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徒然272.遺伝子解析会社(23andMe)

23andMeのホームページ


 私は以前、遺伝子改変技術を使って遺伝子操作が行われる可能性について、エッセイ(遺伝子操作の世界)に書いたことがある。人間の遺伝子は、たかだか26,800にすぎないが、これに遺伝子操作を加えて、頭の良くなる遺伝子、見目麗しくなる遺伝子などを強化していくビジネスが近い将来、流行るかもしれないと述べた。それは2009年6月1日のことだから、わずか4年前のことなのに、今朝(2013年10月20日)の朝日新聞を読んで、そうした手法の特許がアメリカで成立したことを知った。曰く「青い目で足が速く、乳がんになるリスクが低い子どもが欲しい…親が望む特徴を持つ赤ちゃんを作るデザイナーベビーにつながる遺伝子解析技術が考案され、米国で特許が認められた」。詳しくいうと、自分と、精子や卵子の提供候補者ごとに、遺伝情報を解析して、望み通りの子どもが生まれる確度を予測するシステムだ」という。

 特許を得たのは、個人向け遺伝子解析会社の「23アンドミー:23andMe」(カリフォルニア)で、2007年から唾液に含まれるDNAの遺伝子配列の僅かな違いである(SNP)を分析して、アルツハイマー病や糖尿病など120の病気発症のリスクだけでなく、目の色や筋肉のタイプ等の250項目を判定する事業を行ってきた。価格は約1万円(99ドル)、利用者は50ヶ国以上の40万人という。このデータを利用して、病気発症のリスクだけでなく、人間の特徴たとえば身長、性格、寿命、酒の強さ、目の色、頭髪の薄毛、筋肉のタイプなどを判定するらしい。

 もちろん、病気は遺伝的要因だけでなく、生活習慣にも大きく影響されるものだから、この結果が悪いからと言って過度に心配する必要はないし、この結果を信じ過ぎて生活が乱れてかえって病気を引き起こすという恐れもある。それに、遺伝子が人間の特徴の発現に影響を与えるとはいっても、この調査で分かるのは大まかな可能性に過ぎないから、さほど信用すべきものではないと思う。しかし、それでも最近、美人女優のアンジェリーナ・ジョリーが、こうした検査の結果、自分は乳がんになる確率が87%と非常に高いと知って、サッサと自分の両乳房を切り取ってしまったということが報じられ、その当否が話題となった。だから、やはりこうした検査結果をそのまま信じる人も必ずいるというわけだ。これからデータがどんどん集積されればされるほど、データの正確性が増し、調査項目もますます多くなってくるものと思う。そうすると、結婚前の相手の選別に利用されることなど、ごく当たり前のことになるだろう。それどころか、今でもインターネットで売られている精子や卵子が、そのDNA情報付きになってますますコマーシャル化が進むに違いない。

 問題は更にその次の段階で、現在は農業などで利用されている遺伝子組換え作物の技術が人間に応用されかねないかという心配である。たとえば、記憶力が良くなる遺伝子が同定されたとして、それが組換え技術で受精卵に組み入れられ、文字通りデザインされた赤ちゃんが誕生するという事態になるのではないかと思うのである。これに比べれば、受精卵を着床前に調べて男女の産み分けをする技術など、まるでかわいいものだ。さて、そのような次の段階が定着したとして、更にまたその次の段階はどうなるかといえば、人間の能力を経済力が支配する時代が訪れるのではないかと思う。現在、インターネットでは既に、たとえばノーベル賞受賞者の精子、世界のトップ・アスリートの精子、一流芸術家の精子、白人女性の一流モデルの卵子などが売買されているらしい。試行錯誤を経て遺伝子操作技術が安全な技術として定着してくると、これと同様に近い将来、受精卵を操作するための、頭の良くなる遺伝子セット、運動神経が一流になるセット、女優並みの美人になるセットなどというのが用意されて、それぞれの組み合わせで価格がどんどん上がっていくという、まるで結婚式の費用のオプション料金みたいになるだろう。要は、お金を出せば出すほど、子供は素晴らしい能力や外見を持てるというわけだ。そうなると、経済力のあるお金持ちだけが、この恩恵にあずかることが出来る。かくして、強い者・恵まれた者は、ますます強く美しく壮健になり、かつ経済的にも社会的にも恵まれてくるというわけだ。こういう傾向が続くと、場合によっては今から数百年後、遺伝子組換え人間という新人類が世界を支配しているということにもなりかねない。これこそ、まるでSFのような世界にほかならない。しかしこれが、やがて100億人にも達しようとする近未来の人類の姿かもしれないのである。そうなると、フランス革命以来、人類が獲得し、営々と積み上げてきた「自由、平等、博愛」の精神は、いったいどうなるのであろうか。




(2013年10月21日記)


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