<< 徒然197.新宿御苑の春の薔薇 | main | 徒然199.フルーツ・カレーとオムレツ >>
徒然198.コンピューター技術の進歩

ドコモの『通訳電話サービス』の広告


 ある朝、たまたま新聞の広告が目に入った。陶芸家らしき女性が携帯電話で話しをしている。それも、目の前にいるリュックを背負った外国人の男性とである。女性が言う。「何年か修業を積めば、必ず素敵な壺を作れるようになりますよ」。それが、その外国人の男性が持っているケータイからは、「After a few years of training, you will be able to create beautiful vases for sure.」と聞こえて来るらしい。あれあれ、これはひょっとして、ケータイで日本語をしゃべると、それが音声認識されてクラウドサービスを使じどこかの大型コンピューターへと伝送されてそこで瞬時に英語に翻訳され、それが相手のケータイで聞こえるのかと思ったら、やはりそうだった。その広告の上の方を見ると「実用化が見えてきました。夢だった、通訳するケータイ」、「対面でも、そして遠く離れた場所ても、お互いの通話がすぐに翻訳されて伝わる『通訳電話サービス』、ドコモが実用化に向けて取り組んでいます」などと書かれている。そればかりか、電話の通話口で話すと自動的に外国語に変換される「同時通訳サービス」は、スマートフォン用アプリとして今年の11月頃から使用を始めるとのこと。これは、5月25日から有明ビックサイトで開催された「ワイヤレスジャパン2011」で公開されたらしい。

 いやはや、もの凄い時代になったものだ。携帯電話経由とはいえ、外国人の相手とその国の言葉で直接しゃべることができることになろうとは、思いもしなかった。確かに、高速通信ネットワーク「Xi」(クロッシィ)とクラウド技術、それに音声認識技術と翻訳技術を使えば、できないことはないと考えていたが、それはもっと遙か先の話で、あと何年もかかるのではないかと思っていた。それがこの11月から携帯電話で出来るようになるとは・・・とても驚いたの一言である。残念ながら、平日だったことからこの「ワイヤレスジャパン2011」を見に行くことは出来なかったが、いろいろと想像が膨らむ。これは、英語だけなのだろうか。それ以外の言語にも容易に拡張できるものだろうか。

 英語と日本語を直接翻訳するシステムを作るより、いったん中間言語のようなものを作って、それを経由して翻訳させるシステムを作れば、他の言語に拡張しやすい。たとえば、フランス語をその中間言語に翻訳するシステムを作るだけでよく、フランス語と英語、フランス語と日本語の翻訳を別々に作る必要はない。ロシア語だろうが中国語だろうが、あるいは韓国語でも同じことである。ただそのとき、ドイツ語の場合は単語に男性、女性、中性があって冠詞や使い方が違っているし、ロシア語は時制が特に複雑と聞いているが、日本語にはもちろんそういうものがないから、その中間言語を作るときにそういう場合はどうするのだろうかとか、聖書中の物語の知識が必要なときや、日本語のことわざなどの知識を必要とするときは一体どうするのかなどと、開発者に聞きたいことが山ほどある。まあ、ある種の力業で、必要なすべての知識をあらかじめデータベースに詰め込んでおくのかもしれない。

 アメリカのIBMリサーチが、4年間にわたってコンピューターの質問応答システム「ワトソン」というものを開発してきた。このワトソンくんが、アメリカの人気クイズ番組「Jeopardy!」に出演して人間のチャンピオン二人を破ったという事件があった。今年の2月17日のことである。このシステムの開発に当たっては、ともかく、ありとあらゆる知識を詰め込んだらしい。だから、単純に知識の量の比較では、人間は既に大型コンピューターにはかなわなくなったことは間違いない。それがクラウド・コンピューティング技術と高速通信技術を使い、我々のスマートフォンを経由していつでも使える時代になってしまった。「なってしまった」というのは、これまではインテリの象徴だった知識量の多さが、もはやその重要性をなくしてしまうのではないかと懸念してのことだが、果たしてどうだろうか。たとえば、何かわからないことがあると、依頼者の前でもどこでも、スマートフォンを開いて調べ始める弁護士というのは、サマにならないことおびただしい。だから、どんなに簡単に情報を集められる時代となっても、判断力や推理力では、コンピューターはそう易々と人間に勝るというわけにはいかないと思う。

