再開している。


(31は、6月23日記)


32.専門家会議が突然廃止される

(1)6月24日、西村康稔担当大臣は、新型コロナウイルス対策の専門家会議を廃止し、それに代わるものとして「新型コロナウイルス感染症対策分科会」を新たに設置することを表明した。従来の専門家会議は、新型コロナウイルス感染症対策本部の下に設置されていて、「厚労省のアドバイザリーボードのような位置付けの感染症の専門家の皆さんの会議」(西村大臣)だった。それに対して新しい分科会は、「改正新型インフルエンザ対策特別措置法に基づく有識者会議の下部組織として位置付け、感染症専門家のほか、地方自治体の代表や危機管理対応の専門家らの参加も求める。」という。

 これは関係者にとっては寝耳に水の発表で、現にその当日、たまたま日本記者クラブで記者会見を開いていた専門家会議の尾身茂副座長(地域医療機能推進機構理事長)らはこの件について記者に聞かれ、「今、大臣がそういう発表をされたんですか?」と困惑し、「私はそれは知りません」と語った。新型コロナウイルス感染症対策の中心となっていた専門家会議を廃止して大きく衣替えするというのに、その専門家の中心人物たちに何の事前連絡もなく勝手に決めてしまうというのは、大変失礼な話である。一体どういうことが起こったのだろうか。

(2)話は、5月のNHK報道番組を見ていたときに遡る。日比谷公園に面した中央合同庁舎5号館(厚生労働省と環境省が入っている)の11階と12階に、狭い会議室がそれぞれ1つずつあり、「厚生労働省クラスター対策班」のいわゆる「タコ部屋」となっていた。一方は東北大学大学院押谷仁教授がチーフとなる東北大学・新潟大学・長崎大学などのグループである。当初は、各県の保健所などから上がってくる報告を元に全国の感染状況を把握し、厚生労働省から各地へ「クラスター対策班」を派遣して鎮火に努めていた。ところが3月中旬以降、感染が急拡大してクラスター対策が追いつかなくなると、次の西浦グループの立てた戦略に基づいて、接触機会の8割削減という方針転換を主導していった。もうひとつのその西浦グループは、北海道大学大学院医学研究院西浦博教授をチーフとする数理モデルを駆使した理論疫学の北海道大学のグループである。

 その2つのグループが、日付が変わる頃まで、調べ、議論し、悩み、呻吟してクラスター対策や予測に没頭する様子をNHKが報道していた。私はこれを見て、ご苦労さまという気持ちとともに、大いなる違和感を感じた。それは何かというと、これは学者のやるアドバイザリーボードではなく、行政官の行う行政そのものではないかと。早い話、感染者数が激増してクラスターの追跡どころではなくなったら、一体どうするのか。緊急事態宣言の発出をしなければならないと考えるが、同時に宣言による政治経済への打撃が懸念されるから、各方面への調整が必要となる。そんなことまで、組織の一員でもないこうした学者が、できるはずがない。ところが、政治が手をこまねいていることもあって、こうした専門家会議が表面に押し出されてきた。

 緊急事態宣言は、結局4月7日に発出されるが、その前の2月24日、専門家会議は「今後1〜2週間が感染拡大のスピードを抑えられるかどうかの瀬戸際だ」という見解を示した。私は、この頃はまだ専門家と政治の棲み分けはできていたのではないかと思っている。ところが、これを契機として、次第に専門家が国民への説明の前面に立つようになった。そして、5月25日に緊急事態宣言が解除されるまでの間に、専門家会議は見解を3回、要望を1回、提言を7回も出し、その度に尾身茂副座長を中心に懇切丁寧で中身のある記者会見を開くものだから、国民の関心も高まり、自ずと新型コロナウイルスに関する政策が、あたかも専門家によって決定されているように思われるようになった。


専門家会議の活動



(3)そんなクラスター対策班の中にあって、ユニークな存在は西浦博教授である。数理モデルを駆使した理論疫学の専門家だという。接触機会の8割削減などを明瞭に主張し、そのユニークな容貌とキャラクターと相まって、専門家会議の記者会見ではかなり目立った。それだけでなく、大阪府の吉村知事に説明して隣県兵庫県との往来の自粛を語らせたかと思えば、東京都の小池知事には気に入られて記者会見に何回も同席するなど、活動も活発であった。私が驚いたのは、4月15日の「個人的な見解」と称する記者会見で、「接触を減らすなどの対策を全くとらなければ、国内で約85万人が重症化し、うち約42万人が死亡する恐れがある」という試算を公表したことである。

 6月25日現在でアメリカの感染者数は242万人、死者数は12万人であることからすれば、これらの数字は荒唐無稽なものではない。しかし、それにしても、どういう計算式といかなる根拠でそのように試算したのかくらい明らかにされていないと、いたずらに国民の不安を煽るだけの結果になりかねない。だから、普通の行政官であれば、簡単には公表しないはずなのに、どうなっているのかと思った記憶がある。

(4)そのような一連の流れからすると、今回の出来事は、さもありなんという気がする。専門家が舞台から引きずり降ろされ、今まで、日々急激に進行していくあまりに深刻な感染状況にオロオロしていた政治家と厚生労働省が、感染がいったん落ち着いたので、ここからようやく気を取り直すことができて本来の任務についたということだ。

 西村康稔担当大臣は、専門家会議をなぜ廃止したのかと問われて、「会議は法律に基づくものでなく、位置付けが不安定だった・・・今後はワクチン接種の優先順位なども課題になるから、・・・感染症の専門家だけでは決められない事柄も出てくる」と話した。でも、専門家会議が法律に基づくものでなかったのは、最初からだ。そういう宙ぶらりんの立場の専門家会議に、政府の新型コロナウイルス対策の司令塔のような役割を果たさせる一方、自分たちはその陰に隠れて、事態が落ち着くまで表にほとんど出て来なかったのは誰なのかと反省すべきである。

(32は、6月25日記)


33.各国の超過死亡数の比較

 日本で新型コロナウイルス感染症が猖獗を極めていた今年の春、4月7日から緊急事態宣言が発出された。それから約1ヶ月半で解除されたのであるが、感染が最も多かったのは4月初旬から中旬にかけてといわれる。そこで、特に4月の「超過死亡数」つまり例年と比べた死亡者数の増分が相当多いのではないかと思われていた。その背景として日本は、他国よりPCR検査の数が桁違いに少ないし、検査漏れで亡くなってしまう人が、「新型コロナウイルスによる死亡」ではなく「自然死」として扱われた例がかなり多いのではと考えられていたからである。

 BBCによると、各国の超過死亡数と考えられる数字は、次の通りである。

 アメリカでは、平年より16%高く、97,300人も多く死亡
   (2月16日〜5月2日)

 イギリスでは、平年より43%高く、64,500人も多く死亡
   (3月7日〜6月5日)

 フランスでは、平年より25%高く、28,400人も多く死亡
   (3月2日〜5月10日)

 イタリアでは、平年より40%高く、42,900人も多く死亡
   (2月24日〜4月26日)

 スペインでは、平年より50%高く、42,900人も多く死亡
   (3月2日〜5月14日)

 ドイツでは、 平年より 4%高く、 7,100人も多く死亡
   (3月9日〜5月10日)

 ところで、感染者数はPCR検査の対象を人為的に変えられることから、その統計数値は実態を表さないことが多いと思われる、その点、死亡者数は事情が異なり、これは人為的な操作はなかなかできないので誤魔化せるものではない。その死亡者数がこれほど平年より多くなっている要因は、おそらく新型コロナウイルス感染症によるものと考えて間違いない。もっとも、新型コロナウイルス患者で病床が逼迫して、そのため他の病気の患者が十分な治療を受けられなくて死亡したという事例もありそうだが、統計上で把握するのは困難である。

