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徒然281.科学博ヒカリ展

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 上野の国立科学博物館で「ヒカリ展(ヒカリの不思議、未知の輝きに迫る)」が開催されていたので、行ってみた。今年のノーベル賞受賞者に選ばれた赤崎勇、 天野浩、中村修二の3氏が発明したLEDなどが展示してあるのかと思ったら、天文から始まって、オーロラ、鉱物、生物など幅広く「光」に関する話題が取り上げてあった。何が面白いかは、それぞれ見る人の知識や経験によって違うだろうが、中でも私が興味をもったのは、いままで見たことがないもの、とりわけ蛍光鉱物、遺伝子組み換え技術による光る生糸と花、そして100億年に1秒の誤差しかないほどの光格子時計だった。

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 会場を進んでいくと、前半は光についての高校レベルの知識で分かる程度の展示が並べられていたので、さほど目新しいものではなかった。しかし、紫外線を当てると美しい蛍光を発する糸魚川フォッサマグナミュージアム所蔵という光る鉱物が目に入り、面白くなってきた。珪亜鉛鉱というのは、何の変哲もない茶色の鉱物なのに、紫外線が当たると青白く妖しく光る。その他、ルビーは赤く、方解石は青白く、オパールは緑に、蛍石は濃い青色に光るから不思議である。そういう構造になっているのだろうけれど、どのような構造なのだろうか知りたいものだ。時計の夜光塗料の話が思い出される。

ディデウス・モルフォ


キプリス・モルフォ


 アマゾンなどに生息し、世界一美しい蝶として有名な「モルフォ蝶」の個体が、20近くも展示してあった。今から何十年も前のこと、東南アジアを旅行していたときにその一つを土産物店で買ったことがある。しばらく自分の手元に置いていたが、その後、蝶の収集家として仲間内では有名だった先輩に差し上げたら、たいそう喜んでもらえた。今回、それと同じ種類の蝶が含まれていたので、ふとそのことを思い出した。ディデウス・モルフォという名前らしい。また、その左脇には、キプリス・モルフォという名前の一段と美しいモルフォ蝶があった。これほど見事なものは見たことがない。ここまでいくと、この蝶が「生きている宝石」とまで言われる理由がわかるというものだ。ちなみに、この蝶の青い色の発色の秘密は、その不思議な微細構造にあるという。これを解明した研究者がおられて、その松井真二教授によると、モルフォ蝶の「鱗粉には、超微細な格子状の溝が等間隔で多数刻まれていて、それぞれの溝の側面には棚状の襞がついているのです。この襞がポイントで、何段もの襞の働きによって青色の波長の光だけが反射され、青く見えるのです。」とのこと。つくづく、何億年もかけて自然が創り出したものには、とても人知の及ばないものがある。これもその一つだし、植物の光合成もその一つであろう。これが人工的に出来れば、それこそノーベル賞の数回分にも相当する大発明である。

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 蛍光を発するサンゴというものがあるらしい。確かに水槽の中のサンゴが青、緑、紺、赤茶けた色を見せている。満月のときの海中は、こうした光で満ち満ちているのかもしれない。その次がいよいよ光る絹糸のコーナーである。2008年にオワンクラゲの研究でノーベル化学賞を受賞した下村脩博士によって一躍有名になった緑色蛍光タンパク質の遺伝子を、そのオワンクラゲから取って、カイコの染色体に組み込み、「全身が緑色に光る繭」を作り、更にその繭から紡いだ 「光るシルク」で作った十二単風の舞台衣装が展示されていた。なんでも、2004年頃にはもう緑色蛍光タンパク質で光る繭は出来ていたそうだが、これを熱湯でほぐして糸をとろうとすると、その熱で緑色蛍光タンパク質が壊れて光らなくなってしまうので困っていたようだ。それが交配を繰り返すことによって繭から直接、糸がとれるようにして問題を解決したのが2008年という。これで緑の糸が、そしてサンゴから得られた赤色やオレンジ色などの蛍光タンパク質を組み込んだ絹糸も開発された。確かに、これらの製品は、見ごたえがある。しかしながら、この緑色蛍光タンパク質シルクは舞台衣装にでもと考えられているようだが、暗闇でボーっと緑色に光る舞台衣装なんて、幽霊劇くらいにしか使えないのではないかと心配する。赤やオレンジ色なら、たとえば結婚式に使ってみるのも面白いかもしれない。

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 また、植物のトレニアに黄緑色蛍光タンパク質を組み込んで、これも花を光らせることに成功したそうで、その現物が陳列されていた。世界初の光る花の誕生である。しかしながら、これらは遺伝子組換え植物であるため、これが野外に出て自然種と交配したらどうなるのだろうかと、いささか心配になるが、その点は厳重に管理されているとのこと。

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 最後の展示の光格子時計には、いたく感心した。現在のセシウム原子時計の性能をはるかに凌駕する「ストロンチウム光格子時計」の原理が2001年に東京大学の香取英俊教授によって提案され、これに従って100億年に1秒の誤差しかない時計が作られているそうだ。最終的には宇宙の年齢138億年で0.4秒の誤差しかないものを作ろうというものである。そうすると、単なる時計にとどまらず、わずかな重力環境の変化でも探知できるようになり、小型化できれば鉱物資源の探査などにも使えるという。



(2014年11月8日記)


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