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徒然216.宇宙が3次元で誕生する仕組み

高エネルギー加速器研究機構の資料


 超ひも理論は、われわれの世界は10次元から成り、素粒子といわれているものの実体は、実はプランク距離という超微細な世界にある「超ひも」であるというものである。40年前に生まれ、この一見して意表を衝いた理論は、これまで誰もなし得なかったニュートン力学、相対性理論そして量子力学を統合し、物質に働く基本的な4つの力(電磁力、弱い力、強い力及び重力)を統一して説明ができる画期的なものである。しかしながら、「超ひも」があまりにも微細すぎて、それを実験で立証することが誠に困難であった。そのためこの理論は、数学オタクによる単なる計算上の世界として扱われることもしばしばで、その素晴らしい可能性にもかかわらず、物理学界では異端のように扱われてきた。

 ところが、私はおよそ4年ほど前に「超ひも理論をスパコンが検証」という文章を書いたことがあるが、これはブラックホールの蒸発というホーキング博士の理論を、「超ひも理論」の弦つまり「超ひも」の状態をスーパーコンピュータ(スパコン)で計算して立証したという画期的な成果である。これは、実験で立証することが極めて困難な「超ひも理論」について、実験の代わりにスパコンで計算して立証出来る可能性を示唆した初めての事例として、特筆できるものだと考えたからである。

 この研究は、高エネルギー加速器研究機構によるものであるが、それから4年の歳月が流れた今月22日、再び同機構・静岡大学・大阪大学によって、スパコンで「超ひも理論」を立証しようとする新たな研究成果が新聞に掲載された。これは、計算機シミュレーションを用いて、超弦理論の予言する10次元(空間9次元、時間1次元)から3次元空間を持つ宇宙が誕生する様子を解明することに、世界で初めて成功した」というものである。同機構のHPによれば、次の通りである。

【概 要】ビッグバン宇宙論によると、宇宙は約137億年前、目に見えないほどの小さな点から大爆発とともに生まれたと考えられる。この理論は、宇宙背景輻射や元素の組成などの観測データによって強く支持されている。一方、宇宙全体が小さな点であるような状況は、アインシュタインの一般相対性理論の適用限界を超えており、宇宙が実際どのように誕生したかを明らかにすることは、これまで成功していなかった。素粒子の究極理論とされる「超弦理論」においては、すべての素粒子を極めて小さな「弦」の様々な振動のしかたとして表すが、その中には重力を媒介する粒子も含まれ、一般相対性理論を素粒子のスケールまで自然に拡張することができる。このことから超弦理論を用いれば、宇宙誕生の様子を解明できると期待されているが、弦の間に働く相互作用が強いため具体的な計算は難しく、様々なモデルやシナリオに基づく議論がなされる状況がこれまで続いていた。特に、超弦理論においては、9次元の広がりを持つ空間が予言されており、我々の住む3次元空間とどう折り合いがつくのかは、大きな謎だった。今回、西村淳(高エネルギー加速器研究機構・准教授)、土屋麻人(静岡大学・准教授)、金相佑(大阪大学・特任研究員)からなる研究チームは、超弦理論に基づき、宇宙誕生の様子をスーパーコンピュータによってシミュレーションすることに成功した。その結果、宇宙は最初9次元の空間的な広がりを持っていたが、ある時点で3方向だけが膨張し始めることが示された。なお、本研究成果は、米国の科学誌『フィジカル・レビュー・レターズ』に2012年1月6日号(オンライン版1月4日)掲載予定である。

【研究内容】本研究では、弦の相互作用を表す、大きなサイズの行列を効率的に数値計算する手法を確立し、超弦理論に現れる9次元空間の様子が、時間とともにどう変化するかを計算した。
冒頭の図は、9方向の空間的な広がりを、時間の経過に対してプロットしたものである。宇宙の始まりに向かって過去に遡ると、確かに空間は9次元的に広がっているが、ある時点を境にして、3次元方向だけが急速に大きくなることが示された。この結果により、超弦理論の予測する9次元空間から、実際に我々の住む3次元空間が出現することが、世界で初めて解明された。今回の計算には主に、京都大学基礎物理学研究所のスーパーコンピュータ「日立 SR16000」(理論演算性能 90.3テラフロップス)が用いられた。

【本研究の意義】一般相対性理論を素粒子のスケールまで拡張する究極理論として、超弦理論が提唱されてから40年近くになるが、具体的な計算の難しさから、その実在性や有用性は明らかでなかった。本研究成果により、時空の次元の謎に対して新しい理解が得られたことは、超弦理論の実在性を示すものである。また本研究により、コンピュータを用いた超弦理論の新しい解析手法が確立したことは、この理論を様々な問題に応用する可能性を切り開くものである。例えば、宇宙初期に起こったと考えられているインフレーションや、今年のノーベル物理学賞の対象となった宇宙の加速膨張などの理論的解明が挙げられる。また、宇宙観測で示唆される暗黒物質や、LHC実験による発見が期待されるヒッグス粒子など、素粒子理論に残された謎の解明において、超弦理論がさらに発展し、重要な役割を果たすことが期待される。


 超ひも理論を知って私は、理論上の世界は10次元(空間9次元+時間1次元)といっておきながら現実の世界はなぜ空間3次元+時間1次元なのかとかねてより疑問に思っていて、これはそう簡単に解明できないだろうと踏んでいた。ところが、日本のお家芸ともいえるスパコンを使ってそれが世界で初めて解明されるとは、驚くとともに、非常に嬉しい気がしたものである。今回も、西村淳・高エネルギー加速器研究機構准教授を中心とした成果である。

 折しも、スイス・ジュネーブに設置されたCERN(ヨーロッパ合同原子核研究機関)の加速器LHCを使った実験によって、ヒッグス粒子が近く発見されそうな時期である。日米欧の研究者が参加した「アトラス」と、欧米の研究者が中心の「CMS」の2つの独立したグループが、ほぼ同一のエネルギー幅のところでそれぞれ98.9%の確率でそういう粒子が存在しそうだと一致したのである。その確率を99・9999%以上まで上げることが出来れば、おそらく来年中には正式な発見と認められるものと期待されている。このヒッグス粒子が発見によって、素粒子学のいわゆる標準理論の正しさが立証されたことになり、超ひも理論も新たな方向に展開していくものと期待されている。



(2011年12月25日記)


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