 といういわば「常識」を踏まえると、6月26日に日本の厚生労働省が発表した今年4月の人口動態統計速報には、知る人全てが本当に驚いたのではなかろうか。死亡が113,362人で、昨年4月が112,939人だから、わずかに423人しか増えていないのである。これくらいなら誤差の範囲内で、つまり新型コロナウイルスによる超過死亡は、ほとんどなかったのではないかと考えられる。また一つ、日本のミステリーが増えた。そういうことで、

 日 本 では、平年より0.4%高く、  423人が多く死亡
   (4月1日〜4月31日)

(33は、6月30日記)



34.ポピュリスト対女性リーダー

(1)ポピュリストの大統領

 7月6日現在の新型コロナウイルスの感染者数は、世界全体で1,145万247人(うち、死者は53万4,273人)である。感染者数(うち、死者数)を国別にみると、以下のように最も多いのがアメリカ、次いでブラジル、インド、ロシアと続く。

第1位 アメリカ  288万8,730人(12万9,947人)
第2位 ブラジル  160万3,055人( 6万4,867人)
第3位 イ ン ド   69万7,413人( 1万9,693人)

 このように、アメリカとブラジルだけで4割近くに及んでいる。それでは、この2国に共通するのは何かと言うと、科学を軽視し、専門家を信じず、単に大衆受けを狙うだけのポピュリストの大統領が率いる国だということである。


(2)トランプ大統領

 まずは、アメリカのドナルド・トランプ大統領をみてみよう。当初は、「単なる風邪だ」と言い、国民に対して、新型コロナウイルスは大した問題ではなく、コントロール可能という印象を与えようとした。例えば、

「中国から来た感染者は1人で、管理下に置いているから全く問題ない」(1月22日)

「少し暖かくなれば、4月までにはウイルスは奇跡的に消えてしまうそうだ。」(2月10日)

「感染者数はただいま15人。数日中にゼロになる。我々の対策が見事だからだ。」(2月26日)

 ところが、アメリカでの新型コロナウイルス感染者数と死者数は、3月に入ってうなぎ登りに増え、4月末にはどうにも止まらない奔流となって、あっという間に患者数が世界一になってしまった。それからの主役は、ニューヨーク州のクオモ知事であることは、既に述べた通りである。

 そういう中で、トランプ大統領の唯一の関心は自らの再選である。そこで、クオモ知事の向こうを張って、自らほとんど中身のない記者会見を延々とし始めた。ところが、4月23日の会見で、「新型ウイルス感染症の患者に光を当てたり、消毒液を注入したりするのはどうか」と述べて、世間を驚かせた。これに加えて、5月18日には、「(抗マラリア薬の)ヒドロキシクロロキンを2週間ほど前から飲んでいる。」と語って皆を唖然とさせた(その後、案の定、効果は否定された)。非科学的にもほどがある。

 このトランプ大統領の記者会見につられて実際に消毒液を飲んだ人もいたというから、恐ろしい話である。もっとも、これは都市伝説かもしれないが、今のアメリカの共和党トランプ支持者の非科学的な思考法をみると、然もありなんという気がするから怖い。


(3)ボルソナロ大統領

 その点、ブラジルのジャイル・ボルソナロ大統領も、負けず劣らず酷い。トランプ大統領と同様に抗マラリア薬のヒドロキシクロロキンを飲んでいるというのはご愛嬌にしても、新型コロナウイルスについて聞かれて「あんなものは、ちょっとした風邪だ。」と同じことを言う。

 そればかりか、ロックダウン(都市封鎖)の必要性を説く保健相を続けて2人も解任した。州知事らが全国的なロックダウン(都市封鎖)を求めるのに、それは大量監禁だと主張して必要ないと何週間も論争する。死者が5000人を超えたことにコメントを求められると、「だから何なんだ」と答える。新型コロナウイルスより、それにより経済がストップすることが良くないと考える。だから、国民に働いて経済を動かし続けるよう呼びかける。なぜなら、「私たちはみな、どうせ死ぬのだ。」とまでのたまう。

 いやもう、とんでもない大統領だが、熱心な支持者がいる。強気、アンチ・エリート、非科学的で凝り固まった存在だ。まるでトランプ大統領そのものだが、これをもっと極端にしたようなタイプだ。一時は、感染者と死者が続出するので保健省の統計の発表を差し止めたほどだが、さすがにこれは、連邦裁判所が開示を命じた。マスクの着用を義務付ける法案が議会を通過した。ところが、ボルソナロ大統領は学校や商業施設での着用や、貧困層への配布に反対し、一部の条文について拒否権を発動した。 (以上、BBCニュースより)

 朝日新聞によると、7月6日にボルソナロ大統領は、38度の発熱と倦怠感があったためにPCR検査を受けたところ、7月8日、陽性と判明した。そこでようやく人前ではマスクをしているようだ。ところで、「ブラジル国内の感染者は162万3284人、死者は6万5487人に上る。これは、NPO『ブラジル公安フォーラム』のまとめでは、2017年に起きた殺人事件の被害者(死者数)6万5602人とほぼ同じ」という。

 ファベーラという貧困地区がブラジルにはあるそうだが、狭いところに大勢の貧しい人々が住んでいて、新型コロナウイルスが蔓延すると見られている。しかし、政府には援助する気は全くなさそうで、代わりにその地を根城とするギャング団が水や食料を配り、外出禁止令まで出しているというから、驚いた(以上、BBCニュースより)


(4)ボリス・ジョンソン首相

 イギリスのボリス・ジョンソン首相も、トランプ大統領並みのポピュリストだと見られていて、実際に当初は、新型コロナウイルスの脅威を非常に軽く見る発言が多かった。そればかりか、3月3日の演説では、「先日、病院を訪れて新型コロナウイルス患者と握手して回った。」と話していた。ところが、そんなことをしていると、やはりというか案の定というか、首相本人が新型コロナウイルスに罹ってしまった。しかも、4月6日には集中治療室(ICU)に移ったほどの重症である。同じ頃にイギリスでは、チャールズ皇太子も新型コロナウイルスに罹ったから、その当時はこの感染症を軽く見る傾向が一般的だったのかもしない。ちなみにジョンソン首相は、4月27日にようやく公務に復帰した。

 しかしジョンソン首相が不在の間、イギリス政府の楽観的な見方は、これを危惧した政府科学顧問の進言で一変した。4月13日に「(このまま何もしないという現状を)方向転換しないと、国民健康サービス(NHS)が崩壊し、25万人が死ぬという大惨事をもたらす。」と警告したのである。そこで、イギリス政府は16日、新方針を発表し、不要不急の移動や他者との接触を避け、自宅で仕事をするように呼びかけた。ちなみに、その時のイギリスの死者の数は、わずかに55人だった。

 結果として、7月8日現在のイギリスの感染者数は世界第7位の285,768人、死者数は44,236人となっている。イギリスの特徴は、老人ホームでの死者の数が多いことである。これは、ただでさえ高齢者の死亡率が突出している中で、人材派遣会社から老人ホームに派遣された若い職員が、発症しないままに各地の複数の老人ホームで勤務したために、それだけ感染が拡大したと言われている。


