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徒然238.放射能汚染地図その後

早川由紀夫教授作の放射能汚染地図七訂版


 放射能汚染地図七訂版 (表) (裏)
 
 昨年(2011年)3月11日に東京電力の福島第1原子力発電所で原子力重大事故が起こり、高濃度の放射能が環境中に放出された。事故直後の放射能汚染の状況については、私は政府発表を毎日緊張して聞いていたものの、何がどうなっているのかさっぱりわからなかった。そういう状況の下で、専門家である早川由紀夫教授の火山ブログは大層役立った。大げさにいうと、危機下での精神安定剤のようなものである。教授には、改めて深く感謝を申し上げる次第である。それから、1年数ヶ月が経ち、再び早川由紀夫教授の火山ブログを見ると、表題の放射能汚染図が版を重ねて七訂版となっている。各種のデータを取り込んで、ますます精緻なものになりつつある。それだけでなく、今度は印刷物になるそうだ。その解説によると、「放射線量率は、事故当初の2011年3月に比べて同年9月時点で85%、2012年8月時点で66%に減じている」そうだ。思ったより減衰率が大きくて、ほっとする。この調子でさらに1年過ぎると、半分以下となりそうだ。朗報といえる。また、「一般に放射性物質が風雨で取り去られやすい土やアスファルト上では低くなりがちだが、その代り放射性物質は雨どい、軒下、側溝、路傍の土などに集まりやすいので、そういう場所では局所的に何倍も高くなりやすい」とある。これは当たり前といえばその通りであるが、私のような素人には、近づくべきでないところを知る上で参考になる。

事故当時の福島第一原発サイトからの放射能汚染の推移


 事故当時の汚染につき、早川由紀夫教授は、「放射性物質は高さ数十メートルの風に乗って地表をなめるように移動したと思われる。・・・3月12日21時に南相馬市を通過した放射能雲は仙台湾を越えて翌日2時に女川町に達し・・・3月15日にもっともひどい汚染があり・・・4時にいわき市を通過した放射能雲は6時には関東平野に達し・・・そこでは雨が降らなかったために・・・そのまま西と北に向かって関東山地と群馬栃木北部の山地に突き当たり、雨によってそこの地表にたたき落とされ・・・午後遅くになって特別に濃い放射能雲が・・・風に乗ってまっすぐ北西に移動して18時に飯館村を壊滅させました。20日夕刻、宮城・山形県境と岩手南部が汚染され・・・そのあと風は南に回り、放射能雲は6時に水戸を通過して9時に東京に達しました。21日から23日までの3日間、関東地方には強い雨が断続的に降り、首都圏東部に見られる中程度の汚染はこのときに生じました」という。確かに、福島第1原子力発電所の正門前のデータをみると、15日から16日にかけて、放射線量が飛び抜けて跳ね上がっている。21日の柏コース(上の図の一番右)では、我が家からすぐ近くの東大の本郷にまで達している。そういえば近くの根津小学校校庭で放射線量が高いところを見つかったと騒いでいたが、このときの汚染が原因だったのかと初めて知った。

今回の福島の事故と旧ソ連時代のチェルノブイリ事故での放射性物質の拡散状況を同じ縮尺で比較できる図


 放射性物質の拡散を予測できる政府(文部科学省)のSPEEDI(緊急時迅速放射能影響予測システム)は3月11日の事故の数日後には、放出源情報がないながらも動かして実測値に非常に近い汚染図が出来ていたのに、それが公表されたのは3月23日と、非常に遅れた。だから事故直後の避難先の選択や11日と12日の避難地域の選定には全く生かされることがなかった。それだけでなく、事故直後の昨年3月17日から19日にかけて、米エネルギー省が米軍機を使って空から原発サイト周辺の半径約45キロの地域の放射線量を実際に測定し、その結果を3月18日と20日の計2回、在日米大使館経由で外務省に電子メールで提供されたという。ところが、外務省がそのメールを経済産業省原子力安全・保安院と、放射線量を測定する実務を担当していた文部科学省にそれぞれ転送したものの、保安院と文部科学省は、そのデータを公表せず、首相官邸や原子力安全委員会にも伝えなかったというのである。こちらは、実測データであるから、それを踏まえて実際の避難にいかようにでも、使えたはずであるが、関係者にはそういう危機に備えて何でも使えるものは活用するという発想がそもそも欠落していたに違いない。これは返す返すも、残念なことである。猛省を促したい。なお、今回の福島の事故と旧ソ連時代のチェルノブイリ事故での放射性物質の拡散状況を同じ縮尺で比較できる図も作られているが、これを見ても、今回の福島の事故の影響は、決して過小評価してはいけないと思われる。



(2012年 7月 1日記)


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