 ところで、スマートフォンといえば、最近面白いアプリを入れた。それは、「iPhoneを探す」というもので、従来は高額な年会費が必要だったMobile Meのサービスのひとつだったが、そこからこの部分だけを抜き出して無料サービスにしたものだ。何かというと、たとえば、私がiPhoneを置き忘れたとする。それに気がついて、取りに戻ったが、だれかが持ち去ったらしくて、もうその場所には見当たらなかった。そこで、自宅に戻ってパソコンからMobile Meのサービスのソフトを動かすと、GPS機能で地図が表示されて、今どこに自分のiPhoneがあるのかが直ちに分かるという仕組みである。それだけでなく、自分のiPhoneに「警察に届け出てください」と表示したり、中のすべてのデータを消去するということも出来るらしい。

 これは凄いことだと思っていたら、これには別の用途があることに気がついた。誰のiPhoneであっても、そのApple IDとパスワードがわかってさえいれば、いつでもどこでもそのiPhoneがどこにあるのかが地図上で追跡できるのである。別にiPhoneでなくとも、スマートフォンにグーグルのLatitudeというアプリを入れれば、友達のスマートフォンがどこにあるのかがわかる(ただし、電池の消耗が激しいのが難点)。だから、こんな使い方ができる。たとえば、旦那さんが「今晩は仕事で遅くなります」と家に電話したとする。奥さんは、従来はそれを信ずるほかなかった。ところがこのMobile Meのサービスを使って旦那さんのiPhoneの現在地を調べると、なんとまあ、六本木の飲み屋がある地区にいるではないか。そこで家庭内大騒動が起こるというわけだ。いやはや、技術の進歩というのは、幸福をもたらすというわけには必ずしもいかないようである。



(2011年 5月29日記)




【後日談】
 その後、6月4日になって、ネット上でこのような記事が流れて話題を呼んだ。カリフォルニア州オークランドの住民ジョシュア・カウフマンは、3月21日に自宅アパートからパソコンのMacBookを盗まれた。ところが彼はあらかじめ盗難に備えて、そのパソコン中に「Hidden」というソフトウェアを入れてあった。これは、遠隔操作でパソコンの内蔵カメラが立ち上がり、写真を撮影することができる。そうやって撮影した写真を見ると、男がパソコンを持って車で走り去り、ソファで居眠りしていたり、上半身裸でそのパソコンに向かっている姿が写っていた。

 そこでカウフマンさんは、新たにブログ「This Guy Has My Macbook」を立ち上げ、ここでその「容疑者」の写真を掲載して得られた情報を警察に提供したところ、警察はそれに基づいて5月31日に、その犯人とみられる男(タクシー運転手)を逮捕したというのである。あまりにも出来過ぎの話だから、「Hidden」を宣伝するヤラセという気もしないではないが、これが事実なら、犯人は捕まるし、盗まれたパソコンは戻ってくるしで、めでたし・めでたしというわけである。

 「Hidden」というソフトは、マックのソフトらしくてWindows派の私の知るところではないが、どうやら内蔵カメラを動かせるだけのソフトなのかもしれない。ところが、さきほど述べた「iPhoneを探す」なら、話はもっと簡単である。写真を撮ることはしないけれど、その代わりGPSを使って自分(場合によっては旦那さん)のiPhoneの位置をいつも追跡できるからである。




(2011年 6月4日追記)


カテゴリ:徒然の記 | 10:14 | - | - | - |