(5)女性リーダーの国

 まずは、この感染者数(死者数)の統計を見ていただきたい。

第15位  ド イ ツ 197,523人 (9,023人)
第63位  デンマーク  12,832人 (  606人)
第69位  ノルウェー   8,930人 (  251人)
第77位  フィンランド  7,253人 (  329人)
第114位 アイスランド  1,863人 (   10人)
第123位 ニュージーランド1,534人 (   22人)
第125位 香  港     1,268人 (    7人)
第155位 台  湾       449人 (    7人)

 この8ヶ国は、次のように、いずれも女性リーダーの国である。

  ド イ ツ   (アンゲラ・メルケル首相)
  デンマーク   (メッテ・フレデリクセン首相)
  ノルウェー   (アーナ・ソールバルグ首相)
  フィンランド  (サンナ・マリン首相)
  アイスランド  (カトリーン・ヤコブスドッティル首相)
  ニュージーランド(ジャシンダ・アーダーン首相)
  香  港     (林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官)
  台  湾     (蔡英文総統)

 これを見ると、大国ドイツは、感染者数も死者数も絶対数は多いけれども、イギリス、フランス、イタリア、スペインなど他のヨーロッパ諸国と比べて死者数は3分の1から4分の1であり、なかなか健闘していると言えよう。

 デンマーク、ノルウェー、フィンランド等の北欧の国は、元々、人口が少ないが、それにしても死者数は低く押さえられている。隣国スウェーデン(男性首相)が、集団免疫の理論に固執して、感染者数71,419人、死者数5,420人を出していること(注)に比べれば、死者数が数百人にとどまっているのは、その徹底した感染対策が奏功したといえる。

 ニュージーランドに至っては、感染の初期に危険を察知して外国人の入国を早い段階でストップし、ロックダウンも行い、しかもアーダーン首相自らが自宅から国民に呼びかけて、安心感を与えた。そして先進国の中では最も早く経済の再開を行ったことが特記される。

 香港と台湾は、2003年の重症急性呼吸器症候群(SARS:severe acute respiratory syndrome)のときの反省を生かして、今回はかなり早い段階で中国人の入国をストップして、被害を最小限に抑えている。

(注)スウェーデンの「ロックダウンせずに集団免疫がつくのを待つ」という独特の戦略は、あのトランプ大統領からも揶揄されている。

Despite reports to the contrary, Sweden is paying heavily for its decision not to lockdown. As of today, 2462 people have died there, a much higher number than the neighboring countries of Norway (207), Finland (206) or Denmark (443). The United States made the correct decision!
2020年4月30日20:45

(6)日本にもいた「コロナはただの風邪」

 7月5日は、東京都知事選挙の投票日である。その直前に街中を歩いていたところ、候補者のポスター掲示板があり、その中の一つのポスターに思わず目がとまった。それには、「コロナはただの風邪、コロナ騒動を作ったのはメディアと政府。マスク、ソーシャルディスタンス、3密を避ける、自粛は必要なし。新生活様式反対」とあった。

 ああやはり日本にも、トランプ大統領やボルソナロ大統領のような考え方をする人が実際にいるのかと驚いた。ただの風邪で、わずか5ヶ月の間に世界中で55万人も死ぬものか?

東京都知事選挙の候補者のポスター

(34は、7月5日記、8日追記)


35.東京都で再び感染拡大、第2波か?

(1)東京都で第2波到来か?

 新型コロナウイルス緊急事態宣言は、4月7日に発出され、5月25日に解除された。東京都に限ってみると、感染者のピークは4月17日の206人で、その後漸減していって、5月23日には2人までになり、これで第1波は凌ぎきれたかに思えた。経済活動は次第に再開され、人出も徐々に戻ってきた。その一方、東京都の新宿や池袋等の「夜の繁華街」を中心に再び感染者が目立つようになり、7月2日から6日まで連続して100人を超すこととなった、そして、7月7日にはいったん75人となったものの、8日には224人、9日には243人と激増し、4月17日の以前のピークを軽く超えてしまった。こうなると、夜の街での限定感染というよりは、もはや市中感染が起こっているのではないかと危惧される。


東京都の感染者数推移



 このようにチャートで見ると、もはや感染の第2波が始まったように思えるが、政府と東京都の動きは鈍い。10日に西村大臣と東京都知事が会談して、PCR検査の強化と、繁華街のクラブなど接待を伴う飲食店での感染防止策を打ち出したくらいだ。理由は、「30代以下の感染者が7割を占めているほか、PCR検査は1日当たり3000件以上行われ、その陽性率も5%程度と、緊急事態宣言が出された4月に比べて大幅に低下している」という。

 しかし、これはどう見ても、対策を講じない理由を無理矢理ひねり出しているように思える。4月7日に緊急事態宣言を出した日の感染者数は87人で、今回はその時の3倍近いというのに、この危機感のなさは一体何なんだと思う。それどころか東京都は、6月30日に開いた対策本部会議で、従来の「東京アラート」という警告はやめて「新たにモニタリング項目を設けるが、それには都民に警戒を呼びかける基準となる数値は設けない。」ということにした。もはや全く諦めて放置体制に入ったかに見える。


東京都の新たなモニタリング項目



 勘ぐれば、これ以上の強い措置を打ち出せば、ただでさえ冷え込んでいる経済を更に冷え込ませて壊滅的な打撃を与えかねないことを危惧したのだと思われる。尾身茂分科会座長などは「自粛をこれ以上続けると経済活動が持たなくなり、国民が付いて来られない。」などど正直に述べている。加えて東京都などは、自粛要請に応じた事業者への協力金の支払いなどに財政調整基金の95%もの財源を使い果たして、もはやほとんど枯渇しているという状態に陥っているからだろう。しかも、当面の課題であった東京都知事選挙が終わって現職が再選されたことから、もはや都民に感染防止をアピールしたり、協力金を配って甘い顔をしたりする必要はさらさらない。これからは、対策を行っている「フリ」をして、積極的放置策をとるのではないかと思われる。

 アメリカ、ブラジル、インド、イランなどでは、一向に感染が収まっていないときに、冷え込む経済に耐えきれなくて外出や営業を再開し、以前にも増す感染の拡大を引き起こしている。日本も、同じ間違いをおかそうとしているのか、この数日間の状況に注目する必要がある。ただ幸いなことに感染爆発の兆候があるのは、東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県といった首都圏に限られており、未だ全国的規模ではないことが唯一の救いだ。

(2)トルコの例から見た感染対策と経済の両立

 新型コロナウイルスの脅威の一方で、経済活動を如何に維持するかが世界共通の課題となっている。人命は地球より重しと言っても、毎日の暮らしが成り立たないのでは何ともならない。

 トルコについて、興味深い記事があった。「中東のトルコは当初からはっきりと経済を重視し、21歳から64歳までの生産年齢層を外出制限の対象から外し・・・外出禁止令の対象を65歳以上と20歳以下だけに限り・・・社会を支える働き盛りの世代に対しては、外出の自粛要請にとどめた。」(朝日新聞ポッドキャスト7月11日付け)

 それでどうなったかというと、トルコの新型コロナウイルス患者数は世界第15位の210,965人、死者数は5,323人である。患者数に占める死者数の割合は、わずか2.5%である。同時期の近隣国イギリス(患者数第8位)が15.5%、イタリア(患者数第13位)が14.3%であることに比べれば、はるかに低い。アメリカ(患者数第1位)の4.2%に比べても、半分にとどまる。その大きな要因は、生産年齢人口の新型コロナウイルスによる死亡率が低いことである。

