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徒然292.人たらしの術


(果物の王様のドリアン)



 世の中は、何かをしようとすると、快く賛成してくれる人はあまり多くなくて、むしろ何やかやと反対したり、ケチをつけたりして足を引っ張る人の方が多い。だから、そういう人に対して、いかに話を付けて、自分の意向を押し通すかが問題である。私は、何につけ不器用なものだから、誰かを説得しようとすると、正攻法しかできない。つまり、まず理屈を考えて、何通りかのシナリオを作り、そのどれかで行けるという見込みを立てたら、後はひたすら何回も関係者のところへ通ってそれを説き、納得してくれるまで押し通すということをやって来た。今から振り返ると、説得される相手としては、随分と迷惑なことだったと思う。

 ほとんどの人は私の作り上げたシナリオのどれかで納得してくれたが、中には最後まで首を縦に振ってくれない人もいた。それでもなお諦めずに通ったら、「よし、私は黒い猫だと思うが、君がそんなに白い猫だと言うなら、白い猫だと思うことにする。」という不思議なことをつぶやき、現に本番では反対しなかったという人もいた。そういうわけで、私は事前に思い付く限りの完璧な準備をして事に臨み、後は押しに押すというものだ。ところが、私とは全く正反対というと言い過ぎかもしれないが、「そんなこと、とても私にはできない」ということを思い付いて、しかもやってしまうというタイプの人がいるので驚いた。

 あるパーティーの席で、知り合いの偉い人に久しぶりに会った。私は、その人が最近、反対派が強硬に反対してきた非常に難しい問題を、鮮やかに解決したことを思い出して「あれは、一体どうやって説得したのですか」と、何の気なしに問うた。すると、

 「あれはですねぇ。人間のちょっとした心理を使ったのですよ。つまりね、人間って、眠気から覚めたばかりのときに、あまり頭を使わないで、素直になるでしょ。それですよ。」という。私は、よく意味が分からずに「というと?」と更に聞くと、こんなことを語っていた。

 「相手のところに言って難しい書類をたくさん渡し、わざと眠たくなるように、お経を読むような平板で抑揚のない話し方をするんですよ。それで、相手はこっくりこっくりと舟を漕ぐようになるでしょ。それを見計らって、突然、大きな声で『ということでございます。よろしいですね。』と言うんですよ。すると、たいていの相手は、目を開けたばかりだから『おお、わかった』と言ってくれますよ。」

 私は驚いて「へぇーっ。そういうものですかねぇ。」と言って、思わずその人の顔を見てしまった。これまで、色々な人の様々な仕事のやり方を見てきて、たいていのことは知っているつもりだったが、まさかそういう幻術のような手を使う人がいるとは、思いもしなかった。これも、その人の人生を渡る上で独自に開発したノウハウ「人たらしの術」なのだろう。でも、私にはとてもできないことだと思った。




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(蟹のチリソース甘辛煮)




(2017年5月10日記)


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