 既に見た通り、日本での統計では、全体の死亡率が1.6%であるのに対し、29歳以下は0%、30〜59歳以下は0.1%からせいぜい0.4%と低くなっている。ところが60〜69歳は1.5%、70〜79歳は5.6%、80歳以上は11.9%と年齢が上がるにつれて死亡率も大きく上がっていく。トルコの年齢別死者数の統計はないが、もし日本と同じ傾向で生産年齢層の死者が非常に少ないのなら、この結果は納得できる。

 そうすると、日本ではこれから第2波が来るとして、とりわけ60歳以上の人には外出自粛を求め、それ以外の生産年齢の人には、これまでと変わらない経済活動を続けてもらうというのも、感染の脅威防止と経済活動の維持の両立を図るひとつの手かもしれないと思われる。

 もちろんその場合は、医療崩壊が起こらないように、患者数の増加と病院のキャパシティとの両にらみの微妙な調整が必要であるが、場合によっては軽症患者用の隔離施設の活用などを図りながら、何とか対応していけないわけでもないと考える。


(35は、7月11日記)


36.新型コロナウイルスは空気感染する

(1)日本ではまだあまり報道されていないが、BBCによると、世界保健機関(WHO)は、7月7日にようやく「新型コロナウイルスの空中感染」の可能性を認めるに至った。それまでは、まだ科学的根拠が不足しているとして、どういうわけか煮え切らない態度を続けていた。ところが世界の科学者239人が公開書簡でそれを批判するに及び、とうとう認めた形だ。WHOのこういうところが政治的配慮が過ぎるのか、どうも私には不可解で、もっと科学的価値観を大切にする組織であるべきだと考える。

 更に言えば、この政治的配慮の過ぎることがWHOの命取りになっている。例えば、今回の新型コロナウイルス騒動の当初はあまりに中国寄りだったとしてアメリカのトランプ大統領から批判され、新規の拠出金が止められたばかりか、とうとう来年は脱退すると通告される事態とになった。

(2)それはともかく、本題に戻ると、これまでWHOは、新型コロナウイルスは、咳やくしゃみをした時に飛び散る飛沫で伝染すると説明していた。このような飛沫を直接浴びた場合はもちろん、飛沫がドアノブ、手すり、スイッチ、食器などに付けばそれを介して次々に伝染していくというイメージだった。だから、感染者はマスクを付けて飛沫が飛び散らないようにし、健常者は手を頻繁に洗えということになっていた。日本政府が推奨する対策も、それに従っている。

 ところが、空気感染(airborne)するとなると、話は違ってくる。科学者によれば、新型コロナウイルスは感染者の発する呼気などに含まれ、それがエアロゾルとなって空中を漂う。およそ8時間は、感染力があるそうだ。だから今回、WHOは密閉空間や混雑した場所では、それは有り得ると認めた。

 すると、これからは、マスク着用が重要になる。これまではマスク着用は感染者が他人にうつさないエチケット程度という感覚がなきにしもあらずだったが、実はそうではなくて、マスクには、やはり「新型コロナウイルスを含むエアロゾルから我が身を守る」という大事な役割があったのである。次に、密閉空間や混雑した場所に行ってはいけないという点については、こういう場所の管理者は、2mどころかもっと間隔を空ける必要があるだろう。演劇やミニシアター、路地裏の飲み屋などというものは、もはや商業的には成り立たないのではなかろうか。

(3)折しも、新宿区の劇場で集団感染が発生した。7月14日の報道によれば、新宿シアターモリエールで上演された舞台「THE★JINRO イケメン人狼アイドルは誰だ!!」で、出演者16人、スタッフ5人、観客16人の合計37人が感染したという。公演は6月30日から7月5日まで全12回あり、保健所は、延べ約800人の全観客を濃厚接触者に指定した。これなどは、新型コロナウイルスが出演者の唾などからうつるというだけではなくて、空気感染したと考えることが妥当だろう。

 NHKの報道によれば、この劇場の主催者は、出演者の中に二人ほど体調が悪い者がいたが、業界のガイドラインに従い、「発熱が37.5度を超えていないこと、抗体検査が陰性だったこと」を満たしていたので、出演させたという。しかし、このうち「発熱が37.5度を超えていない」というのは厚生労働省が意図的にPCR検査をさせないために作った基準で、検査を受けるべき人が受けられないと強く批判された結果、厚生労働省自身が5月に取り下げたものである。また、「抗体検査」は過去に新型コロナウイルスに罹ったことがあるかを知るのには有効だが、現在新型コロナウイルスに罹っているかどうかを調べる検査ではない。要は、この劇場の主催者が参照した業界のガイドラインが、古かったということだ。


(36は、7月14日記)


37.やはり感染の第2波が始まった!

 次のグラフは、全国で新型コロナウイルスへの感染が確認された人数の推移である(NHK調べ)。これを見ると、一日の感染者数が、いったんは4月11日に720人のピークを迎えた後、漸減傾向を示していた。緊急事態宣言が解除された5月25日には21人と少なくなり、それ以降6月中旬までは非常に落ち着いた動きであった。国民は安堵し、この調子では夏を迎えるまでに流行が収まるかと思われた。


全国の感染者数の推移



 ところが、6月下旬から感染者が徐々に増え始め、7月になって急激に増加し、あっという間に18日には661人と、第1波のピークの720人に迫る数字となった。とりわけ東京都では、第1波のピークの206人(4月17日)に対して、既に293人(7月17日)と、もう前回のピークを超えてその1.5倍になってしまっている。一時は、小池百合子東京都知事は、「夜の街を中心にPCR検査の数を増やしたから」と語っていたが、それでは全く説明がつかなくなってきた。


東京都の感染者数の推移



 この増加傾向は、大阪でも同様で、4月9日に92人のピークを迎えた後、漸減していって5月下旬から6月半ばまではほぼゼロだったが、7月19日には89人とピークに迫っている。その他京都は前回のピークを超え、愛知県、福岡県なども気になる感染の拡大である。かくして全国的に感染の第2波が始まったのは、もはや間違いないと思われる。


(37は、7月20日記)


38.「Go To トラベル」が大トラブル

(1)官房長官と東京都知事が不毛の鞘当て

 新型コロナウイルスの第2波が襲ってきたのは確実で、感染者が急増している緊急事態だというのに、政府の菅義偉官房長官と、東京都の小池百合子知事とが不毛の鞘当てを続けている。

 最初に菅官房長官が北海道千歳市内での講演で、「(東京を中心に感染が拡大する)この問題は圧倒的に東京問題と言っても過言ではないほど東京中心の問題」と発言した。

 これに対し、小池知事は黙っていない。「圧倒的に検査数が多いのが東京。陽性者には無症状の方もかなり含まれている」と指摘した。返す刀で政府が今月22日から前倒しして実施予定の観光支援策「Go To キャンペーン」に触れ、「整合性を国としてどう取っていくのか、冷房と暖房と両方かけることにどう対応していけばいいのか。体調不良の方は『都外へお出かけにならないでください』と伝えているが、無症状の感染者も出ている中で、どう仕切りをつけるのか。これは国の問題だ」と述べたそうだ。(2020年7月14日付け朝日新聞)

(2)「Go To トラベル」は感染を拡げるだけ

 ところで小池知事が言及した「Go To キャンペーン」だが、新型コロナウイルスの流行の収束を見込み、「官民一体型の地域活性化、需要喚起を目的としたキャンペーン」である。その内訳は、「Go To トラベル」(観光キャンペーン)、「Go To イート」(飲食キャンペーン)、「Go To イベント」(イベントなどのチケット代を補助するキャンペーン)、「Go To 商店街」(地域振興キャンペーン)から成る。

 その中の代表的な一つ、「Go To トラベル」は、旅行代金の半額(1泊一人当たり最大2万円)の補助があり、そのうち、70%程度は旅行代金から割引、30%程度は現地で使える地域共通クーポンが付与されるという。それを7月22日から、しかも新規の旅行だけでなく既存の旅行にまで対象を広げて実施するという大盤振る舞いだ。実は私も、感染が落ち着いてきたことから、8月末に京都旅行、9月初旬に北海道旅行をするつもりでいた。

 ところがやっと第1波をやり過ごしたと思ったら好事魔多しで、前述37で述べた通り、東京都だけでなく、各地に新型コロナウイルスの第2波の感染が急拡大している。そういう中、予定通りこのキャンペーン実施するのは感染を地方に拡げる結果になるのではないかと、大いに危惧される。ここは早めに見切って、延期又は中止すべきではないか。

(3)「Go To トラベル」から東京を除外

 7月16日、赤羽一嘉国土交通大臣は、Go To キャンペーンから「東京都内の宿泊や東京都在住者を対象から除外する。国として(キャンセルへの)補償する考えはない。」と驚くべき発表をした。翌日、菅義偉官房長官は、「直前になって東京都の感染者が拡大している現実の中で判断した。大変申し訳ない・・・(旅行の)キャンセル代金は特別な対応を行わず、旅行会社に判断いただく」と発言した。

 ところが、これには大きな問題がある。22日から実施すると言って国民の期待を大いに高めておきながら、わずか1週間前になって突然取り消すなんて、およそ行政機関のやることではない。これによって損害が発生したなら、賠償責任が生じる。現に東京在住でこのキャンペーンを当てにして各地の宿を予約した人たちから、予約の取消しが数多く発生している。キャンセルが無料でできるならともかく、キャンセル料を払わなければならない人は、泣き寝入りとなる。また、旅行会社がこの措置によってキャンセルが続出して損害を被ったということも考えられるし、何よりも観光地の旅館、ホテル、土産物屋が気の毒だ。

 また、「なぜ東京在住の人が除外されるのか、同じ税金を使う予算だというのに、不公平だ、差別だ。」という声がある。確かに、その通りだと考える。これは、第二のアベノマスク星野源とのコラボレーション並み、あるいは朝令暮改という意味では特別定額給付金(減収世帯への30万円支給を取りやめ、補正予算を組み、急遽全世帯に10万円を支給)と同様の大問題になりそうだ。もはや、政権が統治能力を失って、方向感なく漂流し始めた感がある。

(4)やはりキャンセルの補償を行う方向で調整中

 7月20日、また驚くことが起こった。4日前の記者会見で赤羽一嘉国土交通大臣があれほど明確に「国として補償する考えはない。」と言っていたのに、今度は前言を引っくり返して「補助の適用外となった予約のキャンセル料金を補償する」方向で検討中と言い出した。また朝令暮改だ。こんな調子では、政府に対する信頼がなくなる。安倍首相の顔が全く出てこないのは、汚れ球を拾いたくないのだろう。統治能力喪失の極みだ。

 なぜこうなるのか考えてみると、慎重な思慮もなく、その場の極々限られた数の政治家の単なる思いつきで政策を決めていくからだろう。かつてであれば、各省内各省間で事務方が大いに議論して用意周到に準備をして進めたような話が、トップの単なる思いつきで、あれよあれよという間に飛んでもない方向に進んで行って自滅している感じである。政治主導と言って勝手気ままな政策を連発して何一つ成果を出せずに自滅していった民主党政権の姿を再び見ているようだ。


(37(1)(2)は7月17日、(3)(4)は20日記)

39.第2波の勢いが増すのに政府は無策で都道府県が苦慮

(1)新型コロナウイルスの第2波の勢いが、なかなか止まらない。この波は、まずは東京から始まったが、1週間もしないうちに大阪、名古屋、福岡と急速に拡大した。当初は新宿や池袋などの夜の繁華街が中心だったが、いつの間にか夜の会食を通じて、職場、家庭、学校に広がっていき、感染経路が不明な割合も半分を超えるようになった。そして8月7日には、ついに1日の感染者の数がこれまでで最高の1,595人、累積の感染者の数が45,889人にも達した。


各都道府県の感染者数の推移 8月7日現在


日本国内の感染者数 8月7日現在


 下のグラフのグレーの線は過去1週間の移動平均の感染者数だが、これに見られるように、むしろ感染の騰勢はますます加速している。どこまで増えるのか、全くわからなくなってきた。PCR検査が少しは増えたことによる早期発見と検査期間短縮による待機期間の縮小が功を奏し、それとともに重症患者への治療法の工夫により、幸い、死者の数は、第1波の時ほどは多くない。しかしそれでもこの数日間で数人ずつ増えて行ってついに1,040人にもなった。1ヶ月前はの死亡がゼロの日もあったことを思えば驚くほどだ。これからもっと増えていくに違いないが、そうすると再び医療崩壊かというギリギリの局面が現出するのは時間の問題かもしれない。


東京都の感染者数の推移



(2)それなのに、政府の腰が定まらず、全くの無為無策だ。安倍首相は、「徹底検査で陽性者の早期発見と早期治療を進め、自治体と連携して必要な対応を講じる」というが、少しは何らかの対策が講じられたのかといえば、そうではなくて単に口先だけで全く何もしてない。

 それどころか、西村大臣が「お盆の帰省は高齢者に感染を拡げるから慎重な行動をお願いする」と言ったかと思えば、旅行業界をバックにした菅官房長官が「一律に控えてと言っているわけではない」などとそれをひっくり返すといった具合で、閣内不統一の極みだ。地方では、各都道府県の知事が口々に帰省の自粛を呼びかけているというのに、この体たらくである。

 ところで、私が可哀想に思うのは、病院と医療従事者である。4月から5月にかけての緊急事態宣言の間、普通の患者が病院での感染を恐れて診察を受けに来なくなった上、新型コロナウイルス患者を受け入れたことで普通の患者の手術を延期したりして、病院経営が大きな赤字となった。そればかりか、しばしばクラスターが発生して医師や看護師などに感染者を出しているし、そういう危険な業務に従事しているというのに、病院の経営が危ないといってボーナスが減らされたりするケースが多いようだ。

 朝日新聞によると、「病院の経営悪化が加速している。病院関連の3団体が6日公表した4〜6月の経営状況調査によると・・・診療に伴う収入から費用を差し引いた「医業利益」は、6月の1病院当たりの平均で5951万円の赤字。利益率はマイナス12・1%で、4月の同9・1%、5月の同8・4%から赤字幅が拡大した。新型コロナ患者を受け入れる病院の6月の赤字幅は同14・8%と、4月の同11・4%、5月の同11・1%から拡大した。赤字の要因は、感染を避けるなどの理由から、外来患者と入院患者が減っていることがある。初診患者数は4月と5月が前年同月比で約4割減、6月も約2割減った。夏の賞与支給については「満額」が71・3%、「減額」が27・2%、「支給なし」も0・8%あった。」という(8月7日付け)。

 そうかと思うと、新型コロナウイルス患者を受けいれたというだけで、病院関係者の子供が保育園での保育を断わられたという話もよく聞く。もう、踏んだり蹴ったりだ。よくこれでやってくれている。それなのに、政府は医療従事者一人あたり20万円程度の見舞い金を用意する程度だ。病院自体に対する援助も含めてもっとケアすべきではないかと、もどかしく感ずる。

 その一方で、上記38で述べた「Go To キャンペーン」事業は、こういう第2波が猛威を振るっている状況では、まるで感染を全国に拡げるようなものだ。それなのに、1兆7千億円もの予算を使ってなお強行しようとしている。どう考えても、おかしい。この予算はもう凍結し、10兆円もある予備費を使って病院と医療従事者を支援するスキームに変えるべきだ。

(3)そういうことで、政府が無策の中、急増する感染者に対応しなければならない立場に追い込まれた各都道府県知事は、やむにやまれず、それぞれが独自の対策を打ち出している。大別すると、飲食店の営業時間規制とゾーン規制とに分けられる。

 その中で、まず東京都は、8月3日、一部の飲食店と全てのカラオケ立場店に対して、次のように夜10時までの営業時間短縮の要請を行った。

 〇対象施設: 酒類の提供を行う飲食店・カラオケ店
 〇営業時間: 朝5時から夜10時まで
 〇対象期間: 令和2年8月3日から8月31日まで


東京都の感染防止対策



 加えて、全ての業種に対して、感染防止徹底宣言ステッカーなるものの掲示を勧めている。これは、事業者自らがチェックシートを確認して、ホームページからダウンロードしたステッカーを自分で掲示するという「緩い」対策である。まあ、はっきり言って「目くらまし程度のもの」に過ぎないが、自粛と慎重な行動をとる「ムードを盛り上げる」という心理的効果はあるだろう。ちなみに、近くの寿司屋は、次のステッカーを貼り出していた。

近くの寿司屋のステッカー



 これに関しての東京都のホームページ曰く「新型コロナウイルス感染症の拡大防止を図りつつ、事業を実施していくためには、店舗(事業所)等での感染防止対策の徹底が重要です。そこで、事業者の方向けに、事業者が実施すべき感染防止対策を掲載した業種別のチェックシートを作成しました。チェックシートにある感染防止対策を全て実施していただき、専用フォームから申請すると『感染防止徹底宣言ステッカー』を取得できます。『感染防止徹底宣言ステッカー』を店舗等の目立つところに掲示いただくことで、都民の皆様が安心して利用できる施設であることをお知らせすることができます。事業者の皆様、店舗等の利用者への安心の提供と感染拡大防止のため、ぜひこの取組にご協力ください。」とのこと。

 このチェックシートは、次の全業種向けのほか、実に細かく個別の業種ごとに作成されている。たとえば、 レストラン・料理店等編百貨店等編屋内テニス場等編博物館・美術館等編自動車教習所編ナイトクラブ等編などといった具合である。妙にきめ細かなところもあれば、反対に大雑把に引っくくるという極めて大胆なところもあるような・・・。


東京都の全業種チェックシート



(4)東京都以外の主な自治体の対応は、次の通りである。

 大阪府では、大阪市の繁華街、ミナミの一部エリアで、酒類を提供する飲食店やカラオケ店に、今月6日から20日までの15日間、休業や営業時間の短縮を要請した。営業時間の短縮は午前5時から午後8時までとし、要請に応じた店舗には、府と大阪市がそれぞれ、1日につき1万円、合わせて2万円の支援金を出すという。

 愛知県では、8月5日から24日までの20日間、名古屋市の繁華街である栄地区と錦地区の一部で飲食店などに対する短縮営業、休業要請を行った。これに応じた事業者には、1日当たり1万円、最大で20万円の協力金を支給する。翌6日には、県独自の緊急事態宣言を出した。対象期間は6日から24日までで、不要不急の行動自粛・行動の変容、県をまたぐ不要不急の移動自粛、感染防止対策の徹底の3本柱で、重症化しやすい高齢者などへの配慮も促している。

 沖縄県でも7月31日に県独自の緊急事態宣言を出し、8月1日から15日まで、那覇市内の飲食店に対して営業時間を午前5時から午後10時までとするように求めた。加えて、沖縄本島全域での不要不急の外出自粛を要請し、県をまたぐ移動について、県民に対しては自粛を求め、県外からの訪問者に対しては慎重な判断を求めている。

 岐阜県では、「県感染者の約6割が、愛知県由来で、そのうち繁華街のクラブ等、酒類を伴う飲食店での感染者が約7割超」という認識の下に、7月31日に「第2波非常事態」を宣言し、愛知県、特に名古屋での酒類を伴う飲食の回避、学校夏休み、お盆休み対策の徹底、感染防止対策の基本の徹底、行動指針、ガイドラインの遵守徹底を県民に呼びかけている。

(5)帰省自粛の呼び掛けの結果

 これらの帰省自粛の呼び掛けの結果として、旅行者の数は、昨年同時期と比べて、(JRは8月7日から17日まで、その他は同16日まで)

 ■ JR新幹線や特急列車の利用者の数は、24%に、
 ■ 高速道路の1日当たりの平均交通量は、67%に、
 ■ 飛行機は国内便が35%(国際便はわずか3%)になった。


(39(1)から(4)までは8月8日、(5)は18日記)

40.専門家会議に代わった分科会の評価

 東洋経済オンラインで、和田一郎教授(花園大学社会福祉学部)という方が「日本のコロナ対策」初期対応は成功したワケ」という記事(7月8日付け)を書いておられる。これがまた今回の新型コロナウイルス騒動に際しての政府と国民の対応を見事に言い当てているので、感心してしまった。ちなみに、この方は、6月24日に政府によって廃止された新型コロナウイルス感染症対策専門家会議(以下、専門家会議)にエビデンスを提供していた「クラスター班」の一員(厚労省参与)として参加していたそうだ。

 それによると、わが国の一般的な政策の評価は、おおよそ次のパターンに落ち着くという。

(1)新たな危機に対して、初期対応システムは奇跡的にうまくいく。
(2)初期対応への批判に迎合して政治主導によりシステムが取り潰される。
(3)他分野の専門家や著名人が入り、経験や体験談、的外れのエビデンスをベースとした新たな議論が始まる。
(4)誰も責任を取らないような総花的な提言等しかできず、本質的な対応ができない。
(5)情勢が悪化するも、誰も責任を取らない。よって支援や補償もない。
(6)過酷な国民の負担と頑張りによって何とか持ち直す。
(7)最初に戻る。


 そして、「政治家は西浦教授をはじめ専門家を隣に座らせ、自粛の必要性を説きました。一般的には権威付けといわれますが、政治においては『成功したら私のおかげ、失敗したり批判が起こったらすべてこの専門家の責任』という意味です。その結果、政治家でなく、専門家である西浦教授批判となったのは皆さんの知るところです。そして専門家会議の議事録を公開してもいいという声がメンバーから聞こえるや否や、解散となりました。」とまで言うのには、笑ってしまった。いや笑い事ではないのだが、もう笑うしかない。というのは、全くその通りなのだから。

 上記の(1)から(7)までを今回の新型コロナウイルス騒動に当てはめていくと、(1)は、緊急事態宣言の発出()からその解除(18)までを言うのだろう。(2)は、西村大臣による専門家会議のお取り潰し(32)のことに違いない。(3)は、まさにその後に発足した「新型コロナウイルス感染症対策分科会」のことだ。そうすると、「他分野の専門家や著名人が入り、経験や体験談、的外れのエビデンスをベースとした新たな議論が始まる。」というのが現下の状況らしい。

 分科会のメンバーを見ると、そもそも専門分野がバラバラなので、仰るように確かに烏合の衆かもしれない。専門家会議の西浦博教授(北海道大学)のような感染症理論疫学に的を絞った鋭い切れ味のある議論ができるとは、どうも思えない。分科会はこれまで5回開かれたようだが、その5回目は西村大臣の注文に応じて次のような数字を挙げていた。

 ところが、これがどうなれば第2波の緊急事態宣言に繋がるのか、あるいはこれらが都道府県でやっている数値や指標といかなる関係にあるのかなどということが全く不明である。ますます(4)でいう「誰も責任を取らないような総花的な提言等しかできず、本質的な対応ができない。」という段階そのものになっている。専門家会議の時代と違って、政治家の思うがままに「牙が抜かれて」しまったというわけだ。そんな訳の分からない数字を次のように説明する尾身茂分科会座長がピエロのように見えてきて、気の毒だ。


各都道府県で今後想定される感染状況(上)

各都道府県で今後想定される感染状況(下)



 そうすると、次は(5)「情勢が悪化するも、誰も責任を取らない。よって支援や補償もない。」ということになるのか・・・まあ、そうだろうな・・・そして、(6)「過酷な国民の負担と頑張りによって何とか持ち直す。」そして、ワクチンができるまで、これを繰り返す事になるのだろう。


(参考)新型コロナウイルス感染症対策分科会

  設置根拠
  構成員

 開催状況
  令和2年7月 6日 第1回資料
  令和2年7月16日 第2回資料
           これからあるべき対策の概要
           今後実施すべき対策について
           検査体制の基本的な考え・戦略
           GO TOトラベル事業に関する分科会の政府への提言
  令和2年7月22日 第3回資料
           直近の感染状況等の分析と評価
  令和2年7月31日 第4回資料
           今後想定される感染状況の考え方(暫定合意)
  令和2年8月 7日 第5回資料
           今後想定される感染状況と対策について

 ところで、日本はいま、第2波の真っ最中であるが、日本と同様に新型コロナウイルス感染症の第1波をいったんは上手く封じ込めたと思われた国でも、第2波が大きく押し寄せてきて、大問題となっている。オーストラリアとイスラエルがそれで、第2波の方がより深刻になっている。

複数の国で感染者が増加している。BBC報道による




41.感染経路事例集

 国立感染症研究所が、新型コロナウイルスの感染経路を図解した「クラスター事例集」をとりまとめた。といっても、ごく簡単な図が6枚あるだけだ。これまで、都道府県からは感染者の数や死者の数は発表されるものの、それが誰からどういう経路で感染したのか、その内容がほとんどわからなかった。

 もっとも、例えば病院での院内感染の場合には、個別の病院名は公表される。しかし、その具体的な感染の状況や経路については全く情報がなく、あれこれ推測するにとどまっていた。ましてや同じ公的施設でも、私の住んでいる文京区では、認可保育園でクラスター(感染者の集団)が発生したというのに、どういう状況で誰からどのように感染したかも全然わからない。それどころか、どこの保育園ということすら公表しない。だから、ますます疑心暗鬼になるという悪循環に陥る。

 その点、厚生労働省などは「3密(密閉、密集、密着)」は避けよというが、それだけでは漠然としすぎて、何のことやら、いかに行動すべきか、さっぱりわからない。だから、もっと具体的に、どういう状況で集団感染したのかを具体例を上げて公表すべきである。

 もちろん、個人情報の保護や人権尊重の意義は重々承知しているが、事は人命に関わるものだけに、情報は隠匿するのではなく、もっと積極的に公開を行って国民に周知し、短期決戦で早期に流行を抑制すべき時期に来ていると思う。

 そういう観点で、遅まきながら国立感染症研が公表したこの資料を見ると、クラスターが発生した6つのパターンが描かれている。その内容の乏しさには落胆するほかないが、これしかないのだから、仕方がない。

 第1は、院内感染の事例である。どこだろう。東上野の永寿総合病院かもしれない。看護師同士が狭い休憩室で感染している。換気の悪いところで、ぺちゃくちゃおしゃべりして伝染してしまったようだ。他方で、感染しているのに気付かずに患者を退院させて介護老人保健施設に帰らせ、そこで二次感染をさせてしまっている。この例なら、対策を講じるのは簡単なことだろう。


院内感染の事例



 第2は、昼カラオケ店での事例だ。北海道で見られたものである。そもそも北海道では、昼間に高齢者がカラオケをするなんて、思いもしなかった・・・それはともかく、この事例だが、カラオケ店主が80歳代で女性というのが2軒もあるではないか・・・しかも、お客にも70歳代が結構いる。皆さん、元気だなぁとしか言いようがない。皆さん、元気だなぁとしか言いようがない。その70代の客があちこちの店に行って感染を拡げている。症状が出ていたら、「店で遊ばない、店を開けない」、無症状の人は、「マスクを着ける、長時間歌わない」という対策をとればかなり防げそうだ。それにしても、マスクを着けてカラオケというのは、興がそがれるのも確かだ。でも、そんなことを言っておられない世の中ということか。


昼カラオケ店での事例



 第3は、職場での会議で、感染してしまった事例である。発端は、50歳代の女性か。発症1日前に出席したらしい。すると、3人が4日以内という早目に発症し、また別の3人が遅目に発症したということになった。こういう場合、職場に最初に新型コロナウイルスを持ち込んだその女性は、平謝りだろうな。職場の会議というのは狭い密室で行われることが多いし、発言者は限られるから、その人が感染していたら、もうアウトだ。だから、当分はWeb会議かメールでするしかない。


職場での事例



 第4は、スポーツ・ジムの更衣室で発生した事例である。2月の終わりに千葉の市川で発生したクラスターだろう。年代を問わず女性ばかり5人だ。てっきり、ジム本体ではないかと思っていたが、岩盤浴だけの人もいたから、共通点は更衣室ということらしい。これも狭い更衣室でぺちゃくちゃおしゃべりしていたことによるものだろう。


スポーツ・ジムの更衣室での事例



 私も、室内テニスをするためにスポーツクラブの更衣室を利用するが、女性ほどではないにしても、マスクもしないでと大声で話す高齢者がたまにいて、そういうときは、さっさと出てくることにしている。

 第5は、接待を伴う飲食店の事例だ。20歳代のキャバクラの女性店員が、症状があるのにホストクラブの客となって2人の男性店員に伝染し、自分の店内で他の店員と男性客にまた伝染し、更にその男性客は自分がオーナーとなっているスナック店でまた感染させている。その他、東京からの客がラウンジで女性店員に伝染した。

 こういうことが、全国的に生じているのだと思う。この新型コロナウイルス感染症が流行している限り、こういう飲食店で自信を持って感染防止をすることは、まず難しいのではないかと思わせられるケースである。


接待を伴う飲食店での事例



 第6は、バスツアーの事例である。日本で発生したごく初期の新型コロナウイルス感染者は、1月中旬に感染が明らかとなった屋形船で会合をしたタクシー運転手である。それに次いで、1月下旬には、その前に武漢市からのツアー客を乗せたことがあるバス運転手とそのすぐ後ろの座席にいたバスガイドが感染していたことが判明したが、その後者の話らしい。こういうケースを見ると、まずはマスク着用をすべきであるが、そもそも長時間のバスでの移動は控えたほうが無難だと思われる。


バス運転手とバスガイドの事例






新型コロナウイルス感染症クラスター対策

 (国立感染症研究所IASR Vol. 41 p108-110: 2020年7月号)

 2020年1月15日, 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の症例が日本において初めて確認された。以降, 症例数の漸増を認め, 3月中旬には海外からの輸入例を契機とした流行がさらに拡大し, 4月7日緊急事態宣言へとつながった。様々な施策や行動変容による市民の接触機会の減少を通じて, 症例数は減少傾向となり(5月31日時点で1日の確定例は22例, 5月1〜14日まで1,765例の確定例が認められたが, 5月15〜31日までは600例), 緊急事態宣言は5月25日に解除となった。本邦では, COVID-19対策の重要な柱の一つとしてクラスター対策が行われてきた。症例が減少傾向である今, 新たな感染拡大に備えるべく, クラスター対策について振り返りたい。

 COVID-19において, クラスターとは患者集団を指す。クラスターの発生により, 連続的に集団発生が起こり(感染連鎖の継続), 大規模な集団発生(メガクラスター)に繋がる可能性がある。クラスター対策とは, 日本のCOVID-19対策の一つの柱であり, 疫学情報の収集, 分析を通してクラスターの早期発見と対応を支援するだけでなく, 市民に対してはクラスターの発生しやすい場所, 環境, 行動を避けるよう啓発することで, クラスターの形成を防止することを目的としている。

 クラスターの同定は, 積極的疫学調査に基づいて行われる。積極的疫学調査では, 発見された症例からその濃厚接触者を特定し, 前向きに感染のさらなる広がりを防止するのに加えて, 症例の行動歴を後ろ向きにさかのぼって(COVID-19の場合, 発症前14日間を目安), 感染源の同定を試みる。クラスターに伴う感染が疑われた場合には, クラスターが発生した場や状況を把握することで, そこから他の方向に広がった感染連鎖を見つけ, 断ち切る必要がある。これは, 他の感染症疫学調査でも行われる手法であり, 例えば, 結核の集団感染調査は, 保健所をはじめとする衛生主管部局の業務として長年行われているものである。これは, 前向きに濃厚接触者を管理するのみでなく, 症例の行動歴を後ろ向きにさかのぼることで, 感染源や曝露歴を特定し, 感染リスクが高い集団を見つけ, 封じ込めを行い, 新たな結核の発生を予防することに役立てられている 。

 一方で, COVID-19は, 無症状や軽症例が多く, すべての患者を把握するのが実際的に困難である。感染者の多くが重い肺炎を起こす重症急性呼吸器症候群(SARS)コロナウイルスによるアウトブレイクと異なり, 感染連鎖を認識しにくい(図)。しかし, 次に述べる理由でクラスターを特定することに意義がある。

 日本における感染者のデータを用いた分析では, 感染者の約80%が二次感染を引き起こさなかったことが示されている。一方で, ごく一部の感染者は多くの人に感染させ, クラスターを形成していた。つまり, クラスターが形成されなければ感染の連鎖は維持されないことになる。そのため, クラスター形成の機会を減らすことができれば, COVID-19の感染拡大を相当程度抑えることが可能であると考えられる。さらには, クラスターが特定されれば, そこから広がった感染については, クラスターとの繋がりにより検出されやすくなる。しかしながら, 認識されているクラスターから連鎖した症例がある一方で, それらとの繋がりが不明な症例, 聞き取り調査をしても感染機会や感染源がわからない“孤発例”が散見されることもある。このような場合は, 見えていない感染連鎖が水面下で進展しており, 確認されていない症例や認識されていないクラスターが地域内に存在している可能性がある。したがって, 次の大規模な感染機会へと繋がるリスクがあるため, 孤発例を認識した場合には, 詳しい行動歴を聴取し, クラスター発生の場となった感染源や感染機会を推定し, そこから派生している感染連鎖を見つけ出して断ち切る必要がある。孤発例を対照的に見つけ出すという意味でも, クラスターを認識把握しておくことが重要である。

 クラスターの発生場所に共通する環境因子として, 国内では多くの感染伝播が「3つの密」と呼ばれる特定の環境で発生したことが, 流行の早い段階から明らかとなった(換気の悪い密閉空間, 多数が集まる密集場所, 間近で会話や発話をする密接場面)。

 「3つの密」の条件が必ずしもすべてそろわなくても, 大声での発声や歌唱などは感染リスクになりうる, また息の上がるような運動が感染リスクを高めたと思われる事例も発生している。至近距離での会話機会が多い接客を伴う飲食店などでは, 多くの人が密集していなくても1人が複数の人と密接に接触するような場合にクラスターが形成される可能性がある。クラスター対策の重要な役割として, こういった共通する環境的および行動的要因を特定して, そのような場を避けるように市民に呼びかけることが重要である。市民がこうした場所・環境・行動を徹底的に避けることでクラスターの発生を予防することができると考えられる。また, 病院や高齢者・障害者施設でも多数の院内/施設内感染クラスターを認めている。このような場では, 通常リンクを追うことが可能である。また隔離など対策を実行しやすいために制御下に置きやすい。一方で, 対策が後手に廻ると感染拡大が起こりやすく(メガクラスターの発生), 感染すると重症化するリスクが高い集団がいることも多い。そのため, 国内外の感染の状況の子細な分析に基づく院内/施設内感染の対策・予防の徹底が望まれる。

 本稿では, COVID-19に対して日本で行われているクラスター対策について記載した。クラスター対策の今後の展望としては, 感染拡大時のリソースの効率化を図るため, 積極的疫学調査や濃厚接触者の追跡を含め, サーベイランスへのIT技術の活用が重要になってくる。既知のクラスターの特徴を分析することに加え, 新たな形のクラスターを認めた際の迅速な分析・予防提言を行うシステムの構築も行っていかなければならない。また, 医療提供体制や検査体制の拡充といったロジスティックス, 水際対策といった異なる行政機関が関わる分野でのさらなる協調, クラスター対策の定量的な有用性の検証, などを今後さらに検討していく必要がある。短期に解決できる課題, 中長期的に取り組んでいく必要性があるもの, などさまざまであるが, 関係府省庁, 関係諸機関・諸団体, 関係学会等の支援を受けながら取り組んでいかれればと考えている。

謝辞:クラスター対策は, 全国保健所, 地方衛生研究所, 医療機関の多大なる支援のおかげで実施可能となっている。ここに謝辞を申し上げる。





 なお、8月17日に、たまたま朝の民放テレビを見ていたら交通機関での感染事例を取り上げていた。一つは、バス運転手で、1時間ばかりバスを運転していたが、乗客の中に感染者がいて、その人から伝染ったらしい。もう一つは、航空機の乗客で、すぐ前の席に感染者がいて、1時間半ほどのフライト中に感染したものと思われる。いずれのケースも、面と向かって話しをしたというわけではないので、公共交通機関には、1時間も乗ったら感染の危険があるということだ。

 こういうケースを厚生労働省がもっと具体的かつ網羅的に調べ上げて、それを一般に情報提供をしてくれないかと考える次第である。今のままでは、何をどうした時に感染するのか、情報が全くない。だから、日常生活を過ごす上で、どうすれば危険なのかがさっぱり分からない。分からないから、何をするにしても危険に思えて、ついつい疑心暗鬼に陥る。これでは、国民の精神的な健康へのダメージが増すばかりである。ところが、そういう感染事例がたくさんあれば、どういう時に伝染するかが明確に分かるので、自ずと行動指針を作ることができるし、精神的な負担も軽減されると思うのである。これには、予算はほとんどかからない。「GO TO キャンペーン」に1兆数千億円も浪費するより、はるかに意義があると考えている。



(41は8月15日記)





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米国立アレルギー感染症研究所 ニュースリリース2月25日に掲載された新型コロナウイルス




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